第一章 可憐な森の聖女様

01

 4月中旬学校が始まってみんなが慣れてきた頃。 


 俺は今日、『久しぶりに』1人で帰っていた…。と、言いたい所だが、そもそも俺に一緒に帰るような友達はいない。正確にはいないことも無いのだが、唯一の親友は今、愛しの彼女とデート中である。

 奴らは学校でも有名なバカップルで、隙あらば人目を憚らずイチャついている。…うん、ムカつく!

 と言うわけで、今の俺は絶賛暇を持て余し中である。


 「そういえば、今日はあいつ珍しく学校に来てなかったな。」と、勝手に1人でぼやいてみる。

 なぜなら、あいつが来なかったせいで俺が1人で花の世話をしなければならなかったからだ。ちなみに、俺が言う「あいつ」とは、うちの学校で1番の美少女、「森の聖女」の異名を持つ新城凛華あらきりんかのことである。そして、その新城と俺は同じマンションに住んでいる。

 だからと言って何かあるわけでも無いのだが…。


結局、『まあいいか』と思考を放棄した俺は、コンビニに寄って夕食を買って帰ることにした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 家に帰り着いた。

 俺はとりあえず風呂に入って飯を食べて、いつでも寝られる準備を整えてから、いつも通りアニメを見ようとしていた。

その前にと、Twitterでアニメの情報を見ようとしてLINEに通知が来ていることに気がついた。

 (誰だろう?)と思い見てみると、件の話に出てきた森の聖女からだった。しかも、その内容が驚きで、大した関わりのない俺に向けて「助けて」との事だった。

 「どうしたのか」と聞いてみるも10分経っても既読がつかないので彼女の部屋に行くことにした。


ドンドンドンドン!


「大丈夫か!」


ドンドンドンドン‼︎


「出ない…か。」


「鍵は…開いてる⁉︎」


少し嫌な予感がしていたが、何もなかった時は謝ろうと思い、警戒しながら中に入った。


「新城!大丈夫か?」


 通路を進むと机の前で新城が倒れているのを見つけたが、様子をみてみるとと熱があるようだった。とりあえず、有事ではなさそうだったので一安心だな。

 しかし、熱があることに変わりは無く、このまま床に寝ていてもあれなのでやむなく彼女をベットに運ぶことにした。



 ここで一つ問題がある。みんなは覚えているだろうか。俺は友人すらろくにおらず、女子とはほとんど話したことすらないのだ。そんな俺がどうやって彼女を運べば良いのだろうか。

 思いつく方法は3つある。もちろん、アニメの知識だ。

 1、横抱き。所謂、お姫様抱っこと呼ばれるものだ。

 2、赤ちゃん抱っこ

 3、おんぶ

 正直、どれを選んでも社会的に死亡する気がするが、結局選んだのは1番だった。理由は簡単。1番楽に運べそうだったからだ。


…うん、ぜんっぜん楽じゃなかった。女子は羽のように軽いと言うがありゃ嘘だ。もう腕が死にそう。

こうして、なんとか彼女をベットに運んだ後、家からヒエピタとレトルトのお粥を買ってきて、いつ目を覚ましてもいいように準備を整えた。

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