第二百二十三話 高橋悠里は祖母の『アルカディアオンライン』ゲーム機器の申し込みをしてから中間テストの勉強をする



悠里は昼ご飯を食べ終えて自分の分の食器を洗った後、洗面所で歯を磨き、トイレを済ませる。

その後、ダイニングで祖母と緑茶を飲んでいた母親の元に行き、口を開いた。


「私、今から中間テストの勉強をするから」


悠里の『勉強する宣言』を聞いた母親は眉をひそめた。


「本当に? 珍しいこともあるのねえ。ゲームで遊ばないの?」


「ゲームは夜に遊ぶの。夜から始まるクエストがあるの」


「くえすと? それは何なの?」


悠里の言葉を聞いた祖母が首を傾げて尋ねる。


「クエストっていうのは、ええと……催し事? みたいな?」


「デパートの物産展みたいな?」


祖母の言葉に悠里は少し考えて肯いた。


「うん。そんな感じかなあ……」


「そうなの。楽しそうね。私もやってみようかしら。悠里がやっているゲーム」


悠里が知る限り『アルカディアオンライン』でデパートの物産展のようなイベントは行われていないが、米販売のような突発的なイベントが催されることがあるし、コロナ禍によるステイホームで自由に外出できない現在、外国っぽい街並みを散歩するだけでも祖母は楽しいかもしれない。


「じゃあ、今から私の部屋でお祖母ちゃんのゲーム機器の申請をしようよ。私が記載した申請内容をお祖母ちゃんが確認してね」


「わかったわ」


悠里の言葉に祖母が肯く。母親が祖母に笑顔を向けて口を開いた。


「お祖母ちゃんも『アルカディアオンライン』で遊ぶなら、ゲーム内で会えるわね。家族で一緒に遊ぶのも楽しそうだわ」


「そうだね。お母さんのゲーム機器の方がお祖母ちゃんのより早く家に届くだろうから、お母さんはお祖母ちゃんの先輩プレイヤーだね」


「そうね。私にいろいろ教えてね」


祖母の言葉に母親は笑顔で肯く。

悠里と祖母は、母親をダイニングにひとり残して、連れ立って悠里の部屋に向かった。


悠里の部屋にあるパソコンで祖母の分の『アルカディアオンライン』のゲーム機器の申し込みを終えると、祖母は悠里に微笑んだ。


「悠里が申し込み手続きをやってくれて助かったわ。私はどうにも、パソコンが苦手で……」


「お祖母ちゃんはパソコンが苦手でも料理が上手だからすごいと思う」


「あらそう? 悠里が褒めてくれたから、今日はおやつにプリンを作るわね」


「本当!? 嬉しい。ありがとう……っ!!」


「プリンができたら紅茶と一緒に部屋に持ってきてあげるから。勉強、頑張りなさいね」


「はあい」


祖母は悠里の部屋を出て行き、悠里は気合を入れて勉強を始めた。

今は勉強を頑張って、夜はがっつりゲームをしよう……!!


***


若葉月24日 昼(3時58分)=5月9日 12:58



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