第百七十七話 高橋悠里は転送の間で5月8日分の換金をする
気がつくと、悠里は転送の間に立っていた。
「『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様」
「お出迎えありがとうございます。サポートAIさん。あの、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「どうぞ。ワタシに答えられることならよいのですが」
「あの、今ってリアルの日時は5月8日だったりしますか?」
「はい。現在の日時は5月8日 2:45です」
「午前二時……っ」
悠里はゲームで遊びまくって夜更かしをしていることを母親と祖母にバレなかったことに感謝しながら口を開く。
「えっと、じゃあ今日の分の換金ってできますか?」
「可能です。換金しますか?」
「しますっ。1000円、換金しますっ」
「作業中……。作業終了。高橋悠里様の登録口座に1000円を入金しました。後程、お確かめください。高橋悠里様の現在の所持金は4264201リズです」
「ありがとうございますっ。よかった。今からリアルに戻って寝ようと思うんですけど、5月8日分の換金を忘れるかもしれないからやってしまいたかったの」
「そうですか。お役に立てたのであればよかったです」
「サポートAIさん。私、今日はこれでゲームを終わりにしますね」
「高橋悠里様。お疲れさまでした」
「サポートAIさんもお疲れさまでした。ログアウト」
悠里の意識は暗転した。
悠里は自室のベッドの上で目を開けた。
無事にログアウトできたようだ。
部屋の明かりはついているけれど、ドアを閉めていたので廊下に漏れ出した光は目立たず、母親と祖母の目を逃れることができたのかもしれない。
ヘッドギアを外して起き上がり、悠里は安堵の吐息をついた。
「ゲームで遊んでいる時、強制ログアウトさせられなくて本当によかった……っ」
『アルカディアオンライン』未成年のプレイヤーは家族からの強制ログアウトにどう対応しているのだろうか。
……為すすべもなく、強制ログアウトしているのかもしれない。
「寝て起きた後に遊ぶために、ちゃんと充電しておこう」
悠里はヘッドギアとゲーム機の電源を切り、ゲーム機器が入っていた段ボール箱から充電器を取り出した。
そして、ヘッドギアとゲーム機を充電する。
「あと、はるちゃんに本屋さんの工房の様子を見に行けなくてごめんねってメッセージを送っておこう」
悠里はスマホを手にして晴菜にメッセージを送る。
そしてスマホを充電して部屋の電気を消し、ベッドに入った。
ゲームが楽しくて興奮しているのですぐに眠れないかもしれないと思いながら目を閉じる。
眠れないかもしれないという予想とはうらはらに、悠里はすぐに眠ってしまった……。
***
高橋悠里の5月8日の換金額 1000円
高橋悠里の貯金額 2600円→3600円
マリー・エドワーズの現在の所持金 4264201リズ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます