第百六十九話 マリー・エドワーズは『アルカディアオンライン』における『寄生プレイ』について知る
「うわっ。マリーがめっちゃ落ち込んでる。なんで?」
「マリーちゃんは『アルカディアオンライン』が寄生プレイオッケーなゲームだって知らないのかな?」
「『アルカディアオンライン』が寄生プレイオッケーなゲーム……? どういうことですか……?」
落ち込んで項垂れ、地面を凝視していたマリーはのろのろと顔を上げてアーシャに問いかける。
「『アルカディアオンライン』は寄生プレイヤーの数だけ、討伐数分、寄生プレイヤー以外のパーティーメンバーのプレイヤー善行値が上がる仕様なんだよ」
マリーの質問にアーシャが答えて微笑んだ。
「だからマリーちゃんと真珠くんは安心して寄生プレイしていいんだよ」
『寄生プレイヤー滅びろ』的な言葉をゲーム好きの幼なじみから聞かされていた悠里は『アルカディアオンライン』が寄生プレイオッケーなゲームだと理解して衝撃を受けた。
「自分がパーティーを離脱するかパーティーリーダーがパーティーを解散するか、パーティーリーダーがメンバーを追放するかしない限り、パーティーメンバー同士の距離が離れてもオッケーだしね」
アーシャの言葉をイヴが補足する。
マリーと真珠は肯きながらイヴの言葉を聞いた。
「でもマリーちゃんは寄生プレイっていうか姫プレイが似合うよね。リボンとワンピースの装備が可愛いし、ブーツもすごくよく似合ってるし」
アーシャに可愛いと言われてマリーは照れた。
可愛いと言われたくて可愛い女子キャラを主人公に選んだので、すごく嬉しい。
「姫プレイってワード、可愛いね。寄生プレイっていうとイメージ悪いから姫プレイとか王子プレイとか言うといいかも」
イヴの言葉を聞いたクレムが首を傾げた。
「寄生でも王子でも変わんなくね? 姫は可愛いかもしれないけどさ」
「でも王子キャラとか常に護衛に守られてるっぽいよね」
クレムの言葉を受けてアーシャが言うと、イヴが口を開いた。
「『アルカディアオンライン』にも王子キャラっているのかな? 王子キャラとか姫キャラを主人公に選べたら面白そう。あたしが無課金主人公を選んだ時は、孤児キャラ主人公が多かったけど。アーシャと一緒にプレイしたかったから、港町アヴィラにいる女子キャラで、リアルの自分に似た雰囲気のグラフィックにしたんだよね」
イヴの言葉を聞いたマリーは頭を抱えたくなった。リボンが解けると嫌なので、頭を抱えたい衝動をなんとかこらえながら思う。
よく知らないプレイヤーの前ではリアルの話、ダメ!! 絶対!!
話を変える気力もなく、マリーは他力本願で、誰かがリアルの話からゲームの話に切り替えてくれるようにと願った。
緩やかに列は前に進んでいく。歩きながら、アーシャがマリーに問いかけた。
「マリーちゃんのリボンってどこかで買ったの? それともフレンドに作ってもらったとか?」
「貰ったんです」
リアルの話からゲームの話に戻ったことにほっとしながら、マリーは微笑んで答える。
「へえ。誰に? もしかして彼氏に?」
アーシャの言葉にクレムが笑い声をあげた。
「ハハッ。マリーは5歳だぜ? 恋人とか早すぎるだろ」
「クレムくん。マリーちゃんは5歳でも中の人は5歳じゃないかもしれないんだよ」
アーシャが真面目な顔で言う。確かに、マリーの中身は中学一年生の女子生徒だ。
「それで? 彼氏から貰ったの?」
「ノーコメントでお願いします」
マリーにリボンとブーツをくれたフレデリック・レーンの名前はワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』で知れ渡ってしまっている。
うかつなことは言えない。そしてマリーが持っている情報は全部情報屋に売りたい。
その後、パーティーメンバー同士で雑談をしているうちに列は進み、マリーたち一行は無事に西門を出ることができた。
***
若葉月19日 昼(3時43分)=5月7日 24:43
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