第百七十五話 マリー・エドワーズはフレンドと別れて真珠とゴミ拾いをする
高速ハイハイで進むこと10秒。白い霧に覆われていたマリーの視界が明るく開けた。
無事に『孤王の領域』に着いたようだ。
マリーに続いて真珠、クレム、アーシャが姿を現す。
マリーはパーティーメンバーが全員、無事に霧を抜けられてほっとした。
「おおっ。レイドボスと戦ったフィールドじゃん。すげえ」
「広いね……っ」
「わんっ」
目の前に広がる草原と点在する木々。
クレム、アーシャはフィールドを見回して感嘆の声をあげ、真珠は二人を見守って鳴く。
マリーが後続のプレイヤーの邪魔にならないように穴から離れようと提案して、一行は歩き出した。
「私はここでガラスの欠片を拾ったんだよ」
マリーの言葉にクレムは地面に視線を向けた。
草原の上にはガラスの破片や瓶の蓋、刀身が折れた剣や穂先がない槍などが転がっている。
マリーは相変わらず汚い場所だと思ったが、以前見た時よりもゴミの数が減っているように感じた。
プレイヤーが錬金素材としてゴミを持ち帰っているのかもしれない。
「すげえ!! 宝の山……っ!!」
マリーはすぐにガラスの欠片を拾おうとするクレムのローブの裾を引っ張り、引き止める。
「SPに余裕があるなら『掃除』スキルを取ってからゴミ拾いをするのがおすすめだよ。スキルレベルが1上がるごとにAGIの値が1上昇するから」
「マリーちゃん。それ本当っ!?」
マリーの言葉に食いついたのはクレムではなくアーシャだった。
「ウチ、取ろう。AGI値を上げたいんだよね」
「必要SPが少なかったらオレも取ろう」
アーシャとクレムはステータス画面を出現させて『スキル習得』をタップした。
マリーは虚空を凝視しているアーシャとクレムを見て、真珠から見た自分もこんな風に見えているのだろうなと思う。
マリーと真珠が見守る中、アーシャとクレムは『掃除』スキルを習得した。
マリーはパーティーメンバーの顔を見回して、口を開いた。
「じゃあ、ここからはそれぞれにゴミ拾いだね」
「だな。パーティーは解散させておくよ」
パーティーのリーダーをしていたクレムはステータス画面を操作して、パーティーを解散させた。
「もう夜も遅いと思うし、ゴミを拾ったら教会に死に戻ってそれぞれのロ……じゃなくてゲーム終了の場所に戻るってことでいい?」
アーシャの言葉にマリーと真珠、クレムは肯く。
「じゃあ、またね。一緒にゲームで遊べてすごく楽しかった。また遊ぼうね」
アーシャはマリーたちに笑顔で挨拶をして、地面を見ながら自分の目当てのゴミを探し始めた。
「マリー。ガラスの欠片が落ちている場所、教えてくれてありがとうな。時間が合ったら、また一緒に遊ぼうぜ。真珠もまたなっ」
クレムはマリーと真珠の頭を撫でて、アーシャとは別の方向に歩き出しながらガラスの欠片を拾っていく。
「真珠。私たちもゴミ拾いを頑張ろうね」
「わんっ」
アーシャとクレムを見送って、マリーと真珠はゴミ拾いを始めた。
掃除スキルのレベル上げをしたかったので、とりあえず目につくゴミを片っ端から拾う。
真珠はゴミを口にくわえて運び、マリーの左腕の腕輪に触れさせて収納した。
集中してゴミを拾っているうちに、視界が暗くなる。空の色は茜色から墨色に変わっていた。
「真珠。夜になっちゃったから帰ろうね」
「わんっ」
近くにいる真珠の顔もよく見えない。
マリーは魔力枯渇をさせるために『ライト』を使おうと口を開く。
「魔力操作ON。ライトON」
マリーの手のひらの上に小さくて淡い光の玉が出現する。
「もう一個ライトを出そう。ライトON」
二つ目の光の玉が出現した。マリーは魔力枯渇になるまでライトを使い続けて死に戻った。
気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。
無事に死に戻れてよかった。
「真珠。おうちに帰ろうね」
「わんっ」
マリーと真珠は教会を出て『銀のうさぎ亭』に向かった。
***
マリー・エドワーズの現在のスキルレベル
ライト レベル2(80/200)
魔力操作 レベル3(12/300)
魔力視 レベル1(57/100)
掃除 レベル1( 35/100)
若葉月19日 夜(5時07分)=5月8日 2:07
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