第百五十五話 高橋悠里は強制ログアウトをして母親を『アルカディアオンライン』に勧誘する
悠里が目を開けると、母親の顔が目の前にあった。
悠里は、自分が強制ログアウトをしたのだと気づいてため息を吐く。
ゲーム内で、マリーと真珠はまた唐突に眠ってしまったのだろう。
レーン卿たちに迷惑をかけてしまったかもしれない……。
「悠里は勉強しないでゲームばっかりして……っ」
母親の小言を聞き流しながら、悠里はため息を吐いた。
「なにか用? 今、すごくかっこいいゲームのキャラとお茶してたんだよ。邪魔しないでよ」
「お風呂に入るように言いに来たのよ。そんなに文句を言うほど、かっこいいゲームキャラがいるの?」
「いるの。お母さんも『アルカディアオンライン』をプレイすればいいのに。お金だって貰えるかもしれないし」
そう言いながら、悠里は横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外して電源を切る。
それからゲーム機の電源を切った。
ヘッドギアとゲームをつなぐコードはそのままにしておく。
「そうね。ゲームもいいかもしれない。ワイドショーはオリンピックと新型コロナのことばっかりでつまらないし……。私は芸能人の不倫とかの暴露情報の方が面白いのに……」
「お母さん。悪趣味……」
「スマホからでも申請できるの?」
「たぶん大丈夫だと思うけど、文字入力面倒くさいんじゃない? 私のパソコン使っていいよ」
悠里は母親にそう言ってから、パジャマと下着を持って浴室に向かった。
シャワーを済ませてパジャマに着替え、髪を乾かし終えた悠里が自室に戻ると、母親の姿はなかった。
パソコンの電源がつけっぱなしになっていて『アルカディアオンライン』の申請を終えた画面のままだった。
「お母さんって本当にだらしない……。私にそっくり」
悠里は母親との血の繋がりを感じながら、パソコンの画面を消してシャットダウンした。
そしてベッドの上に放り投げていたヘッドギアとゲーム機の電源を入れ、ヘッドギアをつけてベッドに横になり、目を閉じる。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
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