夜襲と裏切り、そして崩壊―クリバヤシの最後の戦い

王と幕僚の前で、ダニエル陣営の様子を聞かれたネルソンは淀みなく答える。


「ダニエルは予想外の大軍の襲来に驚愕し、夜も寝られないほど憔悴しています。

もはや望みは自分と家臣の生命と居場所のみ。

なんとか王陛下の慈悲に縋り、和議をまとめたいと願っています」


それを聞き、予想通りと王と周りは笑いながら頷く。


「しかし、同時に自暴自棄の恐れもあります。

ダニエルは家族や家臣の安寧を得られないのであれば、すべてを擲って王や貴族を一人でも多くを道連れにする覚悟も決めております。


その為、これまで蓄積した富も吐き出し、民も動員して戦闘の準備を進めております。

ムーン城の戦訓からアースの城壁は強化され、その破壊には多大な労力を要するでしょう。


そして王都への自爆的な破壊行為も考えられております。

ダニエルと狂信的な部下が死を覚悟し、夜陰に紛れて王都に特攻してきたら防ぐのは容易ではありますまい。


その時は王都や王宮を燃やし尽くし、このエーリス国を道連れにしてやると公言しております」


このネルソンの言葉は衝撃的であった。

ダニエルの配下は歴戦の猛者が揃い、死ぬ気になればどこまでやるかわからない。

ネルソンは薄笑いを浮かべ、彼の言葉に驚く王達の顔を見つめている。


「奴の考えそうなことだ。

万一に備えて王都には、ダニエル討伐に失敗した罰を兼ねてクスノキとキタバタケを置いてきている。奴らに守らせれば良い。


しかし、奴に暴れられれば損害も大きいだろうし、和議をまとめるのが国のためである。


我らの目に見える勝利の証には叛乱者の首が必要。


他の条件は落とし所が見えてきているが、クリバヤシの首を差し出して貰わねば和議は結べんぞ」


プレザンスの言葉にネルソンは答える。


「何、ダニエルの承諾を得ようとするから難しくなる。

直接にクリバヤシに頼めば良い。


お前の首一つで城兵もダニエルも助かるといえば喜んで首を差し出すだろうよ」


ネルソンの言葉に王は頷く。


「なるほど、清廉な武人と聞くのでそれで収まるやもしれん。


こちらはそれで勝ったことを天下に示せ、ダニエルは最後まで部下を守ろうとしたと言え、クリバヤシは自己を犠牲に兵と主家を守ったと名誉を得られる。

三方得し、丸く収まることとなる。


死を納得させる為のクリバヤシへの使者はどうする?

この役目は重いぞ」


王の言葉にネルソンが手を挙げる。


「その役目、私が参りましょう。

まだ寝返って王陛下の傘下に入ったとは知らぬはず。

ダニエルの為だと私から説けば彼も異を唱えますまい」


「なるほど。

ネルソン、これに成功すれば約束と別に恩賞を出そう。

うまく頼むぞ」


ネルソンはダニエルからの使者を装い、そのままムーン城に夜間入り込む。

翌日夜に出てきたネルソンは直ちに王と幕僚の場に連れて行かれる。


「首尾は如何だったか?」


「クリバヤシは自らの首一つでダニエル様や同僚が助かるのであればお安い御用と快諾しました。

クリバヤシには名誉ある、華々しい死を与えてやらねばなりません。


あとは、彼の死を生かしていかに和議に持っていくかですが、クリバヤシを犠牲にすることを拒むダニエルを説得するため、まずクリバヤシに敵味方の見守る中で盛大に死んでもらい、その死を既定のものとしてダニエルとの和議をまとめましょう。


