第百四十九話 マリー・エドワーズはレーン卿にインタビューする
「レーン卿。質問してもいいですかっ!?」
「どうぞ」
気合を入れて問いかけるマリーに、レーン卿は穏やかに応える。
「あのっ。レーン卿は結婚してますかっ!?」
「いいえ。独身です」
独身!! よかった!!
乙女ゲームの攻略対象として既婚者はあり得ない。
不倫ダメ!! 絶対!!
「ですが、婚約者はいますよ」
「ええええええええええええっ!?」
「くぅん……」
レーン卿に婚約者がいたなんて……。
プレイヤーの夢は破れた……。
がっくりと肩を落として落ち込むマリーを見つめて、レーン卿は口を開く。
「といっても、名ばかりの婚約ですけれど。いわゆる虫よけのための婚約です」
名ばかりの婚約!!
落ち込んでいたマリーは復活した。
「じゃあ、レーン卿の恋人になりたい女の子は希望を持ってもいいんですか……っ!?」
「そうですね。心惹かれる女性が現れた場合は、婚約を解消した後にアプローチすると思います」
プレイヤーの皆さん!! 朗報ですよ!!
レーン卿は婚約を継続したまま、婚約者以外の女性と付き合うクズキャラじゃなかった!!
嬉しい……!!
この情報は絶対に高値で売れる。売ってみせる……っ。
「えっと、じゃあ、レーン卿はどんな女の子が好きですかっ!? 髪の色とか目の色とかっ」
胸の大きさとか……と言いかけてマリーは思いとどまった。
レーン卿は女の子を胸の大きさで判断したりしない。
「マリーさんの栗色の髪に青い目の色合いは素敵だと思います。真珠くんの白い毛並みも美しいですね」
レーン卿に褒められたマリーと真珠は嬉しくて、照れた。
お世辞だとしても、レーン卿の好みの色合いは聞けたのだから情報屋に売ろう。高値で。
「性格はどんな感じの子が好きですか? たとえば元気な子とか、優しい子とか……」
「人を外見や地位で判断しない女性がいいですね。本を読むのが好きで、知的な会話ができると嬉しいです」
乙女ゲームプレイヤーを全否定!!
美形キャラだから好きになるのに!!
美形キャラだから恋愛イベントにときめくのに!!
乙女ゲームの攻略キャラは見た目が美形でようやくスタートラインに立てる。
そこに地位や資金力、性格の良さやときめきイベントが加わって、ゲーム内人気ナンバーワンキャラに上り詰めるのに……っ。
「マリーさん? 気分が悪いのですか?」
「いいえ。ちょっと……ショックで。私はレーン卿のことをすごく綺麗な人で素敵だなって思っていたのでそういうのもダメなのかなって……」
ショック過ぎて本音をこぼしたマリーに、レーン卿は微笑して口を開く。
「マリーさんにそんな風に思っていただけて光栄です」
レーン卿がそう言った直後に扉をノックする音がした。
***
若葉月18日 夕方(4時03分)=5月7日 19:04
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます