転がり込んできた金運と雌獅子の争い

 ジューン領都アースの近くを流れるバン川。その入江にある砦付近の茂みの中に、ダニエルとネルソンは50人の兵を率いて潜んでいた。


 湿地帯に数時間、声を出さず、身動きもせずに待ち続けると、ようやく陽が落ちる頃に数隻の船が入江に入ってきた。


「いやー、今日は大物が掛かったな。ダニエルが領主になってから川を通る船の多いこと。我ら海賊のために餌を運んでくれているようなものだ。ダニエル様様だな。」


 元騎士の首領らしき男が笑いながら、手下に身なりの良い若い男を後ろ手に縛り上げて連行させる。


「こいつはたんまりと身代金を頂けそうだ。大事にしろよ。一緒についていた女は上玉だ。俺が貰おう。」


「やめろ!金ならやるからシンシアに手を出すな!」


「無論、金も貰う。両方頂くとも。はっはっは」


 傾国の美女とはこういう女かと思われるほど、見目美しい女が泣き崩れながら引っ張って来られる。


砦の見張りもそちらに気を取られる。


「今だ!」


 ダニエルの合図で、射手が矢を放ち外の見張りを倒すが、ガヤガヤした砦では誰も気づかない。


ダニエル達は砦のすぐ側まで近寄り、一斉に襲いかかる。


襲撃を終え、すっかり酒盛りと女に気を取られていた海賊は不意を打たれる。


「お前たち敵だ!応戦しろ。」

それでも手練れの騎士らしく、首領は慌てながらも手下を指揮し、応戦する。


(思ったより数が多い。近隣の海賊が集まったか?)

数で言えばダニエルの兵よりもかなり多そうだ。


「敵は少数だぞ。落ち着いて戦え。」

賊は首領の指示に落ち着きを取り戻す。


その時、入江から船が離れる。

「やや、どうした?」

首領の狼狽した声に、ダニエルは答える。


「お前たちの商売道具は頂いた。

もう一つお土産もくれてやる。」


 ダニエルに面していた海賊の背後の壁が破られ、ネルソンに指揮された新手の兵が姿を現す。


挟み撃ちにあった賊の部下は心が折れたようだった。


「降伏するので命だけは助けてくれ。」


 しかし、首領は命乞いする部下を刺殺し、ダニエルめがけて突撃してきた。


 既に勝ったと思っていた周囲の部下は反応が遅れるが、メイ侯爵戦で終盤に油断して痛い目にあったダニエルは神経を張り詰めていた。


 「どうせ死ぬなら貴様の命だけでも取ってやる。」と切りつけてくる首領の隙を冷静に突き、袈裟懸けで両断する。


「抵抗する者は斬れ。あとは捕虜にしろ。」

 ダニエルはその場をネルソンに任せ、従士長のラインバックを連れて、砦の奥に踏み入る。


 隠し部屋をすぐに見破り、そこに隠してあった金庫を開けると、多額の金貨や銀貨、宝飾品が入っていた。


「思ったより溜め込んでいたな。これはお前たちへの褒賞とオレのポケットマネーにするか?」


「御家老は、少しでも金が入ったら新しい文官を入れてほしいと言っていましたよ。」


「文官と言ってもこのあたりでは、うちに仕官すると山賊退治させられると言って武官志望の血の気の多いのしか来ないからな。」


 戻ると、ネルソンが賊を縛り上げて待っていた。

 その隣には人質とされた人々もいる。


 ダニエルは、「捕虜はいつものように奴隷で売り飛ばせ。」と言いつつ、人質を見る。


 さっき喚いていた若者は美女の腰に手をやりながら、ダニエルに命令口調で言う。


「救助ご苦労。僕はベルネ家の嫡男、ポール・ベルネだ。

この薄汚いところからさっさと連れ出せ。」


 兄と同じ名前に不愉快となり、更に高飛車な言い方にカチンと来たダニエルだったが、ベルネと聞いて、ピンっときた。


「ベルネ家と言えば、ベルネ財閥の関係者ですか?」


「そうに決まっているだろう。だから田舎者は困る。俺は当主の長男だ。うちの支店があるそうだな。そこに連れていけ。礼は弾むぞ。」


 ダニエルを見て、一介の騎士と思ったのだろう、ぞんざいに言う。


(ベルネ銀行と言えば、オレの借金先。

これは上手くすると借金が減るチャンス。)


 ダニエルは後始末をネルソンに任せ、このベルネ家のボンボン(ダニエルはこいつをバカのボンボン、略してバカボンと呼ぶことにした)の相手をすることとする。


 自分は下っ端の騎士だが、ここに来たばかりで支店の場所がわからないと言い、領主屋敷に連れこむ。


 バカボンに酒を飲ませて、事情を聞くと、女は水商売の娘だったが美貌に目が眩み、結婚の約束をして手を付けたところ、父親からカンカンに叱られ、駆け落ちしてきたという。


「ここの領地に随分人が集まっていると聞き、ちょうど支店もあるし、身を隠すのにもってこいだと思ってな。

 オレがいなくなったことに気づき、今頃両親は大慌てだろう。反省して結婚を認めたら帰ってやる。」


 酔って好き勝手言う、バカボンの言葉に目眩がしそうになったが、ダニエルは上手く相槌を打って機嫌を取る。


 そして、そんな偉い方が来られたとあらば、是非主人に会っていただかなければ私が叱られますと言って、そのまま屋敷に閉じ込めてしまった。


 その足で、支店長に会いに行き、長男を保護したことを告げ、主人バカボンのパパに話すように伝える。


 支店長が寸志といって金を握らせようとするのを振り払い、彼らを海賊から取り返すためにいかに費用をかけ、犠牲を払ったか、銀行家たるもの貸し借りは分かってるなと強く言い込む。


