第百八十五話 マリー・エドワーズはユリエルと出かけたい
マリーは食堂に戻ってきたレーン卿から依頼した鑑定結果をまとめた書状を受け取る。
領主やレーン卿のウォーレン商会への働きかけが失敗に終われば、マリーが借金を返済して『銀のうさぎ亭』を守らなければいけない。
だから早々に情報屋と会う約束を取り付けたかった。
情報屋にこの鑑定結果を渡せば後金を貰えるはずだと思いながらマリーは口を開く。
「あの、私、この鑑定結果を依頼人に届けてもいいですか?」
「領主館を出るのであれば、馬車を用意させますよ」
「いいえっ。レーン卿。あの、大丈夫です。その代わり、ユリエル様と一緒に行きたいんですけど……」
悠里はマリーの固有クエスト『権利書を買い戻せ!!』の達成条件を満たすために頑張りながら、要とも遊びたかった。
今なら領主は席を外しているし、ユリエルを連れ出せるのではないだろうか。
マリーのお願いを聞いたレーン卿は難しい顔をする。レーン卿が沈黙しているのを見かねて、彼の母親が口を開いた。
「マリーちゃん。ユリエルは病み上がりだから、外出させることはできないわ」
「叔母様。俺は部屋に閉じ込められたとしても、マリーちゃんのところに行きますよ。離れていても、マリーちゃんとはメッセージのやり取りもできるようになったので」
不敵な表情で言うユリエルが美しくてかっこよくて、マリーはキュン死するかと思った。
だが、死に戻りはしなかった。『アルカディアオンライン』には『キュン死』は無いようだ。
「わかりました。ユリエルはマリーさんと一緒に行きなさい。伯父上には私から話しておきます」
「そんな、フレデリック。お兄様がいないのに勝手なことを言ってはいけないわ。お兄様がユリエルを大切にしていることを、あなたも知っているでしょう?」
「今のユリエルは病弱でか弱い子どもではありません。ユリエルは『聖人』になったのですから」
「今の俺のことをわかってもらえて嬉しいです。フレデリックお兄様。マリーちゃん。教会に行こう」
ユリエルが教会への死に戻りを示唆していると理解したマリーは肯き、魔力枯渇状態になるために『ライト』を発動させた。
ユリエルはステータス画面を表示させてMP最大値を1にして魔力枯渇状態になり、マリーより一足先に光に包まれて消える。
ユリエルの死に戻りを見たレーン卿と彼の母親は驚いて目を見張った。
「真珠。私たちも教会に行くからね」
「わんっ」
マリーは真珠を抱っこしたまま魔力枯渇状態になり、教会に死に戻った。
***
若葉月21日 真夜中(6時49分)=5月8日 15:49
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