第二百七十三話 高橋悠里は晴菜にウェインとイヴのトラブルを打ち明け、アドバイスを貰い、ゲームでの晴菜の予定を聞く



「あのね。今日『アルカディアオンライン』で一緒に遊んだことがあるフレンドと偶然リアルで会ったの」


悠里は晴菜に事情を話し始めた。


「悠里が藤ヶ谷先輩と放課後デートしてる時に?」


「放課後デートじゃないけど……要先輩と一緒にいる時に会った」


「要先輩?」


「あ……。うん。えっと、そう呼ぶことになってね。先輩は私のことを名前で呼んでくれることになったの」


「すごいっ。進展してるじゃない。藤ヶ谷先輩、けっこうぐいぐい行くタイプなんだね。悠里が相手なら、それくらいやってもらわないとね」


「私と先輩の話はいいからっ。私のフレンドと会ったっていう話を聞いて……っ」


「はいはい。悠里のフレンドと会ったのね? えっ? そのフレンドはなんで中学の制服を着た悠里が5歳のマリーだってわかったの? まさか、悠里がゲーム内で自分のリアルの情報を漏らしたわけじゃないよね?」


「私はリアルバレしないように気をつけてたよっ。えっとね、圭くんの主人公のウェインと要先輩がすごくよく似ているんだけどね、私のフレンドはウェインのフレンドでもあってね、それで要先輩を圭くんの主人公のウェインと間違えて声をかけてきたの」


「うわあ……。そのフレンドってヤバい人っぽいね……。だって結局人違いでしょ……?」


「うん。本当、はるちゃんの言う通りだよ……」


「つまり、悠里のフレンドはお兄ちゃんとリアルで会えたと思って話しかけてきたわけね? その子って女の子?」


「うん。スレンダーな美人です……」


「お兄ちゃんがゲームでその子に何か余計なことを言ったせいじゃないの? リアルにまで粘着されるとか有り得ないんですけど。お兄ちゃんってモテるけどいつもすぐにフラれるから、しつこく追いかけてくる系女子の対応とかできなさそう……」


悠里は晴菜の理解力の高さと察しの良さに感動しながら口を開いた。


「はるちゃん!! はるちゃんがあの場にいてくれたらよかった……!!」


「嫌よ。その場にいなくてよかった。本当。あたし、お兄ちゃん絡みの面倒事に巻き込まれたくないし。お兄ちゃんには通話じゃなくてメッセージで伝えればいいんじゃない? トラブルのことを全部ぶちまけて、あとはお兄ちゃん自身になんとかさせればいいよ」


「わかった。そうするね」


晴菜に相談したことで悠里の心は軽くなる。やっぱり、晴菜は頼りになる……!!


「あ。そうだ。ねえ、悠里。悠里は今日『アルカディアオンライン』をプレイする?」


「圭くんにメッセージを送って、単語カードに英単語を書き写してお風呂に入ったらゲームで遊ぼうと思ってるけど……」


「そっか。あたしはこれからすぐにログインするつもり。クソオヤジの書斎に入って手あたり次第に部屋にある物をアイテムボックスに収納してやろうと思ってるの」


「そんなことして大丈夫? 捕まったりしない?」


悠里は晴菜を心配して問いかける。


「捕まる前に窓から飛び下りて教会に死に戻る。書斎は屋敷の三階にあるから飛び下りれば死ねると思うんだよね。『アイキャンフラーイ』って叫びながら窓枠を蹴って飛ぶつもり」


「怖っ!! 命綱もパラシュートもないスカイダイビング……!!」


「痛覚設定0パーセントだからできる暴挙だよね。少しでも痛かったら絶対にやらない」


楽しそうに言う晴菜の言葉を聞いて、悠里はマリーの宿敵であるウォーレン商会の会頭アーウィン・ウォーレンに少しだけ同情した。


「じゃあ、そろそろ通話を終えるね。悠里。また明日ね」


「うん。はるちゃん。いろいろありがとう。じゃあね」


悠里は晴菜との通話を終えた。




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