第二十六話 マリー・エドワーズは祖母と出かける

部屋に戻ったマリーはお出かけ用のワンピースを着て、再び階下に戻る。

カウンターに座り、祖母が出してくれたスープと黒パンを食べた。

スープは素朴な塩味で、黒パンは少し硬くてパサついている。

食べられないことはないけれど、現代日本の美食に慣れた舌では『美味しい』とは思えない。


「お祖母ちゃんは、もうお昼ごはん食べたの?」


「味見しながら食べ終えたわよ」


祖母はそう言いながら、マリーのために木のコップに水を注いでくれた。

マリーは水を飲みながら、なんとかスープを飲み終え、パンを食べ終えた。

たとえ口に合わなくても、祖母が作ってくれたご飯を残すわけにはいかない。


「ごちそうさまでした」


マリーは手を合わせて、言った。

日本でリリースされているゲームだからなのか、マリーの記憶にも『いただきます』と『ごちそうさま』の挨拶があった。

文化も日本式、NPCが喋る言葉も日本語だから、日本人プレイヤーの悠里としては、安心してゲームで遊べる。


「お粗末さまでした」


祖母はマリーが食べ終えた食器を下げ、戻って来た。

手提げかばんを腕に下げ、マリーに微笑む。


「私とマリーが出かけることは、皆に言ってあるから。さあ。行きましょう」


「うん!!」


マリーは差し出された祖母の手を握り、意気揚々と宿屋を出た。


***


若葉月1日 昼(3時20分)=5月3日 10:20

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