第7話 ボク⑦

 2日目に泊まった宿を朝早く出発し、その日のお昼頃には王都に到着した。

 8メートルくらいもある高い城壁の門をくぐり、すぐ右に折れて暫く進むとその施設はあった。

 執事によれば、今くぐってきた城壁は最近できたもので、中はまだ建物がまばらであまり賑わっていないように見えるけれど、もう1枚城壁を越えると、とても賑わった王都の中心部に出るらしい。


 到着後、驚くほどテキパキと荷下ろしをしてくれたお供の執事と一緒に、入所の手続きを済ませ、これから3ヶ月間住むことになる部屋に、これも驚くほど手早くこの執事は荷物を運び入れて整理してくれた。


「それでは坊ちゃん、お名残惜しゅうございますが、私どもはこれにて領都に帰還致します。3ヶ月間と短いですが、寂しくなったら、このわたくしめを思い出して耐えて下さいね」


「うん、ありがとう。寂しくなったら伯父さんたちの笑顔を思い出して頑張るよ」


 執事は露骨に残念そうな顔をしてから、深々とお辞儀をして去っていった。



 インターナートはボクが初めて触れるものに溢れていた。


 まずは共同生活。今年10歳になった男子6名、女子4名が、男子は3名ずつ2部屋、女子は1部屋の合計3部屋に分かれて寝起きをともにするのだ。朝は身支度をして集合する時刻が決まっており、誰かが寝坊して集合に間に合わないと、同部屋の全員が怒られてしまう。夜も就寝時刻が決まってはいるのだが、大騒ぎしないか立て続けに朝の集合に間に合わないようなことでもない限りは就寝時刻に起きていても怒られない。


 朝の集合後は、そのまま皆で厩舎に移動して騎乗用の馬の世話をする。飼葉桶に飼葉を入れ、厩番が馬房から馬を移動させたら、今度は古くなった寝床の藁と馬糞を掃き出し、集めて捨てに行くという重労働が待っている。馬糞はこの後、畑や花壇の土を作ることに使われるそうで、施設内で一時的に集めた後、更に別の場所に運んでいるんだとか。ただ捨てるだけだと思っているものでも、別の使い道があるものなんだな。


 その作業が終わると、やっと朝食が待っている。

 育ち盛りな貴族の子供向けに、腕の良いシェフを雇っているとのことで、朝昼夕の食事の時間が楽しみだ。

 ただ、この食事の楽しみも12歳からはなくなってしまい、集まった子供たちが交代で料理を作ることになる。

 ボクにはそれが何の役に立つのか分からないけど、きっと大事なことなんだろう。


 朝食の後はお昼まで教室で、歴史、算数、語学、一般教養などの座学の授業、昼食後は教官に連れられて皆で往復2時間ほどの、長い長いお散歩をする。

 お散歩の後はまた厩舎に移動し、飼葉桶に飼葉を補充、補充の後は夕食まで自由時間、夕食の後は就寝時刻までまた自由時間。これが10歳時の毎日のカリキュラムになっていた。

 自由時間であっても外出は出来ないが、施設内の図書室、トランプやチェスがある遊戯室、訓練場を利用出来るため特に退屈することはないだろう。

 もっとも、子供の3分の1くらいは夕食後、入浴してすぐに、そのまま死んだように眠ってしまうのだけど。

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