第百九十八話 マリー・エドワーズと真珠は情報屋のルームで目覚め、情報屋と共に教会を出て馬車に乗る
目が覚めたマリーは瞬く。ここは……情報屋のルームだ。
マリーと真珠はソファーに座ってログアウトしたのだ。真珠はマリーにくっつくようにしている。
もう、真珠も目が覚めていた。
「おはよう。真珠」
「わうわぅ。わうー」
真珠とマリーが挨拶をして微笑みを交わしていると情報屋が声を掛けてきた。
「マリーさん。真珠くん。お目覚めですか?」
机の上にあるノートパソコンで作業していた情報屋は作業を中断してノートパソコンをシャットダウンした。
「おはようございます。情報屋さん。ソファーを貸してくれてありがとうございます」
「わぅわううわううわ」
マリーと真珠はルームに居させてくれた情報屋にお礼を言って頭を下げる。
感謝の気持ちを示すことは大事だ。マリーのプレイヤー善行値も上がるかもしれない。
「どういたしまして。マリーさん。ユリエルさんからのメッセージはもう確認しましたか?」
「はいっ。確認しました」
「くぅん?」
真珠はなんの話かわからなかったので首を傾げる。
「あのね。ユリエル様が私と真珠と情報屋さんのために、教会の前に馬車を来させてくれたんだって。馬車っていうのは領主館から私と真珠が乗ってきた乗り物だよ。わかる?」
わかる!! 真珠は馬車に乗って窓の外を見て、とても楽しかったことを思い出しながら尻尾を振って肯く。
「真珠くんも状況を理解してくれたようですし、教会前に移動しましょう」
情報屋に促されたマリーはソファーから立ち上がり、真珠はソファーからジャンプして飛び下りた。
情報屋がマリーと真珠のためにルームの扉を開けてくれたので、マリーはワンピースドレスの裾をつまんで一礼し、真珠はお礼を言って尻尾を振る。
マリーと真珠がルームの外に出た後、情報屋も外に出て扉を閉める。
情報屋は自分の左腕の腕輪を扉に触れさせて、口を開いた。
「管理者権限ON。ルームロック」
情報屋がそう言うと扉が光り、彼の目の前に画面が現れる。
画面は情報屋にしか見えず、マリーと真珠の目には映らない。
♦
管理者権限により、プレイヤーNO8029デヴィット・ミラーのルームの扉がロックされました。
♦
メッセージを確認した情報屋は口を開いた。
「クローズ。お待たせしました。マリーさん。真珠くん。行きましょう」
「はいっ」
「わんっ」
情報屋は階段を二段上がって、立ち止まる。
そしてマリーと真珠が階段に乗ったことを確認した後、情報屋は口を開いた。
「『上りON』」
情報屋がそう言うと、階段が上に向かって動き出した。
エスカレーターになった階段に乗りながら、真珠はいつか自分も『上りON』や『下りON』と言ってみたいなあと思う。
マリーと真珠、情報屋が一番上までたどり着くとフローラ・カフェ港町アヴィラ支店のカウンター前につながる。
カウンターにいた神官は聖人二人と聖獣一匹として、マリーたちに丁寧に応対してくれた。
カフェを出たマリーたちは礼拝堂を通って、教会の入り口に向かう。
礼拝堂では朝の礼拝が行われていて、マリーは通り過ぎるのがとても気まずいと思った。
情報屋と真珠は平然と歩いている。
教会の入り口に到着した。
入り口では領主館を出る時に、マリーと真珠を乗せてくれた馬車と御者が待っていた。
「おはようございます。お待ちしていました。マリーさんと真珠さん。それからデヴィットさん」
デヴィットさん?
マリーと真珠は御者の言葉に首を傾げた後、それが情報屋の名前だと思い至った。
いつも『情報屋さん』と呼んでいるのでつい、本名を忘れてしまいがちになる……。
「ユリエル様に、皆様をウォーレン商会にお連れするようにと申し付けられております。どうぞ、馬車にお乗りください」
そう言って御者は馬車の扉を開けた。
「ありがとうございます。御者さん。真珠。抱っこして馬車に乗せるね」
「わんっ」
真珠は前回、マリーに抱っこして馬車に乗せてもらったことを覚えていたので目を輝かせて肯く。
マリーは真珠を抱っこして馬車に乗せ、真珠は自分で馬車内の座席に飛び乗った。
「マリーお嬢様。お手をどうぞ」
マリーお嬢様!! 御者にそう呼びかけられてマリーは照れた。でも嬉しい。
御者に手を差し伸べられたマリーは、ワンピースドレスの裾をつまんで一礼した後、彼の手を借りて馬車に乗る。
マリーに続いて情報屋が馬車に乗り込んだ。
マリーと真珠、情報屋が馬車に乗ったことを確認した御者は、馬車の扉を閉めた。
そして御者は御者席に座り、馬に軽く鞭を入れた。馬車が動き出す。
マリーと真珠は馬車の窓から外を見て歓声をあげ、情報屋は馬車の中を興味深く見回した。
***
若葉月22日 朝(2時43分)=5月8日 17:43
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