第二百二十話 マリー・エドワーズは『招待状』の確認をして、ユリエルは真珠をモンスター討伐に誘う



ナナが真珠のために持ってきてくれた平皿に入ったミルクを飲みながら、真珠は楽しくマカロンを食べた。

マリーはオレンジジュースのすっぱさに驚いてしゅんとしていた真珠が元気に楽しそうにマカロンを食べている姿に安堵して、自分の席に座り、自分の分のマカロンを食べ始める。

マリーと真珠、ユリエルはお喋りをしながらお菓子を食べて楽しい時間を過ごした。


マリーと真珠、ユリエルの皿からお菓子がなくなると、真珠はジャンプしてマリーの膝の上に戻った。

紅茶を飲み終え、ユリエルは口を開く。


「マリーちゃんと真珠くんの今日の予定は? なにかしたいこととかある?」


「えっと、私はワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のキーアイテム『招待状』の確認をして、レーン卿に借りた本を返したいなあと思うんですけど……」


「ワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』? そんなのがあるんだ。見てみるね。ステータス」


ユリエルはステータス画面を呼び出して『クエスト確認』をタップした。

ユリエルがワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のクエスト内容を確認している間に、マリーはアイテムボックスから『招待状』を取り出す。

マリーと真珠は紺色のリボンが掛けられた招待状を見て歓声をあげる。


「わあ……っ。可愛い招待状っ」


「わううわっ」


マリーは紺色のリボンから封筒を引き抜き、封筒からカードを取り出した、それから紺色のリボンをアイテムボックスにしまい、カードを開く。





マリー・エドワーズ様。


貴女をフレデリック・レーンの恋人選定パーティーにご招待いたします。

パーティの開催日時は 若葉月25日 夕方(4時00分)/5月9日 20:00 です。

パーティー開催場所は領主館の大広間です。入り口にいる騎士にこちらの招待状を見せると領主館の大広間への転移魔方陣を利用することができます。


ドレスコードは ドレス/ワンピースドレス/ワンピース/騎士服礼装/各種ギルドのローブ・神官のローブ です。

ドレスコードに合わない服を着ている場合、パーティーへの参加はお断りいたします。


招待状に記載された貴女ひとりでお越しください。エスコート役の男性等は入場できません。

貴女のご来臨を心よりお待ち申し上げます。


レイチェル・レーン





マリーは字が読めない真珠のために招待状の内容を読み上げた。

真珠は招待状の中に自分の名前が無いことにがっかりしてしょんぼりした。


「私と真珠はパーティーを組んでいるんだから、きっと入れるよ。レイチェル様にお願いしてみよう」


「くぅん……」


ユリエルはワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のクエスト内容を確認し終えてステータス画面を消した。


「ワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』は女子限定のクエストみたいだね」


そう言った後、ユリエルは眉根を寄せてマリーに視線を向けて問いかける。


「マリーちゃんはフレデリックお兄様の恋人になりたいのかな……?」


「そんなこと考えてないです……っ!!」


マリーは激しく首を横に振りながら言う。

マリーは5歳でレーン卿は21歳だ。フィクション作品のゲームとはいえ、あまりにも年齢がつり合わない。


「私、パーティーってお誕生日パーティーとかクリスマスパーティーしか知らなくてっ。だからちゃんとした豪華なパーティーに行ってみたいなあと思って……」


「そうなんだ。じゃあ、そのワンピースドレスと靴を履いて参加すればいい。マリーちゃんがパーティーに参加している間、真珠くんは俺と一緒にモンスター討伐に行こう」


「きゅうん……?」


マリーの膝の上で真珠は首を傾げる。真珠はマリーと離れることが寂しい。

ユリエルはそんな真珠を見つめて口を開いた。


「俺と真珠くんが強くなったら、一緒にマリーちゃんを守れるんじゃないかな」


ユリエルの言葉を聞いた真珠の耳がぴくぴくと動く。

真珠が強くなればマリーを守れる!! 真珠の心にテイムモンスターとしての使命感とマリーへの親愛の感情がわき上がる。


「わうーっ!! わんわんっ!!」


真珠はマリーを見つめて凛々しく吠えた。


「真珠。ユリエル様と一緒にモンスター討伐に行くの?」


「わんっ!!」


真珠はこくりと肯く。ユリエルは真珠に微笑み、マリーに視線を向けて口を開いた。


「それじゃ、ワールドクエストに備えて今はログアウトした方がいいかも」


「パーティー開始時間は20:00って書いてありましたものね。リアル時間が併記されていてすごく助かります」


「じゃあ、いったんログアウトしてリアル時間の19:30頃にログインすればいい? 真珠くんは俺と一緒に寝ようね」


真珠とユリエル様が一緒に寝る……っ!?

見たい。すごく見たい……!!

だがそんなことは言えない。


「19:30頃にログインですね。了解です」


マリーは内心を押し隠して、冷静な表情を保ちながら真珠を膝の上から床に下ろす。

真珠はマリーと離れる寂しさを我慢しながら、ユリエルの元に走り、彼の膝の上にジャンプした。


「ナナ。君はマリーちゃんをレイチェル叔母様の部屋に案内して、彼女が寝られるように支度をしてあげてほしい。それから今、マリーちゃんが着ているワンピースドレスを今夜着られるようにしておいて。俺と真珠くんの世話はその後でいい」


「かしこまりました」


「じゃあ、またね。マリーちゃん」


「わうわ。わうー」


マリーはユリエルと真珠に見送られながら、ナナに先導されて部屋を出た。


***


若葉月24日 朝(2時25分)=5月9日 11:25



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