そうすればダニエルにもクリバヤシの死を無駄にするなという殺し文句を使えます」


ネルソンの言葉に王は納得する。

「ではクリバヤシとの手筈を頼むぞ」


ネルソンが引き下がったあと、幕僚が意見を述べる。


「あのネルソンという男、切れ者ですな。

しかし、ネルソンの考えではクリバヤシが死んだあとに和議を結ぶとのこと。

そこにもう一工夫して付け入る隙が有りませんか」


プレザンスの言葉に将軍ナワが乗る。


「さすがは宰相殿。

目のつけどころが良いですな。


私も考えていました。


クリバヤシが死んだ後、その死に驚いて出てくるダニエルを討ち取ってしまえば和議など必要ありません。

そのまま残兵を掃討し、ダニエルの領土を併合すればいいのではないてしょうか」


ナワやユウキは援軍で来たものの、ムーン城を無理攻めして大損害を受け、苛立つ王の親征を招くというざまであり、このままでは恩賞どころか処罰すらあり得ることに怯えていた。


王の直卒部隊に入れられた畿内の諸侯・領主に至っては、ここで戦が終われば包囲のみで戦闘すらしておらず、完全な無駄足であり、無論恩賞などあるはずもない。


ナワの発言は、勝利も見えてきて武功が欲しい武官や従軍させられた諸侯達たちの賛同を得る。


プレザンスは思わぬ展開に戸惑いを隠せない。

文官達はここで和議を結べば、武功のない武官達への恩賞もなくて済み、軍の動員を整え、和議交渉を纏めた自分たちの功績のみがクローズアップされると踏んでいた。


プレザンスもせいぜい和議をもう一押し有利に持っていくことを考えたのみ。

ところがそれが発端となって武官の大騒ぎが始まってしまった。


(失敗続きのお前達がうまくダニエルを討ち取れるのか?

失敗したらもう交渉の余地はない。

あとは騙されたと復讐に燃えるダニエル軍との泥沼の戦だぞ)


文官はそう思うが、恩賞の機会に目が血走る武官にそう言えばすぐに剣を抜くだろう。


「内々とは言え、王陛下が約束したことを翻すのは汚名を着せられるぞ」


「なーに、あのネルソンという裏切り者が勝手に約束したこととして奴を切り捨てればよいだけのこと。

あんな外国人で返り忠の男など使い捨てがいいところだろう」


文官の反論は将軍ユウキに一言で切って捨てられる。


「ニッタ、お前はどう思う?」

沈黙を続けるニッタに王が尋ねる。


「ダニエルは隙をつかせるような甘い男ではなく、約束を重んじる男。

戦をするなら戦を、和議なら和議とはっきり決めて、着実にそれを実行すべきと愚考いたします」


ニッタの言葉は功を焦る武官からは嘲笑される。

「それは自分がいいようにやられたからだろう。

誰しも自分と思うべきではないわ」


「ダニエルを恐れすぎだ。

幸運の女神は前髪しかないという。

機を逃さないことも重要だ」


その一方で文官からは賛同を得た。

迷う王に対して、後ろから「少しよろしいでしょうか」と意見を申し述べる男がいる。


「ドーヨか、どうした」


ドーヨ・ササキは寝返り組にも関わらず、巧みな話術と要領の良さで王に取り入り、そのお気に入りとなっている。


「どちらの意見もご尤もです。

しかし和か戦か今決める必要はありません。


その時まで準備を整えながら、ダニエルや城の様子を見て十分な勝算があれば武力を使い、固い守りであれば和議を結べば良いこと。


そして、仮に武力を使う可能性があれば、今こそ兵を休ませるときですぞ。

大規模な戦闘はなくとも、長期の城の包囲攻撃やダニエル軍の夜襲への対応で疲労が溜まっております。


和議も見え、敵軍も気が緩んでおりましょう。

この機に兵に休息を与え、この後のダニエル戦に備えるべきです」


理路整然と説くドーヨの言葉に皆頷く。


「よし、ドーヨの言葉を採用する。

皆、和戦双方に備えを怠るな。

先を見て兵には適宜休養を与えよ」


王はそう決断する。


さて、王の決定に釈然としないまま陣に引き上げるニッタは、途中小用を催し、木陰に赴く。

用を足した後、ふと見ると、薄暗いところで話し合う二人の男に気がつく。


(あれはドーヨとネルソン。

奴ら、顔見知りだったのか)


