第二百十九話 マリー・エドワーズと真珠はマカロンを食べ、真珠はオレンジジュースがすっぱくて驚く
銀色のワゴンを押しながら部屋に入ってきたのは黒髪で黒い目のメイド服を着た少女、ナナだ。
銀色のワゴンは以前、侍女長がパンケーキ等を運んできた時に見たものと同じ物のような気がする。
ナナは一礼してレーン卿にユリエルをサーブする。
侍女長の美しい所作には及ばないが、ナナはきちんとサーブできている。
ユリエルへの給仕を終えると、ナナはマリーの前にガラスでできたコースターを置き、オレンジジュースが入ったグラスをコースターに乗せた。
そして、真珠ための、オレンジジュースが入った平皿を床に置く。
それからマリーと真珠、それぞれにカラフルなマカロンが乗せられた皿を置き、そして一礼する。
「マリーちゃん。真珠くん。どうぞ召し上がれ」
「ありがとうございます。ユリエル様。ナナさん。マカロン、おいしそう……っ」
「わうー。くぅん?」
マリーの足元でお座りをしている真珠は、戸惑いながらマリーを見上げる。
「あ。そっか。真珠はマカロンを見るのも食べるのも初めてだよね」
「くぅん……」
「まずは私が味見するね。このピンクのマカロンから食べるからね」
マリーはピンク色をしたマカロンを指で摘まんで一口かじる。
「いちご味!! おいしい……っ!!」
マリーは満面の笑みを浮かべて、マカロンを持っていない方の手を左頬にあてて言う。
ユリエルはマリーの笑顔を見つめながら紅茶を飲み、マリーは真珠に視線を向けて口を開いた。
「真珠っ。ピンクのマカロン、いちご味でおいしいよ……っ」
「わんっ」
真珠はマリーが手に持っているのと同じ色のマカロンに鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、それから舌先でぺろりと舐めた。
それからマカロンを一口でがぶりと食べる。
おいしい!! 真珠は初めて食べるいちご味にびっくりして耳をピンと立て、青い目を見開く。
「わうーっ!! わうわおっ!!」
ピンク色をしたマカロンをごくりと飲み込み、真珠はマリーに甘酸っぱいおいしさを伝えようと尻尾を振る。
「真珠の口に合ったみたいでよかった。他のマカロンも食べようね」
「わうー。わんわんっ」
「真珠。お皿にあるオレンジジュースもおいしいよ」
マリーに言われて真珠は平皿のオレンジジュースに鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、そして舌先でオレンジジュースを舐めた。
甘いマカロンを食べた後、オレンジジュースを舐めたのですっぱい!!
真珠はすっぱいものを食べたのが初めてだったので驚く。
「きゃうん……っ」
真珠は耳を頭にぺたりとくっつけて何度も瞬きする。
「真珠っ!? どうしたの……っ!?」
マリーは悲しそうな声をあげた真珠を心配して椅子から下りた。
「わうー。きゅうん……」
真珠はオレンジジュースがすっぱくてびっくりしたことをマリーに伝えようとした。
「真珠くんは甘いマカロンを食べた後にオレンジジュースを飲んだんだよね。もしかしたらすっぱかったのかな……?」
真珠はユリエルが言った『すっぱい』という言葉が今、自分が味わった感覚を現すのだと直感した。
「わんっ!! わっうう!!」
ユリエルの言葉に真珠は肯く。
「そっか。ごめんね。私が甘いマカロンを食べた後にオレンジジュースを飲むように言ったのがダメだったよね」
「わうー。きゅうん」
真珠の頭を撫でて言うマリーに、真珠は首を横に振る。
ユリエルはナナに視線を向けて口を開いた。
「真珠くんにミルクを持ってきてくれないか?」
「はい。かしこまりました」
ナナはユリエルに一礼して部屋を出て行く。
「真珠。甘いマカロンを食べようか」
「わんっ」
マリーは真珠の口直しに、白いマカロンを真珠の口元に運ぶ。
真珠は白いマカロンをぱくりと食べた。マリーが食べさせてくれた白いマカロンは甘くておいしくて、真珠は口の中のすっぱさが少し和らいでほっとした。
***
若葉月24日 早朝(1時59分)=5月9日 10:59
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます