第三百三話 マリー・エドワーズはウェインの『ルーム』でマーキースとフレンド登録する



ウェインは『フローラ・カフェ港町アヴィラ支店』のカウンター前にある『ルーム』に階段を下りる。

マリーと真珠はウェインの後に続いた。

真珠は『下りON』を言いたくてわくわくしていたが、先にウェインに言われてしまってがっかりした。


「でもウェインが『ルーム』を持ったなんて知らなかった」


動く階段に乗ったマリーがウェインに言う。

ウェインはマリーに苦笑して口を開いた。


「俺が『ルーム』を取得したのは最近だからなあ。狩人ギルドの寮の部屋が狭すぎてさ……」


「前に、私と真珠をベッドに寝かせてくれたことあったよね。あの時はありがとう」


「わうぅわう」


真珠はマリーと一緒に床に倒れているウェインの頭の下に枕を入れて、身体に薄布をかけたことを思い出しながらウェインにお礼を言った。


「こっちこそ、枕とか身体に布を掛けてくれたりとかありがとうな。『アルカディアオンライン』は痛覚設定が0パーセントだから床に転がって寝てても痛くないんだけどさ、やっぱり枕とかあるといいよな」


マリーとウェインが雑談をし、真珠が肯きながらそれを聞いているうちに、動く階段で下に下り切り、マリーとウェイン、真珠は動く階段を降りた。


ウェインは正面の壁にある扉の前に立ち、自分の左腕の腕輪を扉に触れさせて、口を開いた。


「管理者権限ON。ルームアンロック」


ウェインがそう言うと扉が光り、彼の目の前に画面が現れる。

画面はウェインにしか見えず、マリーと真珠の目には映らない。





管理者権限により、プレイヤーNO59721ウェインのルームの扉がアンロックされました。





メッセージを確認して、ウェインは口を開いた。


「クローズ。お待たせ。マリー、真珠。中に入ろう」


ウェインは扉を開けながら言い、部屋の中に入る。

マリーと真珠はウェインの後に続いた。


ウェインの『ルーム』は灰色の壁に囲まれた、巨大なベッドがある以外にはなにもない部屋だった。

上品な書斎のような情報屋の『ルーム』とはまったく違う。

巨大なベッドに寝転がって本を読んでいた少年が、マリーたちに気づいて本を閉じ、左腕の腕輪に触れさせて収納した後、ベッドを下りて駆け寄る。


「悠里……じゃなくてマリーと真珠?」


赤毛で目まで前髪が伸びている、いわゆる『ギャルゲーの男主人公』スタイルの少年が問いかける。

ブラウスにベスト、半ズボンという服装で、服の生地は上質なものだ。


「は……じゃなくてマーキース!! そうだよ。マリーと真珠だよ」


マリーはそう言って、マリーの足元にいる真珠を抱き上げた。

マーキースは真珠の顔を覗き込み、破顔する。


「ゆ……じゃなくてマリーが自慢するのも納得する可愛さだねえ」


マーキースの言葉を聞いたマリーは首を傾げて口を開いた。


「マーキースは前髪が長くても真珠がちゃんと見えるの?」


「不思議なことに見えるんだよねえ。視界設定100パーセントだからじゃない? 真珠。おいで」


マーキースが両腕を真珠に差し伸べて言う。

真珠は少し迷ってからマリーに肯くとマーキースの腕の中に飛び移った。


「うわあ!! 真珠の毛並みが気持ちいい!!」


マーキースはそう言いながら真珠を抱きしめる。

リアルの晴菜だったら美しい光景だったのにと思いながら悠里は口を開いた。


「マーキース。マリーとフレンド登録してくれる?」


マリーの言葉を聞いたマーキースは肯いて口を開く。


「うん。いいよ。むしろこっちからお願いしたい」


マーキースから許可を得たマリーはマーキースの左腕の腕輪に自分の左腕の腕輪を触れさせた。

マリーの目の前に画面が現れる。

真珠は自分を抱っこしているとマーキースがフレンド登録の邪魔になると考えて、彼の腕から床に飛び下りた。





プレイヤーNO2995392マーキース・ウォーレンとフレンド登録しますか?




         はい/いいえ





マリーは『はい』をタップした。画面が切り替わる。





両者の合意が得られたのでフレンド登録されました。

詳細はステータス画面の『フレンド機能』でご確認ください。





マーキースとフレンド登録を終えたマリーは嬉しくて微笑んだ。

これで、離れても、転送の間にいてもマーキースと連絡を取り合うことができるようになったのだ。


***


マリー・エドワーズとプレイヤーNO2995392マーキース・ウォーレンとフレンドになった。


紫月3日 昼(3時38分)=5月11日 19:38



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