第百四十八話 マリー・エドワーズは失言し、レーン卿はマリーと真珠のためにパンケーキの用意をさせる
「それにしても、光るガラス玉の鑑定結果は興味深いものでした」
レーン卿の言葉にマリーは肯く。
「ガラス玉に魔法が入るとDランクになるのって不思議ですよねっ」
「わんっ」
マリーの言葉に真珠も肯く。
レーン卿はマリーと真珠を見つめて首を傾げた。
「マリーさんと真珠くんはガラス玉に魔法が入るとDランクになることをご存知なのですか?」
「あ……っ」
「くぅん……」
マリーは自分の失言に気づいて口を両手で押さえ、真珠は力なく項垂れた。
レーン卿はマリーと真珠の様子を見て、苦笑する。
「詮索しない方がよさそうですね。マリーさん。どうぞ座ってください。真珠くんはマリーさんの膝の上にどうぞ」
レーン卿は丸テーブルにある椅子をマリーにすすめた。真珠のことにも言及してくれてありがたい。
マリーがすすめられた椅子に座ると真珠がジャンプしてマリーの膝に乗る。
レーン卿はベッドサイドに歩み寄り、置いてある銀のベルを手に取った。
マリーはその銀のベルを見て、フローラ・カフェ入り口のカウンターに置いてあった銀のベルに似ていることに気づく。
「魔力操作ON。トーク」
レーン卿は艶やかな声で言うと、銀のベルを一回鳴らした。
涼やかな音色が部屋に響く。
「ブロックウェルでございます。何か御用でしょうか。フレデリック様」
「グラディス。マリーさんに軽食をお願いします。そうですね。パンケーキがいいでしょう」
パンケーキという言葉を聞いたマリーの顔が輝く。
「真珠くんには……」
「真珠にもパンケーキをお願いしますっ!!」
「わうんっ!!」
マリーと真珠の熱のこもったお願いを聞いたレーン卿は肯き、口を開いた。
「真珠くんにもマリーさんと同じ物をお願いします。それから私には紅茶を用意してください」
「承りました。フレデリック様。フレデリック様が幼少期に使っていた部屋にお運びしてよろしいですか?」
「ええ。そうしてください」
「かしこまりました。通話を終了いたします」
「魔力操作OFF」
レーン卿は銀のベルを元の位置に戻して、マリーの向かい側の席に座る。
「懐かしいですね。この席には昔、僕の家庭教師が座っていたのです」
「私が座っている席には、子どもだったレーン卿が座っていたんですか?」
「わうん?」
「そうです。勉強が終わるといつも、グラディスがパンケーキやお菓子を用意してくれました」
レーン卿は目を伏せて微笑する。
レーン卿のことをよく知るチャンス……!!
マリーは情報屋に聞いてほしいと言われた情報を頭に思い浮かべながら、気合を入れた。
***
若葉月18日 昼(3時54分)=5月7日 18:54
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