第百四十話 5月6日/ゲーム終了

悠里は自室のベッドの上で目を開けた。

無事にログアウトできたようだ。

ヘッドギアを外して起き上がる。


「充電したばっかりだけど、一応、また充電しておこうかな」


悠里はヘッドギアとゲームの電源を切り、そして、ヘッドギアとゲーム機を充電する。


「あ。そうだ。圭くんにお礼のメッセージを送っておこう。マリーと真珠をベッドに寝かせてくれてウェインは床に転がっていたもんね……」


悠里はスマホを手に取り、圭にお礼のメッセージを送った。


「あっ。藤ヶ谷先輩からメッセージが来てる……っ」


悠里は慌ててメッセージを確認した。





今日は牧高食堂に付き合ってくれてありがとう。

高橋さんおすすめの『牧高食堂のオムライス』すごくおいしかった。

今日も『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届かなかったから、まだ一緒には遊べないけど、ゲーム機器が届いたら一緒に遊ぼうね。

また明日、部活で。おやすみ。





「藤ヶ谷先輩からのメッセージ、嬉しい……っ」


悠里は要からのメッセージを三回読み直し、さらに読み返そうとして我に返る。


「感動している場合じゃない!! 返信しないと……っ」


悠里は一秒でも早く返信したくて、自分の気持ちを素直にそのまま書き込む。





寝る前に藤ヶ谷先輩からメッセージをもらえてすごく嬉しかったです。

『牧高食堂のオムライス』も気に入ってもらえてよかったです。

先輩と部活で会えるのを楽しみにしています。『アルカディアオンライン』で一緒に遊べるのも楽しみにしています。

おやすみなさい。





できれば今夜のうちに返信を読んでもらえますようにと願いながら、悠里は要にメッセージを送信した。


「藤ヶ谷先輩からのメッセージ、嬉しすぎて眠れない……っ」


悠里は要からのメッセージを十回読み直して喜びを噛みしめる。

それでも眠気が訪れなかったので中間テストの理科の勉強をして、眠気がやってきたところで切り上げ、明日の登校の支度をしてから就寝した。


金曜日の朝がやってきた。悠里がパジャマから制服に着替えて窓の外を見ると、空模様は曇りだった。雨が降るだろうか。


一階に下り、リビングに顔を出すと、天気予報を見ていた祖母に折り畳みの傘を持っていきなさいと言われて、悠里は肯く。


ダイニングで朝食を食べ終えてから、洗面所へ。歯磨きを終え、髪を梳かしてポニーテールに結う。

洗面台の鏡に映るのは平凡な顔立ちの、高橋悠里だ。

もう少しだけでもいいから可愛い顔で生まれたかったなという気持ちと家族からは可愛いと言われるからいいじゃないという気持ちが交錯する。


「……学校に行こう」


のんびりしていたら、一緒に登校する晴菜を待たせてしまう。

悠里は通学鞄を取りに二階の自室へと向かった。

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