第百十八話 マリー・エドワーズはビー玉を転売する



マリーの話を聞き終えた情報屋はメモを取った自分の手帳を見ながら口を開く。


「マリーさんはクレムくんから買った錬金失敗アイテム『ビー玉』を『ライト』の光に近づけたということで宜しいですね?」


「よろしいですっ!!」


マリーは情報屋の言葉に力強く肯く。


「ビー玉には魔法を吸収して閉じ込める性質があるのかもしれませんね」


「そうだったらちょっとすごいな。ビー玉はゴミアイテムで錬金釜でも溶けないし、これを素材にするレシピは無いし、本当に使い道がなかったんだ。錬金術師ギルドはこのビー玉を狩人ギルドに二束三文で売ってる」


「狩人ギルドがビー玉を使うの?」


首を傾げて尋ねるマリーにクレムは肯く。


「スリングショットで使うらしい。狩人ギルドの初心者講習で使ったってオレのフレンドが言ってた」


「へえー。狩人ギルドの初心者講習、受けてみたいなあ。スリングショットも使ってみたい」


マリーは未だに種族レベル1ですごく弱い。モンスター討伐も未だに一度もしていない。

借金返済が終わったら、真珠と一緒に狩人ギルドの初心者講習を受けてみよう。


「マリーさん。クレムくん。……真珠くん」


「わんっ」


情報屋はマリーとクレムに呼びかけ、マリーの膝の上で次は自分の名前が呼ばれるとキラキラした目で見つめる真珠の名前を呼んだ。


「『ビー玉』の近くで『ライト』を使うと光るビー玉になるという情報は、秘匿しませんか? 秘密理に実験して検証したいことがあるのです。了承して頂ければマリーさんとクレムくん、真珠くんにも金貨1枚ずつ差し上げます」


「秘密にします!!」


「同意する!!」


「わおんっ!!」


マリーとクレム、真珠はそれぞれに肯く。情報屋はマリーと真珠の分の金貨2枚をマリーに、クレムに金貨1枚を渡した。

マリーとクレムはそれぞれに金貨をアイテムボックスに収納する。


「クレムくん。私にもビー玉を売っていただけますか?」


「あー。今のところマリーに全部押しつけ……じゃなくて売ったビー玉30個しかないんだ。ガラス系アイテムを錬金失敗すると手に入るけど、錬金素材のガラスの欠片が手に入らなくてさ」


「はいっ!! 私、光るビー玉以外の29個は情報屋さんに売ります!!」


マリーは元気よく手をあげて言った。

ビー玉が一つあれば真珠と一緒に遊べる。一つでは『玉落とし』はできないけれど、今はお金を稼ぐ時だ!!


「ビー玉一つ、銀貨1枚でいかがでしょうかっ!?」


「わうわぅわうわっ!!」


「うわあ。ビー玉を30個を銅貨3枚で買ったくせに、ぼったくり……っ」


マリーと真珠の強気すぎる価格設定を聞いて、クレムは引いた。


「転売も立派な商売ですっ」


「わうんっ」


マリーと真珠は胸を張る。借金返済のためにはなりふりかまっていられない!!

情報屋はマリーと真珠に苦笑して、少し考えてから口を開いた。


「ではビー玉一個につき、銀貨1枚を払いましょう」


「ありがとうございますっ」


「わぅわううわううわっ」


ビー玉一個につき銀貨1枚だから、ビー玉29個で銀貨29枚の収入になる!!


マリーはビー玉29個を情報屋に渡し、情報屋はマリーに銀貨29枚を渡した。マリーは銀貨をアイテムボックスにしまい、情報屋はビー玉をテーブルの上に並べる。


「銅貨3枚が銀貨29枚に……。転売ヤー・マリー爆誕だな……」


クレムはマリーの隣で呟いた後、瞬く。


「ってことは、今後、オレが錬金失敗アイテムもといビー玉を作って売っても銀貨1枚になる……?」


「クレムくんからもマリーさんからも、今後はビー玉を一つにつき銀貨1枚で買い取りますよ」


クレムの独り言を聞いていた情報屋が微笑んで言った。


***


マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価 金貨1枚/銀貨29枚


クレム・クレムソンが情報を売って受け取った対価 金貨1枚/銀貨1枚


※ 真珠の分 金貨1枚(合計 金貨1枚/銀貨2枚)



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