怪しい男達の話を窺うべく、近寄ろうとするニッタに気づいたか、彼らは別れる。


僅かにニッタに聞こえた言葉は「万事手筈の通りに。全ては我らの掌にある」ということであった。


軍議の話が広まったのか、翌日から目に見えて兵の緊張感が無くなっていく。


下士官が注意しても、「どうせもう戦は終わりだろう。だったらゆっくりさせろ」と反抗し、昼間から酒を飲み、博打をしている始末だ。


その一方で、武官と文官、また従軍している諸侯を問わず、密談がどこでも行われている。

この和議とも戦争ともつかない時期に己の利益を求めてどう立ち回るべきかを探っているのだ。


そんな中でドーヨはとりわけ目立つ動きをしていた。

畿内の諸侯の間を飛び回り、何やら話し合いを繰り返している。


そしてネルソンは何度もムーン城に赴き、クリバヤシとの詰めを行っているようだ。


ニッタは彼らの動きが気になるが、自軍の引き締めだけでも手一杯であり、せいぜい同盟関係にあるプレザンスに注意喚起するくらいしかできなかった。


「ニッタ殿は心配症だな。


ネルソンの報告ではムーン城の降伏はまもなくだ。

彼らの抗戦能力も尽きつつあり、クリバヤシは兵の助命と帰国と引替に自刃を認めた。


ダニエル軍との和議も、ダニエル本人は認めないが、側近のヒデヨシという男と繋ぎを取り、クリバヤシ自刃後に領土の大幅削減で手を打つ手筈が整った。


武官や諸侯は恩賞欲しさで戦を望んでいるのだろうが、そんな余裕はない。


今後はともかく、今回はこれで手仕舞いすることで、陛下にも納得してもらった。

ニッタ殿には敵よりも味方の暴発をよく見ていてくれ。

そちらの方が心配よ」


笑い飛ばされたニッタが夜間に弟相手に酒を飲んでいると、突如として大きな物音がする。


当初は酒に酔った兵士の喧嘩かと放置していたが、その音はますます大きくなる。


「何事だ!」

天幕を出るニッタのもとに近習が走り寄る。


「ダニエル軍がアースを打って出て、手近なニワ軍を夜襲。

不意をつかれたニワ軍は戦う術もなく逃げ惑い、こちらに退却してきています。


そしてそれを追撃してダニエル軍がこちらの軍にも迫っています!」


「なんだと!

ナワ達は2万もいたはずだが、抵抗もできなかったのか。

ダニエルを討ち取るために近い場所を寄越せと言いながらその体たらくか。


直ちに兵を叩き起こし、武装させ、陣を構えろ!

敗走兵が来ると陣が崩れる。矢を射かけても構わん。追い払え」


しかしニッタ軍も2万の寄せ集めの大軍であり、夜の短時間に統制ができない。

それでも手勢からでもと必死になって陣を整える中、聞いたことのある大声が夜の闇の中に響き渡る。


「貴様ら、散々に好き放題にしてくれたな。

この代金はお前たちの血と生命で払ってもらうぞ!」


「オカダだ!

ダニエル軍きっての猛将が先鋒でやってきたぞ!」

兵は既に逃げ腰だ。


「兄上、ここは私が支えます。

それよりも後方の王陛下が心配です。


直卒の軍は寄せ集めで指揮を取れそうな者も見当たりません。

兄上が指揮を取り、陛下を安全なところまで退避させる必要があります」


ワキヤがそう言うのを聞き、ニッタも同意した。


(この戦、もう負けだ。

敵兵は恐ろしいほどの勢いだが、こちらの兵はそれに押されっぱなしでまるで戦意がない。


あとは大軍を生かしていかに損害を抑えるか、まずは王と側近には無事に帰っていただかねばならん)


