第二百十二話 5月9日/憧れの先輩からのメッセージを確認した後、公式サイトでPVを見た後ログイン



悠里は要からのメッセージをスマホの画面に表示させた。





高橋さん。メッセージをありがとう。

待ち合わせの時間は今日の10:00だね。

高橋さんとゲームで遊ぶのを楽しみにしているね。

都合が悪くなったら連絡して。遊べるようなら連絡しなくていいから。

じゃあ、またね。





悠里は要からのメッセージを二度読み返して微笑した。


「えっと、私は今日、先輩と遊べるから返信しなくていいんだよね」


悠里はそう呟いた後、もう一度要からのメッセージを読み返して今の時間を確認した。

9:14だ。要との待ち合わせの時間までまだ時間がある。


「そうだ。『アルカディアオンライン』の公式サイトを見てみようかな」


ワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』のPVを見てみよう。

悠里はパソコンを起動させて『アルカディアオンライン』の公式サイトにアクセスする。


「『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』のPVあった。見てみよう」


悠里は動画を見始めた。


「あっ。鐘の音」


動画の始まりは港町アヴィラと西の森を上空から広く映した映像だった。

続いて西の森を走るフォレストウルフ、シルバーフォレストウルフの大群。

それから必死な顔で鐘を叩く兵士の姿が映し出される。


「へえ。この人があの時、鐘を鳴らし続けてくれていたんだ」


悠里はマリーとしてワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』に遭遇した夜のことを思い出す。

長い、長い夜だった。


「今はこの動画、見ない方がいいかも。夢中になって先輩との約束に遅れるとか嫌だし……」


悠里は公式サイトを消して、パソコンをシャットダウンした後、スマホで時間を確認する。

今の時間は9:27だ。


「先輩との待ち合わせ時間には早いけど、もうログインしちゃおう」


段ボール箱にしまっていたヘッドギアとゲーム機、コードを取り出して、ヘッドギアとゲーム機をコードでつなぐ。

ゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつけた。

部屋着でベッドに横になり、目を閉じる。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。



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