第二百七十四話 5月10日/単語カード5枚に英単語を書き写して力尽きた後にログインして4GPを取得する



晴菜との通話を終えた悠里は圭にイヴとのトラブルのことを書いたメッセージを送り、それから、英語の教科書を見ながら英単語を単語カードに書き写す。

……5枚書き終えたところで、悠里は力尽きた。


「お風呂に入って来よう……」


意志薄弱。勉強に関しては本当にやる気が続かない。


「お風呂に入る前に、頑張って作った単語帳を確認しようっ」


悠里は要に教えてもらった通りに単語帳をパラパラとめくる。

……5枚しかないのですぐに見終えた。


「もう一回見ようかな……」


あまりにも早く単語帳を見終えた悠里は不安になったのでもう一回最初から5枚見て、それからパジャマと下着を持って浴室に向かった。


浴室に行った悠里だったが、祖母がお風呂に入っていたので自室に戻る。


自室に戻った悠里は部屋の電気をつけて、パジャマと下着を椅子の上に置く。


「お祖母ちゃんがお風呂を終えるまでゲームで遊ぼうっ」


ゲームマネーをリアルマネーに変換したいし、ワールドクエストの結果等も確認したい。

真珠が頑張っていたというモンスター討伐の結果、マリーのステータスがどうなったのかも知りたい。


悠里は充電していたヘッドギアとゲーム機を机の上に置きっぱなしにしていたコードでつなぐ。

ゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつけた。

部屋着でベッドに横になり、目を閉じる。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。


気がつくと、悠里は転送の間に立っていた。

今の悠里は部屋着を着ている。


「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様。『アルカディアオンライン・プロジェクト』からの重要なお知らせがあります。お伝えしても宜しいですか?」


「はいっ。お知らせを聞きます。よろしくお願いしますっ」


「『アルカディアオンライン』が楽しすぎてリアルに戻りたくないというプレイヤーの声を受けて5月10日9:00より『頑張ったポイント(GP)』を導入致しました」


「頑張ったポイント? 可愛い名前ですね。何を頑張れば貰えるの?」


「お答えします。朝食を作った/昼食を作った/夕食を作った/朝食を食べた/昼食を食べた/夕食を食べた/学校に行った/仕事に行ったという各項目に該当した場合『GP1』が付与されます」


「えっと、朝ご飯を食べて、給食を食べて、晩ご飯を食べたら3GPもらえるっていうこと?」


「左様です」


「じゃあ、私は4GPもらえますねっ。三食食べて、学校に行きました……っ」


「確認します。プレイヤーNO178549。高橋悠里様の脳波確認。確認中……。トゥルース。高橋悠里様にGP4が付与されました」


「サポートAIさんっ!! 今のなに!? 脳波確認とか言ってなかった……っ!?」


「高橋悠里様の脳波を確認していました。高橋悠里様の言葉に偽りはありません」


「怖っ。それってプライバシーの侵害ではないですか……?」


「『アルカディアオンライン』をプレイする前に確認していただく規約には『必要に応じて脳波チェックを行う』という記載があります。同意しなければゲームをプレイできません」


「同意……しました……」


悠里は『無料であること』を確認しただけで規約を全く読まずに『アルカディアオンライン』の会員登録をした。

『アルカディアオンライン』をプレイし続けたいのであれば、甘んじて脳波チェックを受けるしかない……。

脳波チェックをされても、特に頭や身体に違和感はない。うん。大丈夫。きっと大丈夫。

悠里は自分にそう言い聞かせて気持ちを切り替えた。


「サポートAIさん。GPは何と交換できるんですか?」


「GP交換一覧表を表示します」


サポートAIがそう言った直後、悠里の目の前に画面が現れた。

悠里は内容を声に出して読み上げる。


「プレイヤーの住んでいる市区町村内の飲食店の1日貸し切り使用・食べ放題(一人または家族のみ)※店の食材が尽きたら終了/お取り寄せグルメ100000円分(内容指定不可)※アレルギー食材がある場合は要申告:GP100000。えっ!? お取り寄せグルメ10万円分もくれるの!?」


「はい。それでも『プレイヤーの住んでいる市区町村内の飲食店の1日貸し切り使用(一人または家族のみ)』の方が高額になる場合が多いです」


「そうなんだ……。なんか、頑張ってGPを貯めたくなるね」


「そう言っていただけると幸甚です」


「『こうじん』ってどういう意味ですか?」


「『この上ない幸せ』という意味の言葉です」


「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」


サポートAIにお礼を言って、悠里はGP交換一覧表に目を向ける。


「プレイヤーの住んでいる市区町村内の名産品10000円分(内容指定不可)※アレルギー食材がある場合は要申告/プレイヤーの自己責任による転売可能:GP10000。これはさっきの10万GPよりも貯めやすいかも。他は……1GP=1SPとして交換可なんだ」


悠里はGPをスキルポイントに変換したくなりそうな気がする。


「GP交換の項目は、順次増やしていく予定です。ご期待ください」


「期待しますっ。楽しみだなあ」


「引き続き『アルカディアオンライン・プロジェクト』からの重要なお知らせがあります。お伝えしても宜しいですか?」


「まだあるの? 聞きます。教えてください」


サポートAIが『重要なお知らせ』と言うのだから、聞いた方がいいだろう。

悠里はサポートAIのアナウンスを待った。





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