第五十二話 高橋悠里はフレンドにメッセージを送る
朝ご飯を食べ終えて自分の分の食器を洗い、歯磨きとトイレを済ませた悠里は自室に向かう。
部屋に戻ったら、まずはスマホのメッセージを確認しよう。
圭から情報屋のことでメッセージが来ているかもしれないし、要もあとでメッセージを送ると言ってくれた。
自室に戻り、スマホを手に取った悠里は緊張しながらメッセージを確認した。
「藤ヶ谷先輩と圭くんからメッセージが来てる」
要が朝の約束を守ってくれたことが嬉しくて、午後からのお出かけが現実のものだと改めて感じて、悠里の心は浮き立つ。
まずは要からのメッセージを読むことにした。
メッセージ内容は、今日の待ち合わせの時間と場所、それから『楽しみにしてる』という言葉。
「先輩が『楽しみにしてる』って。社交辞令でも嬉しい……」
悠里は要からのメッセージを三回読み直してにやけた後に、首を横に振った。
「ダメだ。このままだと先輩のメッセージ読んでるだけで嬉しくて午前中が終わっちゃう。先輩にメッセージ返して圭くんからのメッセージ読まなくちゃ」
悠里は要に返信をして、圭からのメッセージを確認した。
♦
情報屋のフレンドと連絡取れた。今日の9:00までにログインして広場で待ち合わせすることになった。
フレンド機能のメッセージがなくてウェインが『銀のうさぎ亭』に迎えに行った時にマリーと会えなかったら、情報屋と会うのキャンセルってことにしておくから。
♦
圭からのメッセージを読み終えた悠里は時間を確認した。
「今は8:00か。ゲーム内では何時なんだろう?」
悠里はスマホを机の上に置いて呟く。疑問に思ったが、考えるのをやめた。ゲームにログインすれば少なくとも、暗いか明るいかという程度のことはきっとわかる。
「ゲームやろう」
ヘッドギアとゲーム機は早朝に『アルカディアオンライン』をプレイした時のまま、出しっぱなしにしている。
悠里はゲーム機とヘッドギアの電源を入れ、ヘッドギアをつけた。
ベッドに横になり、目を閉じる。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
気がつくと悠里は転送の間に立っていた。
「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様」
いつものようにサポートAIが悠里を迎えてくれた。
「おはようございます。サポートAIさん」
「おはようございます。高橋悠里様」
「サポートAIさんはゲーム内時間が何時とかってわかる?」
「確認します。確認中……。確認終了。只今のゲーム内日時は『若葉月4日 真夜中(6時05分)』です」
「ありがとう。まだゲーム内は真夜中なんだね」
「左様です」
ウェインがマリーを迎えに来てくれるのはたぶん、空が明るくなってからだろう。
「そういえば『アルカディアオンライン』って雨とか降るの?」
悠里はリアル時間で二日しかゲームをプレイしていないがゲーム内ではいつも晴れていたと思う。
「雨季には雨が降る設定となっています」
「うき?」
「雨が降る季節が存在します」
「そうなんだ」
「詳細はゲーム内でカレンダー等をご確認ください」
『銀のうさぎ亭』にカレンダーはあるだろうか。
「ゲームにログインしたって圭くんにメッセージを送ろう」
悠里はステータス画面を呼び出して『フレンド機能』をタップした。新たな画面が現れる。
♦
メッセージ受信箱/メッセージ送信箱/フレンドリスト【NEW】
♦
悠里は【NEW】がついている『フレンドリスト』をタップした。
新たな画面が現れる。
♦
フレンドリスト(1名)
プレイヤーNO59721ウェイン
♦
「ウェイン一人しかフレンドがいないのってちょっと寂しい。でも、全然知らない人をフレンド登録したくないから仕方無いよね」
悠里はそう呟いて『プレイヤーNO59721ウェイン』をタップした。
新たな画面が現れる。
♦
メッセージを受信/メッセージを送信/フレンド設定
♦
「『フレンド設定』ってなんだろう? ……今はいっか」
悠里は『メッセージを送信』をタップしてウェインに『今、転送の間。ログインするね』というメッセージを送信した。
「じゃあ、そろそろログインしますね」
「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」
サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。
***
若葉月4日 真夜中(6時07分)=5月4日 8:07
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