第百二十八話 マリー・エドワーズはゲームをプレイしてすぐにログアウトする



目が覚めたマリーは瞬く。部屋の中は明るい。

マリーのベッド脇には木の椅子に座った祖母がいた。


「おはよう。マリー。ずいぶん長く眠っていたわね」


目覚めたマリーに気づいた祖母が微笑んで言う。

真珠も目覚めて、マリーに頬をすり寄せた。


「シンジュもおはよう」


「わんっ」


「眠ってしまったマリーとシンジュを運んでくれた人がいたのよ。クレム・クレムソンとデヴィット・ミラーと言っていたわ」


「二人とも、私と真珠の友達なの。デヴィット・ミラーさんはウェインから紹介された人で、クレム・クレムソンは『歌うたいの竪琴』の店主の息子だよ」


「そうだったの」


「お祖母ちゃん。今日はなんにち?」


「若葉月14日の朝よ。もうすぐ昼になるわ」


「じゃあ、お祖母ちゃんも仕事が忙しいでしょ? 私と真珠に付き添わせちゃってごめんね」


マリーはそう言って自分の恰好を確かめる。寝巻姿だ。


「私は着替えて、真珠と教会に行ってくる」


「ご飯を食べて行きなさい。お腹が空いたでしょう?」


「眠ってしまう前にデヴィット・ミラーさんと約束したの。私と真珠と一緒にご飯を食べるって」


メシマズを回避するために息をするように嘘を吐きながら、マリーはベッドを下りた。

そしてクローゼットに向かう。

お気に入りのワンピースに着替えて、脱いだ寝巻を畳もうとしたら、祖母が手を差し出した。


「私が洗濯カゴに入れておくから、もう行きなさい。お母さんが心配していたから顔を見せてから行くのよ」


「はあい。行こう。真珠」


「わんっ」


真珠がベッドから飛び下りてマリーに駆け寄る。そしてマリーと真珠は祖母に手を振り、部屋を出た。


カウンターにいた母親に挨拶をして、マリーと真珠は『銀のうさぎ亭』を出る。


「マリーと真珠の身体がどうなっているのか気になったからゲームをプレイしたけど、もうすぐ晩ご飯の時間になりそうなんだよねえ。どこでログアウトしようかな。……そうだ。噴水がある広場に行こう」


「わんっ」


マリーと真珠は中央通りを歩き、噴水がある広場に向かった。


噴水がある広場に到着した。プレイヤーがフレンド登録をしたり、談笑をしている。

露店も並んでいた。

円形の広場を見回して、マリーはどこでログアウトすべきか考える。


「マリー?」


声をかけられて、マリーは驚いた。

声の主はウェインだった。


「ウェイン。ゲームしてたんだ。まだ晩ご飯の時間じゃないの?」


「うちは今日は、夜の8時くらいに父親が寿司を買って帰ってくる予定。笹っぽい葉っぱに一貫ずつ包まれてるやつ」


「いいなあ。うちは晩ご飯、なんだろう? 私、最近強制ログアウトが続いてるから、今日はちゃんとログアウトしたいんだよね。ここでログアウトしようと思ってたんだけど、ダメだったりする?」


「じゃあ、マリーと真珠がログアウトしたら、俺が狩人ギルドの寮に連れてってやるよ。マリーは狩人ギルドに登録してるし、真珠は従魔登録してるから寮を使う資格はある」


「いいの?」


「わうう?」


「約束してたフレンドがゲームに来られなくなったっぽいから、ソロで狩りをしようと思ってたんだ。狩人ギルドでクエスト受けるつもりだったから、気にしなくていいよ」


「ありがとう。ウェイン」


「わぅわうう」


マリーと真珠はウェインにお礼を言って、マリーはログアウトした。


***


若葉月14日 朝(2時57分)=5月6日 17:57



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