第八十七話 マリー・エドワーズは『ライト』を習得して西の森に向かう
マリーはカウンターの椅子に座り、祖母に作ってもらった薄い塩味のスープと硬い肉を挟んだ黒パンを頑張って口に詰め込み、木のコップに入った水で流し込む。
真珠はマリーが座っている椅子の近くで、ぬるいミルクが入った平皿に顔を寄せておとなしくミルクを飲んでいる。
マリーと真珠は、ほぼ同時に食べ終わった。食事を終えたマリーは椅子から飛び下りる。
「お祖母ちゃん。ごちそうさまでした」
「わうわうわぅわうわ」
マリーは真珠のミルクを入れていた平皿をカウンターに乗せた。
「マリーもシンジュも、もう食べ終えたの?」
カウンター奥から姿を現した祖母は空になった食器を見て言った。
「うん。私と真珠は着替えて準備をしてから西の森に行ってくるね。ヒール草を採取したいの」
「マリーとシンジュだけで行くの? 大丈夫?」
「大丈夫だよ。西の森には今、魔物が出ないんだって」
「わんっ」
西の森は5月4日の23:59まで、モンスターが出ないセーフティーゾーンになっている。
今はまだ5月4日の夜で、真夜中を過ぎていないから安全だ。
情報屋たちと西の森に行った時には、入り口の薬草は採取され尽くしてしまっていたけれどあれから時間が経ったからリポップしているかもしれない。
「真珠。部屋に戻って出かける準備をしてくるね。ちょっと待ってて」
「わんっ」
マリーは段差の大きい階段を上り、部屋に入る。
母親を起こさないように気をつけながら着替えを終え、採取袋等を身につけた。
そして忍び足で部屋を出て、一階に向かう。
マリーは階段を下り、階段の下でおすわりをして待っていた真珠と合流した。
「真珠。お待たせっ」
「わうー。わおんっ」
マリーと真珠は祖母に見送られ、連れ立って外に出た。
藍色の空は少しずつ明るさを増している。
これなら、明かりがなくても門番に止められることはないだろう。
そう思ったけれど、マリーは少し不安になる。
「一応、明かりのスキルを取っておこうかな。ステータス」
マリーは西門を目指して中央通りを歩きながら、ステータス画面を表示させた。
左手の中指に『聖人の証』が付与されたので、人目を気にせずにステータス画面を見られる。
マリーは『スキル習得』をタップして『明かり』で検索をする。
「二つ出た。どっちにしようかなあ」
検索結果に表示されたのは『ファイア』と『ライト』だ。
マリーは少し迷って『ライト』の説明を表示させた。
♦
ライト【習得要SP5/未習得】
コモンスキル/魔法スキル。
光の玉を出現させる。レベルを上げるとMPの消費量が増え、光の玉の出現時間が長くなる。
レベル1の時、光の玉出現時にMPを5消費/5分継続する。
レベルが1上がるたびにMP消費が5ずつ増え、出現時間は5分ずつ長くなる。
使用する時には手のひらを上に向けて「魔力操作ON」「ライトON」と言う。終了する時には「ライトOFF」か「魔力操作OFF」と言う。
「ライトOFF」の場合は魔力操作は継続となる。
MPが0になると自動的に解除される。
【習得する/習得しない】
♦
「森で使うなら、光の魔法の方が安全だよね。『ライト』を取ろう」
マリーは『習得する』をタップした。ステータス画面に『ライト』が追加されたことを確認してマリーは画面を消した。
『ライト』を使ってみたい気がしたけれど、MPを使うのはもったいない。
「真珠。私、光の魔法を取ったよ。今度、真珠にも見せるね」
「わんっ」
真珠はマリーに尻尾を振って吠えた。
***
マリー・エドワーズの追加スキル
コモンスキル『ライト』レベル1
現在のマリー・エドワーズのスキルポイントは130→125
若葉月7日 早朝(1時47分)=5月4日 20:47
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