ニッタが兵を連れて王のところに向かっている時、突如として城門が開き、城兵が突撃してきた。


「狙いは王を名乗る簒奪者アーサー・オウガスト。

これまで死んだ同僚の想いを受け継ぎ、我に続け!」


先頭はクリバヤシか。槍を担ぎ、走り出してくる。


後ろからは傷だらけの兵士達が地獄の鬼のような形相で、「勝った!勝った!」と叫びながら続いてきた。


そのさまは地獄の釜の蓋が開き、鬼たちが打って出たかのようである。


「恐れるな。敵は少数。我らは4万の大軍だ。

包んで討ち取れ!」


兵達が逃げ惑う中、王を守る近衛隊長が声を枯らして叫び続ける。

その声に反応し、精鋭の近衛隊が陣を整え、守備態勢を固める。

それを見た周囲の兵も落ち着きを取り戻そうとしたときであった。


後方から火が燃える。

「裏切りだ!

誰か裏切り者がいるぞ!」


激しい干戈の音、叫び声が聞こえる。


「マツナガの部隊が寝返ったぞ!

奴は満座で恥をかかされた恨みを今こそ晴らすと叫んでいるぞ」


「ミヨシやロッカクも裏切りだ!」


「ツツイやホソカワの兵が戦わずして引き上げていく!

奴らは後方で待ち伏せする気か?」


「このままでは帰り道が塞がれ、退却できなくなるぞ!

早く逃げろ!」


畿内の諸侯の向背が勝負を決めた。兵が崩れる。

積極的に寝返る者、一目散に退却する者ばかりが見える。

王のために戦う者は近衛兵のみ。


「陛下、ここまでです。

私がここは防ぎますので退却ください」


この状況を見ながら辿り着いたニッタは、殿を申し出て、王に退却するように進言する。


ダニエルの軍勢はオカダ、バースが先頭に立って追ってくるが、途中には数万の兵がいて、ある者は立ち向かい、ある者は算を乱して逃げ惑っている。

その混乱の中、猛進してくるのは難しい。


ニッタは、前から突撃してくるクリバヤシ隊に立ち塞がり、その勢いを止めようとするが、今までの鬱憤を晴らすかのように、狂ったように襲い掛かる彼らの勢いは止まらない。


ずるずると後退するニッタ軍を見ながら、王は「何故だ?何故、神は余の行く手を邪魔するのだ!」と叫びながら近衛隊に守られ、馬に乗せられる。


「陛下、どちらに行かれる?

ここで踏みとどまり、兵を立ち直らせてこそ王でしょう。

真っ先に逃げる者に誰がついていきますか?」


炎を背後に呼びかける男の顔は見えないが、その声に聞き覚えがある。


「貴様はネルソンか。

さては貴様が裏切りの橋渡しをしたのか!」


王が怒鳴りつける。


「はてさて、私は仮定の話をしただけです。

状況を見て、誰が頼りになるのかを彼らはよく考えたのでしょう。


そして私も陛下の器量にがっかりしました。

やはり私の上に立てるのはダニエルしかいないようです。


しかしここで死んでもらってはイージーゲームとなる。

ダニエルの成長の糧となるためにこれだけで見逃してあげましょう」


そう言って放たれた矢は王の太腿に刺さった。

ネルソンは殺す価値もないとばかりに、そのまま去っていく。


痛みと屈辱に身を震わせながら、王は退却する。


途中、マツナガ、ミヨシ、ロッカクなどが襲ってくるが、精鋭の近衛兵は犠牲を出しながら、これを切り抜ける。


その混乱で馬も失い、王も高官も夜中歩き通す。

そしてようやく戦火が遠くなった明け方、王達は一休みした。

既に100ほどの兵しか残っていない。


「クソっ、ネルソンと裏切った奴らめ。

余をこんな目にあわせよって。必ず復讐してやる!

