第百九十話 マリー・エドワーズは自分の失敗談を語って落ち込み、その失敗談に対価を貰って元気になる



「マリーさん。その『白薔薇蜘蛛糸』を売って頂けるのであれば、精いっぱいの高値をつけさせて頂くのですが……」


情報屋の言葉に、マリーは首を横に振った。


「このリボンは売れません。このリボンが無いと、身に着けられない装備品があるんです」


マリーはそう言って、アイテムボックスから『疾風のブーツ』を取り出して情報屋に見せた。


「こちらがリボンが無いと私が身に着けられない装備品の『疾風のブーツ』ですっ。これもレーン卿のお下がりですっ」


「へえ。かっこいいブーツだな。でもオレの足には小さいかも」


「『アルカディアオンライン』ってプレイヤーキャラの体格に合わせて装備品の大きさが変動するとかじゃないんだ?」


「くぅん?」


「そう。プレイヤーとかNPCが、装備品に合わせなきゃいけない仕様。そうじゃないと武器とか防具が売れないからっていう話らしい」


クレムとユリエルがマリーが手にしている『疾風のブーツ』を見ながら話し、真珠は二人の話を肯きながら聞いている。


「その『疾風のブーツ』には装備するために必要な能力値があるんですか?」


情報屋は『疾風のブーツ』を見ながらマリーに問う。


「たぶん、私のDEX値が低すぎるせいで、ブーツの紐をひとりで結べなかったんです……」


マリーはひとりでブーツを履けなかった時のことを思い出し、しゅんとして俯く。


「マリーはまだ5歳だもんなあ……」


「マリーちゃんは身体も手も小さいしね」


「わうー。くぅん……」


クレムとユリエルは俯くマリーに同情的なまなざしを向け、真珠はひとりでブーツの紐を結べなかった時のマリーの悲しそうな顔を思い出し、今のマリーのしゅんとした顔を見て悲しい気持ちになる。


「DEX値が低すぎることで、ブーツの紐をひとりで結べなくなるというのは興味深い情報です。状態異常攻撃や能力値減少の攻撃を受けた際のDEX値の減少がバトルに置いて重大な危機に結び付くかもしれないという知見の補強になります。情報料として銀貨3枚を差し上げます」


情報屋の言葉を聞いたマリーは顔を上げ、満面の笑みを浮かべて口を開いた。


「ありがとうございます……っ!!」


自分の失敗談に対価を貰えたマリーは元気になり、大喜びで情報屋から銀貨3枚を受け取ってアイテムボックスに収納する。


「マリー復活だな」


「マリーちゃんが元気になってよかった」


「わうーっ。わんわんっ」


クレムとユリエル、真珠は元気になったマリーを温かく見つめた。



***


マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価(第百八十九話分から加算) 金貨13枚/銀貨3枚/銅貨1枚


若葉月22日 早朝(1時29分)=5月8日 16:29



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