第二百三十七話 マリー・エドワーズはパーティー会場でユリエルからのメッセージを読み、返信する
マリーはイヴにクレムの皿の菓子を『あーん』で食べさせてもらいながら、半分残ったオレンジジュースを飲む。
「ふぉういえばさ……」
お菓子を口に入れたまま喋り出したクレムはいったん言葉を切り、お菓子を飲み込んでから口を開く。
「そういえばさ、マリーとイヴのグラスについてるその丸っこいのってなんなの?」
「これは『ぐらすまーかー』だよっ」
マリーはさっき知った知識をドヤ顔でクレムに披露した。
「パーティーとかで人のグラスと自分のグラスを間違えないようにするために使うみたいだよ」
「へえー。知らなかった」
「私もさっき教えてもらうまでは知らなかったよ」
マリーは自分の無知を、正直にクレムに打ち明ける。
「オレもぐらすまーかーが欲しいな。イルカとか、そういうのがいい」
「クレム。あの人、グラスマーカーを配ってるみたいだよ。ほら、あそこ」
「本当だ。ちょっと行ってくる」
周囲を見回してグラスマーカーを配っている給仕の姿を見つけたイヴが指をさして言い、クレムは小走りで給仕の元へ向かう。
マリーはレーン卿に謁見するための長い列に視線を向けた。列に並んでいるアーシャは少しは前に進めただろうか。
「そっか。フレンド機能でメッセージ送ればいいんだ」
「マリー。誰にメッセージを送るの?」
「アーシャさんに。待ち時間が長いようなら、お菓子とか差し入れにいかない?」
「そうだね。マリーがアーシャにメッセージを送ってる間、あたしがお菓子をお皿に盛ってくるね」
イヴはマリーに言って、お菓子が並んでいるテーブルに向かった。
マリーはステータス画面を出現させて、アーシャにメッセージを送る。
♦
アーシャさん。今、どの辺に並んでる?
イヴさんと一緒にお菓子を差し入れに行っても大丈夫そう?
♦
マリーはアーシャにメッセージを送信した。
「クローズ」
そして画面を消し、手に持っているグラスに入ったオレンジジュースを一口飲む。
グラスマーカーをつけてもらいに行ったクレムが戻ってきた。
「クレム。おかえり」
「ただいま。マリー。イルカのぐらすまーかーは無かったから、マリーのみたいな丸っこいぐらすまーかーの緑バージョンのやつにした」
「そっか。イルカのぐらすまーかーが無くて残念だったね」
「まあな。ところでイヴはどこ行ったんだ?」
「お菓子を取りに行ったよ」
「菓子ならオレの皿に、まだ山盛りになってるけど」
クレムがそう言った直後、可愛らしいハープの音が鳴った。
マリーはフレンド機能で受信したメッセージを確認する。
アーシャからの返信が来たのかと思ったが、メッセージの送り主はユリエルだった。
「えっ!? ユリエル様からメッセージ……!?」
モンスター討伐に行っているユリエルと真珠の身になにかあったのだろうか。
ユリエルと真珠はプレイヤーとテイムモンスターなのでHPが0になっても教会に死に戻るだけだと思うが、それでも心配になったマリーは慌ててユリエルからのメッセージ内容を確認する。
♦
マリーちゃん。パーティーを楽しんでる?
俺と真珠くんは、今やっと西の森に向かうところなんだ。
俺が真珠くんと西の森にモンスター討伐に行くと知ったお父様が、護衛騎士をつけると言って譲らなくて……。
その関係で、俺は教会に死に戻りは出来なさそうです。
マリーちゃんと合流して遊べないのは残念だけど、死に戻った俺を見失った護衛騎士たちが失職するかもしれないと思うと、ゲームとはいえ罪悪感があって……。
だからマリーちゃんは真珠くんと合流したら好きなように行動してね。また明日、部活で会おうね。
♦
マリーが真剣な表情でユリエルからのメッセージを読んでいるとお菓子を盛った皿を両手に乗せたイヴが戻ってきた。
イヴは虚空を見つめているマリーに視線を向けて口を開く。
「マリー。アーシャから返信来たの? アーシャ、なんて言ってる?」
「イヴさん。ごめんね。今、私、すごく集中してるから。メッセージを返信するまでちょっと待っててね」
イヴの方を見ずに画面を見ながらマリーは言い、ユリエルに返信した。
***
若葉月25日 夜(5時39分)=5月9日 21:39
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