第二百七十五話 高橋悠里は『SOS100均ショップ』について知る



「コロナ禍等により、生活の困窮を訴えるプレイヤーの声に答えて『アルカディアオンライン・プロジェクト』は『SOS100均ショップ』を開設致しました。『SOS100均ショップ』は転送の間にてワタシからの使用許可を得たプレイヤーが利用できます」


「『SOS100均ショップ』ってリアルにある100円ショップのこと?」


「少し違います。『SOS100均ショップ』は『アルカディアオンライン・プロジェクト』が生活必需品だと判断した商品をゲーム内通貨100リズで購入することができるショップです」


「ゲーム内通貨でリアルの物が買えるの!? しかも100リズ均一で……っ!?」


サポートAIの言葉を聞いた悠里は驚いて叫ぶ。

リアルの100円ショップでも、店内の商品がすべて100円で買えるというわけではないのに……!!


「左様です。『SOS100均ショップ』の商品はすべて100リズで購入可能です。『SOS100均ショップ』の商品一覧を確認しますか?」


「しますっ!!」


悠里が肯いてそう言うと、目の前に画面が現れた。





水(500ml)1本 ※500ml以上の場合有り/商品指定不可


経口補水液(500ml)/スポーツ飲料(500ml)1本 ※500ml以上の場合有り/商品指定不可


ゼリー飲料 1個  ※商品指定不可


ビスケットまたはそのまま食べられるお菓子 1個 ※アレルギー食材がある場合は要申告/商品指定不可


生理用ナプキン(夜用/昼用)1袋 ※夜用/昼用要指定・商品指定不可


乳児・幼児用紙おむつ 1袋 ※要サイズ指定/商品指定不可


大人用紙おむつ 1袋 ※要サイズ指定/商品指定不可


粉ミルク 1缶 ※1缶以上の場合有り/商品指定不可


不織布マスク 1枚 ※1枚以上の場合有り/商品指定不可


缶詰(果物/果物以外) ※アレルギー食材がある場合は要申告・果物/果物以外か要指定/商品指定不可


ストロー 1袋 ※コンビニやスーパー等で1本だけ入手の場合有り/商品指定不可


割り箸 1袋 ※コンビニやスーパー等で1つだけ入手の場合有り/商品指定不可


トイレットペーパー 1個以上1袋まで ※商品指定不可





悠里は『SOS100均ショップ』の商品一覧の画面を見て口を開いた。


「『不織布マスク 1枚 ※1枚以上の場合有り』とか枚数や個数がアバウトだったり、商品指定不可のものが多いんですね」


「商品の購入・配達は『アルカディアオンライン・プロジェクト』が契約した全国各地の『SOS100均ショップ配送スタッフ』の裁量に委ねられます」


「裁量に委ねられる? どういうことですか?」


「商品の購入・配達は依頼したプレイヤーの近くにいるSOS100均ショップ配送スタッフが行います。商品の購入は配送スタッフの最寄りのスーパーやコンビニ、ドラックストア等で行われ、そのまま依頼人の家に配達されます。配達は置き配で、商品を届けた後に、依頼人であるプレイヤーが『アルカディアオンライン』に会員登録をした際に記載した電話番号に通話をして商品が届けたことをお知らせします。通話できない場合は会員登録をした際に記載したメールアドレスにメッセージを送信します」


「そっか。配送スタッフさんがスーパーとかコンビニにある商品をとりあえず購入して、依頼人であるプレイヤーになるべく早く届けるんですね?」


「左様です。緊急対応を想定しています。具体的には『新型コロナに罹患した本人や家族』『新型コロナ患者の濃厚接触者やその家族』『新型コロナ等で収入が減少して困窮している/困窮することが予想される』プレイヤーへの支援を予定しています」


「そうなんだ。じゃあ、今のところ私は『SOS100均ショップ』を使えないね」


悠里は今のところ『新型コロナに罹患した本人や家族』ではないし『新型コロナ患者の濃厚接触者やその家族』でもない。

悠里の父親は元気で働いてくれているので、今のところは『新型コロナ等で収入が減少して困窮している/困窮することが予想される』わけでもないと思う。


悠里は、借金返済のために頑張って貯めたゲーム内通貨で『SOS100均ショップ』の商品……お菓子……を買えたらお得でいいなと思ったのだけれど、現状、全く『SOS』の状態ではないのに『SOS100均ショップ』の商品をゲーム内通貨で購入することはできない。

そう思いながら悠里は口を開く。


「お知らせはこれで終わりですか?」


「まだありますが、現状の高橋悠里には関係がない事柄だと考えます」


「今の私には関係がないお知らせ……? 興味がありますっ。教えてください」


「承知しました」


悠里はサポートAIのアナウンスを待った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る