第八十九話 5月5日/朝ログイン



藍色の空が青空に変わり、ライトの光がなくても視界が良好になる。

マリーは真珠の協力を得て、ヒール草を43本、マナ草を21本採取した。


「そろそろ戻ろうか。真珠」


「わんっ」


リアル時間は夜だ。夜更かしをしたら、明日に障る。

寝不足で、目の下に隈ができた状態になるのは嫌だ。


「検閲が面倒くさいから、死に戻るね」


「わんっ」


「ついでにライトのレベル上げをしよう」


マリーは手のひらを上に向けて口を開く。


「魔力操作ON。ライトON」


マリーの手のひらの上に小さくて淡い光の玉が出現する。


「もう一個ライトを出そう。魔力操作ON。ライトON」


二つ目の光の玉が出現した。マリーは魔力枯渇になるまでライトを使い続けて死に戻った。


気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。

無事に死に戻れてよかった。


「MPの最大値増やしたいし、ライトのレベル上げもしたいから何回か死に戻りしようかな。真珠、付き合ってくれる?」


「わんっ」


マリーはMP値が30になるまで死に戻り、魔力操作とライトの経験値が少し上がった。


「真珠。死に戻りMP増やす大作戦に付き合ってくれてありがとう」


「わうんっ」


真珠はマリーに尻尾を振った。マリーは真珠の頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめる。


「真珠。家に帰ろうね」


「わんっ」


マリーと真珠は連れ立って教会を出て、家に帰った。


そしてマリーはカウンターにいた祖母に水で濡らした布巾をもらい、真珠と部屋に戻る。

母親は、まだ眠っていた。

マリーは母親を起こさないように採取袋を机の上に置き、身に着けていたバッジを外してアイテムボックスに収納した。

そして真珠をベッドに仰向けにして足を拭き、汚れた布巾を畳んで机の上に置く。

着替えずに寝てしまおう。

マリーは真珠の隣に潜り込み、真珠を撫でた後に目を閉じた。


「ログアウト」


悠里が目を開けると、視界には見慣れた天井が映る。

無事にログアウトできたようだ。

今日はもう、ゲームは終わりにしよう。

悠里は横たわっていたベッドから起き上がり、ヘッドギアを外した。

ヘッドギアの電源とゲーム機の電源を切る。

そしてゲームが入っていた段ボール箱にしまった。


「まだ寝るのは少し早いかな」


悠里は気が向いたので、中間テストの勉強をすることにした。

自分がやろうと思って勉強するのは楽しい。

30分ほど勉強した後、眠くなって来たので、トイレに行ってベッドに入る。


「そうだ。アラーム設定しておこう……っ」


要との約束は10時になので万が一にも寝坊することはないと思うけれど、念には念を入れたい。

悠里は机の上に置いたスマホのアラームを朝の7時に設定してベッドの枕元に置く。


「おやすみなさい」


呟いて悠里はベッドに潜り込み、目を閉じた。


……耳元でアラームが鳴っている。うるさい。


「ううん……」


悠里は音から逃げるように寝返りをうった。アラームは鳴り続けている。


「うるさい……っ」


アラームを設定したのは自分なのに、理不尽な怒りを抱きながら悠里はスマホのアラームを解除した。

起きよう。アラームを解除して二度寝したら、朝ご飯の時間まで寝てしまうかもしれない。

悠里は気合を入れて起き上がった。

そしてベッドを下りてパジャマを脱ぎすて、部屋着に着替える。

よれよれの服はたくさんあるので、よりどりみどりだ。

……お出かけできるちゃんとした可愛い服を買わないといけない。

悠里は脱いだパジャマを持って一階へと向かった。


朝食を食べて自分の分の食器を洗って、洗面所で顔を洗い、歯を磨き終えた悠里は、トイレを済ませて自室に戻る。


「よしっ。ゲームしよう」


段ボール箱からゲーム機器とコード、ベッドギアを取り出す。


「充電してないけど大丈夫だよね。ゲーム終わったら充電しよう」


ゲームの途中で充電が切れても、強制ログアウトになるだけのはずだ。たぶん。

悠里はゲーム機とヘッドギアをコードで繋いで、ゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつける。

そしてベッドに横になり、目を閉じた。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。


***


マリー・エドワーズの現在のMP 30/30


ライト レベル1(60/100)


魔力操作 レベル2(85/200)



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