【ゲーム内における食事の扱い】第十九話 マリー・エドワーズはステータス画面を確認したい



「マリー。ずっと眠っていたから、喉が渇いたでしょう? お水を飲んで」


「そうだぞ。司教様は飲まず食わずでも平気だと言っていたが、そんなことあるわけがない」


マリーは父親に身体を起こしてもらい、母親に水差しで水を飲ませてもらう。

水はぬるかった。

喉を湿らせた後、マリーは口を開く。


「私、疲れたから寝たい」


「そうね。ゆっくり休んだ方がいいわね」


「じいさんとばあさんも、マリーに会いたいだろう。寝るのは会ってからでもいいんじゃないか? じいさんとばあさんもすごく心配していたんだ」


「後にしてもらいましょう。まずは、マリーの身体を休めないと……」


マリーは心の中で母親を応援した。

一人になって、ステータス画面を確認したい。


「お父さんは、お祖父さんとお祖母さんにマリーが無事に目覚めたと伝えて来て。マリーには私が付き添っているから」


「わかった」


父親は部屋を出て行った。

母親はマリーのベッド脇に腰掛け、優しく微笑む。


「マリー。眠るまでお母さんが一緒にいるから、安心して休んで」


お母さんがいるとステータス画面を確認できない……!!

マリーは母親に不審者扱いされ、母親の友好度を下げたくなかった。

どうしたら、一人にしてもらえるだろう。

部屋にはマリーのベッドだけでなく、両親が使っていると思われる大きなベッドが置いてある。

夜に、マリーが一人になることはできないだろう。

今は、窓の外は明るい。

カーテンの隙間からこぼれる光を見ながら、マリーはステータス画面の確認は明るいうちにしかできないと思い、一人になる言いわけを必死で考えた。

そして、悠里が幼稚園生の頃に言った言葉を思い出す。

幼稚園生の悠里の言葉を真似よう。

マリーは口を開いた。


「お母さん。私、もう5歳なのよ。お姉さんなの。一人で寝られるわ」


「でも……」


「大丈夫だから、お母さんも宿屋と食堂のお仕事に行って」


マリーの記憶では、両親や祖父母はいつも忙しく働いていた。

明るいうちにのんびりしていたことなど、一度も無い気がする。

家族経営で終日営業、休日は無い。

ゲームだからこそ許される、ブラック経営だ。


「わかった。お母さん、仕事に行くわね」


母親は微笑んでマリーの髪を優しく撫で、立ち上がる。


「行ってらっしゃい。お仕事がんばってね」


マリーの言葉に母親は肯き、部屋を出て行った。

やっと、一人になれた。

マリーはベッドから身体を起こし、ベッドの背もたれにもたれて口を開いた。


「ステータス」


マリーの目の前にステータス画面が現れた。


***


『アルカディアオンライン』には満腹度はなく、ゲーム内で食事を取らずにゲームをプレイすることも、好きなだけ食べ続けることもできる。


モンスターの攻撃により、状態異常『満腹』になる場合がある。

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