第百七十話 マリー・エドワーズと真珠はパーティーメンバーの優しさに感激する
西門を出て西の森に向かっていると、真珠が突然、マリーたちの進行を阻むように立ち塞がり、悲しそうに鳴いた。
「わうー。きゅうん……」
「真珠。どうしたの?」
「くぅん。きゅうん」
真珠に駆け寄り、しゃがみ込んだマリーに真珠は懸命に訴える。
マリーは真珠が訴えたいことをなんとかくみ取ろうとした。
「どうした? マリー。真珠」
しゃがみ込んだまま動かないマリーと真珠に、クレムが声をかける。
「あのね。クレム。真珠がなにか言いたいみたいなんだけど、なんだろうって考えてたの」
「くぅん。わぅん……」
真珠は西の森に行く邪魔をして立ち塞がった。
バトルの前に、なにか言いたかった……?
西の森。バトル。
ワードを並べてマリーは気づいた。
「シルバーフォレストウルフとフォレストウルフのこと……っ? 真珠がシルバーフォレストウルフとフォレストウルフのことが怖くなっちゃうかもしれないっていうことを皆に伝えようとしていたの?」
「わんっ!!」
マリーの言葉に真珠は耳を立てて尻尾を振る。
どうやら正解だったようだ。
「真珠くんはシルバーフォレストウルフとフォレストウルフのことが怖いの? 種族レベルが1だから?」
マリーの言葉を聞いたアーシャが首を傾げて疑問を口にする。
マリーはパーティーメンバーに真珠がシルバーフォレストウルフの肉を怖がって動けなくなったことを話した。
「真珠って種族がシルバーフォレストウルフなのか?」
クレムに問いかけられたマリーと真珠は、揃って首を横に振る。
「真珠は『白狼』っていう種族だよ」
「わんっ」
「へえ。ハクロウなんて聞いたことない」
「真珠くんはレアモンスターなのかもねっ」
「そうかも。真珠って可愛いし」
イヴとアーシャにレアモンスターで可愛いと褒められて真珠は照れた。
マリーは真珠の可愛さや素敵さが認められて嬉しくなり、ドヤ顔をする。
「じゃあ、シルバーフォレストウルフとかフォレストウルフが出てきたら、マリーが真珠を抱っこすればいいんじゃね? バトルはイヴとアーシャが主体で、俺が補助って感じでどう?」
「あたしはそれでいいよ」
「ウチも賛成」
クレムもイヴもアーシャも優しい。
マリーと真珠は感激した。
「みんな、本当にありがとうございますっ」
「わぅわううわううわっ」
パーティーメンバーの温かな対応が嬉しくて、マリーと真珠は頭を下げた。
「礼とかいいって。オレはマリーと真珠が死に戻ったらすげえ困るし」
クレムはそう言って、にっと笑う。
マリーはクレムとガラスの欠片が拾える場所である『こおうのりょういき』に案内する約束をしている。
「そうだよ。遠慮なんかしないで。あたしたち、友達でしょっ」
イヴの言葉に、マリーと真珠は素直に肯いた。
「真珠くん。もう心配事はなくなった?」
アーシャに問いかけられて真珠は肯く。そして尻尾を振った。
「そっか。よかった。じゃあ、みんなで西の森に行こうっ」
アーシャはそう言って歩き出す。イヴがアーシャの隣に並んだ。
マリーと真珠、クレムがその後に続く。
もうすぐ西の森に着く。初バトル、パーティーメンバーの邪魔にならないようにがんばろう……っ。
マリーの心は緊張と興奮で高揚した。真珠は耳をピンと立てて歩きながら、戦える敵とは頑張って戦おうと思った。
***
若葉月19日 昼(3時49分)=5月7日 24:49
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