第百十九話 マリー・エドワーズたちは情報屋の検証を見守る



「ではマリーさんの情報を検証しましょう」


情報屋はそう言って、ステータス画面を表示させて『ライト』を習得した。


「私がマリーさんが言ったことを実践してみましょう。そういえば、マリーさんは『ライト』を使った後に『魔力操作OFF』と言いましたか?」


「言ってないです!! 魔力操作OFF!! ステータス!!」


情報屋に指摘されたマリーは、慌てて『魔力操作OFF』と言ってからステータス画面を表示させて自分のMP残量を確認する。


「MPがまだ結構残ってる……。魔力操作をONにし続けていたのに、なんで?」


「まだビー玉は光ってるな」


光るビー玉は真珠が前足に挟んで持っている。まだキラキラと光っていた。


「私のステータス画面を表示させ、MPの減り具合等を確認しながら検証しましょう。魔力操作ON。ライトON」


情報屋の手のひらの上に小さくて淡い光の玉が出現した。

情報屋はビー玉を光にかざすために近づける。マリーと真珠、それからクレムは、情報屋が持つビー玉を息を詰めて見守る。

ビー玉に光の玉が吸い込まれた。

透明なガラスのビー玉に『ライト』の魔法が閉じ込められてキラキラと光る。

それを見たマリーとクレムは手を叩き、真珠は嬉しそうに吠えた。

情報屋はビー玉が光ったことを確認して、自分のステータスに目を向ける。


「私のMPは5しか減っていません。ビー玉はまだ光り続けているのに、魔力操作はOFFの状態のようです」


「つまり、ビー玉に光が吸い込まれるとプレイヤーの魔力操作はオートでOFFになるってことか?」


「それだけじゃない。おそらく……」


クレムの言葉を引き継いで何か言おうとした情報屋は、言葉を呑み込んで首を横に振った。


「不確かなことを、情報を扱うことを生業にした私が口にすべきではありませんね。ひとまず、私の『ライト』で光ったビー玉が、どのくらいの時間光り続けるのかアイテムボックスに収納せずに検証します。次は他のビー玉に別のスキルを発動させて、近づけてみましょう」


「私は『アイススター』で星の形の氷をビー玉に閉じ込めたいですっ。透明なビー玉の中に氷の星があるのって可愛いと思うんですっ」


「マリーさん。良い考えですね。やってみてください。お願いします」


「オレは『ファイア』を使ってビー玉の中に火を閉じ込めたい」


「いいですね。クレムくんはそれをお願いします」


「くぅん……」


スキルの発動ができない真珠は、自分だけ役割がないと落ち込む。

情報屋はマリーの膝の上で項垂れる真珠に視線を向けて口を開いた。


「真珠くんはマリーさんとクレムくんの氷や火がきちんとビー玉に吸い込まれるか見ていてくれますか? 見て、検証するのも大事なことです」


「わんっ」


情報屋に役割を貰った真珠は顔を上げて耳をピンと立て、吠えた。


***


若葉月10日 朝(2時40分)=5月5日 17:40



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る