第百九十四話 マリー・エドワーズはログイン制限時間が気になる



自分の失態に頭を抱えていたクレムが突然ぱっと顔を上げて口を開いた。


「そういえばオレ、もうすぐログイン制限に引っかかるっぽいかも」


「えっ!? クレムがログイン制限に引っかかるなら、今日の夜中過ぎまで一緒に遊んでた私もヤバいよ……っ!?」


クレムの言葉を聞いたマリーは青ざめる。


「マリーはオレたちと別れた後、何時にログアウトした?」


「確か、5月8日の2:45だったと思う。転送の間でサポートAIさんに聞いたの」


「その後、ログインしたのは何時だ?」


クレムに問いかけられて、マリーは要を待たせたくなくてバタバタとログインしたことを思い出す。


「正確な時間はわかんないけど……」


「たぶん、14:00くらいじゃないかな。マリーちゃんと俺は一緒に遊ぶ約束をしていて、俺はそれくらいにゲームにログインしたから」


自分が再度ゲームにログインした時間を答えられなくて口ごもるマリーを、ユリエルがフォローする。

ユリエルの言葉を聞いた情報屋はアイテムボックスから懐中時計を取り出して、時間を確認した。


「今のゲーム時間は1時48分ですね。時間帯区分は早朝です」


「ってことはリアルは何時だ? ……あああっ!! 考えるの面倒くせえっ!!」


「クレムに同意!!」


時間の流れが違うゲームとリアルの時間を確認することの煩わしさに頭を抱えるクレムとマリーを見ながら、真珠も考えてみたけれど時間のことはわからなかった。


「とりあえずマリーちゃんはログアウトして、リアルの時間を確認したらどうかな? フレデリックお兄様が行動を開始するのは朝以降だと思うから、リアルで30分が過ぎたくらいにまたログインすればいいと思うんだけど……」


「マリーさんと真珠くんは、私のルームのソファーで眠って頂いて大丈夫ですよ。30分程度でしたら全く問題ありません」


ユリエルの提案を聞いた情報屋がマリーと真珠に言う。

マリーはユリエルの提案を受け、情報屋にお礼を言った後に真珠を見つめた。

真珠もマリーの目を見つめ返す。


「真珠。私たち、このソファーでちょっと寝るからね」


「わんっ」


「また起きたら会おうね」


「わんわんっ」


マリーは真珠の頭を撫でてぎゅっと抱きしめてから口を開いた。


「ログアウト」


マリーの意識は暗転した。


悠里は自室のベッドの上で目を開けた。

無事にログアウトできたようだ。

ヘッドギアを外して起き上がり、悠里はため息を吐いた。


「本当、ゲームの時間制限って面倒くさい……」


悠里はヘッドギアとゲームの電源を切った。

30分後に再びプレイする予定なのでヘッドギアとゲームをつなぐコードはそのままにしておく。


「スマホで今の時間を確認して、30分後にアラームをセットしなくちゃ」


悠里はスマホを手にするためにベッドを下りた。


***


若葉月22日 早朝(1時49分)=5月8日 16:49



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