第二百四十一話 マリー・エドワーズはローラとフレンド登録してワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』を創造した『マリー・エドワーズ』だとバレる



レーン卿に謁見するための列に代理で並んでいるマリーの位置が、少しずつ前に進んでいく。

まだレモンイエローのドレスを着ている少女は大広間に戻ってこない。

このまま謁見の順番になってしまうとか、ないよね……?

不安になったマリーはすぐ後ろに並んでいる女性を振り返り、彼女を見上げて口を開く。


「あの、レモンイエローのドレスを着たお姉さんが戻ってこないうちに私の順番になってしまったら、お姉さんが先にレーン卿とお話してくれますか?」


「それは別にいいけど。お嬢ちゃんも大変ね。代理で並んで、自分はフレデリック様と話せないなんて」


女性プレイヤーの言葉にマリーは曖昧に笑った。

レーン卿とはパーティー会場を訪れる前に話したので、今、特に話したいとは思わない。


「そうだわ。お嬢ちゃん。よかったら、わたしとフレンドになってくれない? お嬢ちゃんもわたしもプレイヤー善行値が上がるし、今日会った記念にもなるし。わたしは社会人プレイヤーだからあんまり頻繁にログインはできなくて、一緒にプレイする機会は少ないかもしれないけど……」


女性の申し出に、マリーは少し考えてから肯いた。


「はいっ。フレンドになってください。マリーです。5歳です。よろしくお願いします……っ」


感じの良いプレイヤーだし、社会人であまりログインしないのであればフレンドとして気楽に繋がっていられる気がする。

マリーは頭を下げて、左腕の腕輪を女性に差し出した。

女性はマリーを見て苦笑しながら口を開く。


「まるで、合コンでの告白みたいね。よろしく。マリーちゃん。わたしの名前はローラ・フレイザーよ。ゲームでは舞台女優をしているわ」


そう言いながら、ローラはマリーの左腕の腕輪に自分の腕輪を触れさせた。

マリーの目の前に画面が現れる。





プレイヤーNO177242ローラ・フレイザーとフレンド登録しますか?



         はい/いいえ






マリーは『はい』をタップした。だが画面が切り替わらない。

なんでだろう?

マリーは不思議に思ってローラに視線を向けた。

ローラは虚空を見つめて固まっている。


「ローラさん? どうかしました?」


「マリーちゃん。マリーちゃんは『マリー・エドワーズ様』なの……っ!?」


ローラの『マリー・エドワーズ様』という言葉が聞こえる範囲で列に並んでいた女性たちは一斉に喋るのをやめた。

マリーは自己紹介をする時に自分が名字を名乗り忘れたことに気づいて肯く。


「はい。私の名前はマリー・エドワーズです。でもなんで、私のことを様付けで呼ぶの……?」


「マリー・エドワーズ様っ!! この素晴らしいワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』を創造してくださったマリー・エドワーズ様……っ!!」


ローラの叫びを聞いたプレイヤーの招待客たちがわあっと歓声をあげた。

マリーが歓声をあびながらびっくりして立ち尽くしていると画面が切り替わる。





両者の合意が得られたのでフレンド登録されました。

詳細はステータス画面の『フレンド機能』でご確認ください。




マリー・エドワーズとローラ・フレイザーはフレンドになった……。


***


マリーはプレイヤーNO177242ローラ・フレイザーとフレンドになった。


若葉月25日 真夜中(6時15分)=5月9日 22:15



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