うっ、痛い!手当てをしてくれ」


見れば王の太腿からだくだくと血が流れている。

矢を急いで引き抜いて逃げてきたのだ。

これまで緊張のあまり痛みに気が付かなかった。


慌てた近習が手当するが、突然飛んできた矢がその胸に当たる。

驚き、回りを見れば数百の兵が取り囲む。


「おおこれは陛下ではありませぬか。

思わぬところでお目にかかります」


見れば戦場で姿を見なかったドーヨ・ササキがいた。


「貴様、裏切ったのか!

返り忠のお前に目をかけてやったことを忘れ、恩を仇で返すとは」


王の叫び声をドーヨは意に介さない。


「私は私のためだけに動きます。

陛下がしっかりと勝利していれば引き続き忠臣でいましたとも」


ドーヨはうそぶき、そして少し考え込む。


「しかし、ここで陛下の首を頂いても外聞が悪いでしょうな。

捕虜にするのも何かと面倒。


私の手柄のために、そこの宰相殿や他の方々は捕まっていただき、陛下には無事に帰っていただきますか。


ダニエルも陛下のお命まで狙っておりますまい。

王都に籠城していれば、私が仲介役となりましょう。

今後とも宜しくお付き合いの程を」


ニヤリとしたドーヨだが、彼の指示で王の一行は武装解除され、プレザンス他の高官は捕虜となる。


「野盗に襲われて死なれても気の毒ですし、王都までお送りします。

そうそう馬もお貸ししましょう」


裏切り者にとことん虚仮にされ、手足となる側近を失った王は気力を失ったのか、もはや言われるがままに王都に連れて行かれる。



王が帰還する頃、戦場の戦火は収まりつつあった。


王の軍は崩壊し、殿を務めるニッタ軍は苦戦しながらも撤退に成功しており、ダニエルは深追いを禁じている。


あとは逃げ散った敵兵の掃討であり、その中の大将首を狙って兵達は血眼であった。


ダニエルの本陣は血と遺体が転がったままのボロボロのムーン城近くに置かれ、そこでダニエルは一晩中戦った疲れも癒せぬまま諸将との面会や戦後処理に励んでいた。


「マツナガ殿、よう来られた。

その働き見せてもらいましたぞ」


「ツツイ殿の使者か。

偽王アーサーは王都に帰還中か。知らせをありがとう」


忙しい中、大物の捕虜を捕まえたと言う兵が面通しを求めてくる。


「将軍ナワを捕まえたとか。それは大物。

面会して褒めてやらねば。通してやれ」


ナワを捕えたという兵はよほどの戦闘だったのか、顔が血だらけで面相がわからない。


「貴様、大将の前に行くのにその顔はあるまい」

功を称えられ、ダニエルの近くに座っていたクリバヤシが顔を拭いてやろうと近づいた時だった。


「クリバヤシ、死ね!」

兵は突然隠し持っていた短刀でクリバヤシの腹を差した。


「次はダニエル、お前だ!」


その男は短刀を持ち直し、ダニエルに突き進む。

同時に縄が解けてナワも剣を振るう。


「何奴!」

ダニエルの背後にいたクリスが前に躍り出て長剣で男の胸を差し、ダニエルは立ち上がってナワの首を跳ねる。


「この男、将軍ユウキですな。

最後に一矢報いんとしたか」


ネルソンの呟きに耳も貸さず、ダニエルは倒れたクリバヤシに走り寄り、その身体を揺り動かす。


「クリバヤシ、お前には苦労した何倍も贅沢してもらうぞと命じたはずだ!

死んではならん。

口を開け、主君の命が聞けないのか!」


「ダニエル様

勝ってから死ねてようございました。

それともこれは籠城戦の末の夢ですかな。


夢でもよろしい。

こんないい気持ちは生まれてはじめてだ。

主君の命を果たし、主君に代わって死ねる。

平凡な私にはもったいない死に様だ」


クリバヤシはそう言って微笑んで息絶えた。


ダニエルとムーン城の城兵の号泣の声は、戦場はもちろんアースの隅々にまでも響き渡った。

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