第二十五話 マリー・エドワーズはMP回復の手段が欲しい



マリーはベッドの上で目覚めた。

部屋にはマリーの他には誰もいない。

マリーは身体を起こして、自分のステータス画面を確認する。


「何度見てもレベル1だし、何度見ても貧弱ステータス……。クローズ」


だが、マリーはそれでもモンスターと戦ってお金を稼がなければいけない。


「とりあえず、MPの最大値を増やしたいな。魔法を使えるようになればモンスターと戦えるようになるかもしれない」


5歳の幼女が貧弱ステータスで武器を振り回すより、魔法で遠距離攻撃を狙った方が勝率が上がる気がする。

魔法で戦うのなら、武器を用意しなくてもいいかもしれないし。

借金を背負っている今、節約することは大事だ。


「でも、今、この状態でMPの最大値を増やすと魔力枯渇状態になって教会に死に戻りしちゃうんだよね……。それはダメ。教会がどこにあるのかもわからないし」


教会で復活しても、家に帰れなければ迷子状態になる。


「うちの家族で魔法を使えるのはお祖母ちゃんだけだからとりあえずお祖母ちゃんに魔力回復の方法を聞いてみよう」


マリーは祖母を探すため、部屋を出た。

二階には人の気配が無く、一階からは賑わう声が聞こえる。

マリーは段差の大きい階段を慎重に下り、一階に到着した。

階段のすぐ側には宿屋の受付カウンターがある。


「マリー。目が覚めたの?」


カウンターには、探していた祖母がいた。


「お祖母ちゃん」


マリーはカウンターに駆け寄り、祖母を見上げる。


「あのね。魔力を回復するのって、どうしたらいいの?」


「急にどうしたの?」


「私もお祖母ちゃんみたいに魔法を使いたいの。でも、魔力枯渇っていうのになるのは怖いことなんでしょ?」


「そんなこと、誰から聞いたの? お客さん?」


「ううん。……神様」


マリーは少し考えて、そう言った。

『離魂病』を克服したのは神の恩寵だとぼったくり聖職者は言っていた。

これはゲームなんだから、神も存在しているのかもしれない。

もしくは、神というのはサポートAIかゲーム制作スタッフ、ゲームの運営をさすのかもしれないが。

マリーの言葉を聞いた祖母は、カウンターから出てマリーの前にしゃがみ込み、目線を合わせて口を開いた。


「そうね。魔力枯渇は怖いことだわ。私に魔法を教えてくれた魔術師もそう言っていた」


「あのね。魔力を回復するものを持っておきなさいって。でも、それが何かは教えてもらえなかったの。だから、お祖母ちゃんに聞こうと思って……」


「魔力を回復するには、魔力回復薬という薬が必要なの。今、私の手元には一本しか薬が無いから、マリーに分けてあげられない」


「そうなんだ……」


マリーはがっかりして、俯いた。


「そろそろ、初級魔力回復薬を作ろうと思っていたの。マリーがお手伝いしてくれたら、お礼に一本あげる」


「本当?」


「ええ。今日は宿屋のお客さんが少ないから、私が出かけても問題ないわ。さあ。部屋で着替えてきてちょうだい。寝巻のままでは駄目よ。お昼ごはんを食べてから出かけましょう」


祖母はそう言って、マリーに微笑んだ。


***


若葉月1日 昼(3時)=5月3日 10:00

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