第四話 高橋悠里はサポートスタッフと通話する



『アルカディアオンライン』の会員登録を終えた悠里は疲れ果て、ベッドに倒れ込んだ。

ちらりと時計を見ると、6時近くになっている。

もうすぐ晩ご飯の時間だから、一階のダイニングに行かないと……と思いながら、動けずにいたその時、スマホが鳴った。


「はい」


悠里は相手の名前を確認せず、反射的に電話に出る。


「わたくしは『アルカディアオンライン』サポートスタッフの筒井と申します。先ほど、入会の申し込みをされた高橋悠里様でいらっしゃいますか?」


「え? あ、えっと、はい。そうです。高橋悠里です。本人です」


「今、お時間は宜しいですか?」


「はい。大丈夫です」


「この通話の内容を録音させていただきます。トラブル防止のためにご了承ください」


「わかりました」


「では、登録内容を確認させていただきます。お手数ですがご協力ください」


「わかりました」


悠里は言われるままに、相手の言葉に耳を傾け、自分が登録した内容に間違いが無いと答えた。


「それでは最後に、高橋悠里様の声紋を登録させていただいても宜しいですか?」


「え? えっと、ダメって言ったらどうなりますか?」


自分の声を登録する、というのはなんとなく怖い。


「大変申し訳ないのですが、手続きが未完ということになり『アルカディアオンライン』をご利用いただけなくなります」


悠里は少し迷ってから、声紋登録を了承すると決めた。

圭くんも登録したのだろうから、きっと大丈夫。


「ご了承ありがとうございます。……高橋悠里様の声紋の登録が終了しました。

近日中にゲーム機器を送付させていただきます。

このたびは『アルカディアオンライン』の会員登録をしていただきありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


悠里は相手にお礼を言って、通話を終了した。


「すごい。さっき登録申請して、すぐに電話が来た。だったら、明日とかにゲーム機器が送られてくるかも……!!」


……悠里の期待に反して、ゲーム機器が到着するのは言葉通り『近日中』の5月3日のことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る