第二百十八話 マリー・エドワーズは幼なじみの彼女がウォーレン商会の会長の息子だとユリエルに伝える



「ユリエル様。私、お伝えしたいことがあります」


「なにかな?」


マリーの言葉を聞いて、ユリエルは首を傾げた。彼の輝くような金の髪が揺れる。


「あの、リアルの情報も含むんですけど、どうしても話しておきたくて」


「うん。聞くよ」


「わんっ」


真珠もユリエルと一緒に話を聞こうと思い、マリーに肯く。

マリーはユリエルと真珠を顔を見て、口を開いた。


「えっと、私の幼なじみでフルートパートのはるちゃんが選んだ主人公がウォーレン商会の会長の息子なんです……」


マリーの言葉を聞いたユリエルは濃い青色の目を見開いた。


「そうなの!? 意外だな。松本さんって『アルカディアオンライン』で遊ぶタイプだったんだね。しかも女子なのに男子キャラを選ぶなんて攻めてるね」


ユリエルの言葉にマリーは肯き、口を開く。


「はるちゃんが推している本屋さんが『アルカディアオンライン』に進出するから、はるちゃんはゲームを始めたって言ってました。ええと、ここからは、はるちゃんのことを、はるちゃんの主人公の『マーキース』と呼びますね」


今さらだが、リアルの名前を連呼しない方がいいだろうと思いながらマリーが言うとユリエルと真珠は肯く。

マリーは考えながら話を続けた。


「私は、マリーのお祖父ちゃんを騙して『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を奪ったウォーレン商会の会長が許せないです。でも、大切な幼なじみのマーキースが大好きな書店を支援したくてお金持ちのNPCの息子を主人公キャラに選んでゲームをプレイしたのに、ゲーム開始直後に父親が犯罪者として捕まって、貧乏な状態になってしまうのも嫌なんです……」


「そうだね。マリーちゃんの気持ちはわかる」


「わうー。くぅん……」


「だから、ウォーレン商会の会長が処罰されなくても我慢します。領主様やレーン卿にもよろしくお伝えください」


マリーの気持ちを聞いたユリエルは肯いて微笑む。


「わかった。マーキースのことは伏せて、マリーちゃんはウォーレン商会の会頭が処罰されないことに納得してくれたと伝えるよ」


「わんわんっ!!」


真珠も納得したので、ユリエルに吠えて肯く。

ユリエルは真珠に微笑んで口を開いた。


「真珠くんも納得したと伝えるね」


「わんっ」


真珠が鳴いた直後、扉をノックする音がした。


***


若葉月24日 早朝(1時51分)=5月9日 10:51



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