第百九十五話 高橋悠里は幼なじみの彼女のメッセージを読み、アラームをセットした後に歯を磨く



自分のスマホを手にした悠里は幼なじみの晴菜から直電とメッセージが来ていたことに気づく。


「はるちゃんから直電とメッセージが来てたんだ。私が先輩と待ち合わせしてゲームにログインした直後に来てたみたいだけど……」


もしかして晴菜の用件も要と同じで『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届いたということではないだろうかと予想しながら、悠里は晴菜からのメッセージを読んだ。





悠里。あたしにも『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届いたよ。

時間が合えば一緒に遊びたいと思って直電したけど、無理そうだから一人で遊ぶね。

今度は、時間が合えば一緒に遊ぼうね。

あたしは課金主人公にするつもり。

『アルカディアオンライン』の公式サイトに、希望する条件の主人公を表示させる『キーワード課金』っていうのが書いてあったから、それをやってみる。

じゃあ、またね。





悠里は『アルカディアオンライン』の公式サイトを確認してみようと思ったが、昼ご飯を食べ終えた後に歯磨きをしていなかったことを思い出した。

歯を磨きに行って、トイレにも行きたい。

悠里は晴菜にメッセージを返信した後、30分後にアラームをセットして自室を出た。


一階のトイレに行って、洗面所で歯を磨いていると通りかかった祖父が悠里に呆れた目を向けた。


「なんだ。悠里はまだパジャマでいるのか。しかも今頃、歯を磨いているのか」


悠里は歯磨きの途中なので祖父の言葉に特に反論することもなくこくりと肯き、祖父はため息を吐いてトイレに入った。

悠里は歯磨きを終えて洗面所を出た。


悠里はこれから30分間、時間を潰さなければいけない。トイレに行ったり歯を磨いたりしたので少しは時間が経っただろう。

『アルカディアオンライン』の公式サイトを確認して時間を潰そうと思いながら二階に続く階段を上ろうとしたその時、悠里は母親につかまった。


「悠里。また部屋でゲームばっかりするんじゃないでしょうねっ」


腰に手を当てて母親は悠里を睨む。トイレから出てきた祖父は母親と悠里に関わらないように足音を忍ばせてリビングに向かった。

いつもなら、悠里を見捨てて母親を窘めない祖父に腹を立てているところだが、今は違う。

母親に怒られない言い訳を思いついたのだ!!

悠里はドヤ顔で胸を張り、母親を見つめて口を開く。


「私、今から部屋で30分間、勉強するから。その後でゲームで遊ぶからっ」


「本当に勉強するの?」


母親は悠里に疑惑の目を向けた。悠里は大きく肯く。


「じゃあ、コーヒーを淹れて部屋に持って行ってあげるから。嘘吐いてゲームやってたら、身体を揺すって起こすからね」


母親はそう言ってキッチンに向かった。


「嘘吐いてないもんっ」


唇を尖らせて母親の背中を見つめて呟いた後、悠里は自室へと向かった。



***


若葉月22日 早朝(1時58分)=5月8日 16:58



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