第百五十話 マリー・エドワーズと真珠はふわふわのパンケーキを堪能する
扉が開いて、銀色のワゴンを押しながら侍女長が部屋に入って来た。
「わあ……!! 可愛いワゴン……!!」
マリーは思わず歓声をあげた。真珠も目を輝かせてワゴンを見つめる。
侍女長は苦笑して、大喜びするマリーと真珠を窘めた。
「マリーさん。真珠。貴人の前ではしたないですよ」
「いいんですよ。グラディス。子どもと子犬はのびのびと自由でいるのが一番です」
「フレデリック様がそう仰るなら注意するのを控えます」
侍女長は優雅に一礼してレーン卿に紅茶をサーブする。
その美しい所作にマリーと真珠は憧れの眼差しを向けた。
レーン卿への給仕を終えると侍女長はテーブルにマリーのパンケーキの皿を、床に真珠のパンケーキの皿を置いた。
真珠は身軽にマリーの膝から飛び下り、パンケーキの皿の前で行儀よくお座りをする。
飲み物はマリーにはホットミルク、真珠には冷たいミルクが用意された。
「ありがとうございます。ブロックウェル様」
「わぅわううわううわ」
侍女長はマリーと真珠に微笑み、レーン卿に一礼してワゴンと共に部屋の隅に控える。
「マリーさん。真珠くん。どうぞ、召し上がれ」
「いただきます……っ」
「わうわうわう……っ」
マリーはナイフとフォークを持ち、真珠はパンケーキの皿に顔を突っ込んだ。
マリーがパンケーキを切り分けていると、一足先にパンケーキを味わった真珠が尻尾を振ってマリーにパンケーキのおいしさを伝えようとする。
「わうーっ!! わうわお!!」
「真珠。おいしいの? よかった。私も食べるね」
マリーは切り分けたパンケーキに添えられた生クリームをたっぷりとつけて口に運ぶ。
口の中に幸せな甘さが広がり、マリーは満面の笑みを浮かべた。
おいしい……!!
蜂蜜飴もおいしかったし、ヒール草もおいしかった。でも、このパンケーキが一番おいしい!!
マリーはこれまで『アルカディアオンライン』で食べた甘味を振り返りながら、パンケーキのおいしさを噛み締めてもぐもぐと食べる。
レーン卿と侍女長は幸せそうにパンケーキを頬張るマリーたちを微笑ましく見守った。
***
若葉月18日 夕方(4時15分)=5月7日 19:15
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