第八話 高橋悠里は『二種類の善行値』について聞く

「『アルカディアオンライン』には『二種類の善行値』が存在します。

『プレイヤーに対する善行値』と『NPCに対する善行値』です。

ステータス画面には『善行値』(P)/『善行値』(N)と表示されます」


「どうしてプレイヤーとNPCへの善行値を分けたんですか?」


「『悪役ロール』を成立させるためです」


「あくやくろーる」


「『悪いこと、犯罪行為を楽しみ、悪役を演じる』というプレイスタイルのことです。プレイヤーを殺す行為、プレイヤーキル(PK)も悪役ロールの一種とされています」


「私、ゲームの中だとしても、殺されるのは嫌です……」


「お察しします。高橋悠里様のような考えのプレイヤーを保護しながら『悪役ロール』をしたいプレイヤーの望みを叶えるためにはどうしたら良いと思いますか?」


「えっと……悪いことをしたい人同士で、悪いことをしてもらう……?」


「おおよそ正解です。プレイヤーキルを非推奨、NPCのキルは推奨ということです。NPCに対して悪役ロールを行っても『善行値』(P)に影響はなく、プレイヤーレベルにも影響しません」


「プレイヤーレベルを上げると、何か良いことがあるんですか?」


「あります。ゲーム開始時のプレイヤーのレベルはプレイヤーレベル0なのですが、この状態ではゲーム内通貨をリアルマネーに変換することができません」


「プレイヤーレベルを上げれば、登録した口座にお金を振り込んでもらえるの?」


「はい。そうです。ゲーム内通貨のリアルマネーへの変換は『転送の間』でワタシに指示していただければ完了します」


「でも、私がレベル0だとお願いしても変換してもらえないということ……?」


「その通りです。プレイヤーレベルに応じて、一日に変換できる金額が増えていきます。『アルカディアオンライン』はゲームを楽しみながら一攫千金を狙うプレイヤーを応援します」


「一攫千金……。そんなことして大丈夫なの? ゲーム会社さん、お金なくなっちゃうんじゃないの……?」


「今のところ、それなりに収益を上げているようです。お気遣いなく」


「それならいいけど……」


「プレイヤーレベルを上げるには『善行値』(P)を上げる必要があります。この制度が有効に働き、本日までのプレイヤーキルの件数は7件にとどまっています」


「それでもPKをするプレイヤーがいるんだね……」


「7件のうち、4件は知り合い同士の私闘の結果、プレイヤーキルをすることになったようです」


「私と全然関係ないプレイヤーから狙われて殺される危険はすごく少ない?」


「左様です」


「そうなんだ。よかった……」


悠里は安堵した。


「長い説明にお付き合いいただき、ありがとうございました。次は主人公の選択をして頂きます」


主人公の選択!!

いよいよゲームが始められる……!!

悠里は期待に胸を躍らせた。



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