第二百九話 高橋悠里は朝ご飯のパンケーキを食べて、食器を洗う

「悠里。朝ご飯ができたわよ。起きて」


祖母に声を掛けられ、身体を揺すられて悠里は身じろぎをする。


「今日の朝ご飯はパンケーキよ。お母さんがバナナを切って、チョコレートソースをかけてくれたの。出来立てを食べた方がおいしいわよ」


「食べる……」


悠里は『アルカディアオンライン』でおいしいパンケーキを堪能したことを思い出しながら起き上がる。

祖母は悠里がベッドから身体を起こしたことを確認して、部屋を出て行った。

悠里はパジャマ姿のまま、部屋を出た。部屋着に着替えていたら、パンケーキが冷めてしまう。


トイレに寄って、悠里はダイニングに向かう。


ダイニングでは祖父以外の家族がバナナが盛り付けられ、チョコレートソースがかかったパンケーキを食べていた。

悠里の席にもパンケーキの皿とナイフとフォーク、そして牛乳が入ったカップが置いてある。

祖父は白いご飯と焼いた塩じゃけ、ほうれん草のお浸しに卵焼きという純和風のメニューを食べている。

おそらく祖母が作ったのだろう。父親が若干羨ましそうな顔で祖父の朝食をちらちらと見ている。


「いただきます」


悠里は手を合わせて言った後、パンケーキを食べ始めた。

起きた直後に食べても、パンケーキはおいしい。

人によっては起きた直後にはなにも食べられないということもあるだろうし、晩ご飯を食べすぎてしまった時には悠里でも起き抜けに朝ご飯を食べるのはキツいこともある。

でも、今朝はおいしく楽しくパンケーキを食べ終えて牛乳を飲んだ。


「ごちそうさまでした」


家族の誰よりも早くパンケーキを食べ終え、牛乳を飲み終えた悠里はパンケーキが乗っていた皿の上に牛乳を入れていたカップを重ねて席を立つ。


「悠里。今日はずっとパジャマのままでいないで、着替えなさいよ」


「はあい」


母親の注意に気のない返事をしながら、悠里は食器を持ってキッチンへと向かった。

母親は昨日は『パジャマのままでずっと過ごしたら洗濯物が減る』と言っていたのに今日は『着替えるように』と注意する。

大人は、気分によって注意する内容が違うのがずるいなあと時々思うけれど、母親はご飯を作って洗濯をして、リビングやダイニング等の掃除をしてくれる存在なので悠里は頭が上がらない。

中学校の教室では、時々クラスメイトの男子生徒が「ウチのクソババアが」等、口にしているが、うちでそんなことを言ったら間違いなくご飯抜きの刑になる……。


悠里はキッチンで自分の分の食器を洗ってから洗面所に向かう。

洗面所で顔を洗って、歯磨きをして、自室へと戻った。



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