 いつも傲慢に借金の催促をする支店長が、青ざめているのを見て、店を出て、ダニエルも銀行との折衝役のバレンタイン家老も大笑いした。


「ダニエル様の趣味も役に立つときがありますな。犬も歩けば棒に当たるとはこのことかと。」


(コイツ、酷いことを言う。オレは犬か。)


 ダニエルは思うが、いつも好き勝手な施策や工事を行い、金策は任せているだけに黙っていることにする。


「人質の身代金の相場は年収と聞く。コイツは嫡男だから、当主の年収くらいは吹っかけよう。ベルネ家の年収というといくら位だ。」


「大陸有数の富豪ですからな。想像も付きませんな。噂では、以前に島国のイギラス国王が捕虜となり、一年の国費相当の膨大な身代金を払ったそうです。」


「吹っかけて相手の出方を見るか。

 せっかく転がり込んできた金の卵を産む鶏。

逃さず、病気にさせず、大事にしよう。」


「全くです。ダニエル様はこれから領主の部屋を出てください。

あそこが一番いいところで護衛もできます。」


「なんと!オレは追い出されるのか。」


「ダニエル様がいても一銭にもなりませんからな。」


 無情な家老の言葉に反論もできず、屋敷に戻ると、護衛の騎士の控室に向かうダニエルを呼び止める声がある。


「ダニエル様、少しよろしいですか。」


 またヘブラリー家の侍女がコナをかけに来たかと振り向くと、バカボンが連れていた美女である。


「私はダニエル様におつかえする騎士だが、人違いではないか。」


「とぼけなくともようございます。

 城内の者の態度からあなたがダニエル様であることは明らかです。」


 面倒になったダニエルは、

「ああそうだが、何の用か?

王都に帰りたいと言うことならダメだ。」と突き放す。


「そのようなことではありません。 

お話があります。」

 シンシアという女の話は、なかなか興味深いものだった。


 彼女は王都の高級娼館の女主人の娘だったのを、ポールに見染められ、しつこく言い寄られた。

 上得意のベルネ財閥に逆らうわけにも行かず、適当に相手をしていたが、それを脈があると勘違いしたポールはのぼせ上がり、多額のプレゼントを贈り、更にストーカー行為もされ、大変だったという。


「相当搾り取ったのではないか?」

 ダニエルが突っ込むと、ホッホッホと笑い、「いい女にはお金がかかるのですよ。」と宣わった。


 しかし、そのことがポールの父の耳に入り、腰を落ち着かせようと大商会の娘との結婚が決められた。


 やれやれ、これで縁が切れると思ったシンシアだったが、ポールは諦めずに駆け落ちを誘ってくる。

 母と相談し、水揚げをさせて、それを最後とすることとした。無論、父であるベルネ家の当主まで了解をもらい、膨大な水揚げ料を払わせている。


 ところが、何を思ったのか、ポールは水揚げの後、結婚間近になって、最後に会いたいと言ってきた。相手が相手なのでシンシアが渋々屋敷に出向くと、そのまま馬車に連れ込まれ、誘拐されたという。


「そういう訳で、あのバカ坊ちゃんのせいで、ワタシはとても迷惑しています。同じ部屋では猿みたいにワタシを求めてくるのです。

とりあえず部屋は別にしてください。」


(そうは言ってもな。)

 ダニエルにしてみれば、被害者面するが、彼女も相当のタマだし、別々にして、バカボンにヘソを曲げられても困る。身代金を貰うまでは機嫌良く過ごしてほしいのだ。


 ダニエルの気の乗らない表情を読んだのか、シンシアは言う。

「もちろんタダでとは言いません。ダニエル様にもメリットがあります。」


 シンシアは、部屋は別にしてもポールの機嫌を取り、逃亡を防ぎ、健康管理もしてくれるという。


「ダニエル様はベルネ財閥から巨額の身代金を頂くつもりでしょう。あの坊ちゃんに元気でいてもらわないと困りますよねぇ。

 また、ポール様に入る情報はそちらに流しますよ。

 その代わり、ワタシが要求する賠償金に加勢してくださいね。」


「お前も金を要求するのか!」


「当たり前でしょう。誘拐に強姦、アイツがワタシにしてくれたツケは高いですよ。徹底的に毟り取ります。

 もし折り合いがつかなければここアースで訴えますから、裁くのはダニエル様です。よろしくお願いしますね。」


(これはオレの手に余る雌狐、いや雌獅子だ。レイチェルになんとかしてもらうしかない。)


「わかった。ここは手を結ぼう。

それでバカボンにはなんと言って別の部屋にすればいい?」


「そのくらいは考えてくださいよ、王都で名高い勇将ダニエル様。」

 シンシアどこだ、と呼ぶ声が聞こえるのを機に、女はさっさと戻っていった。


 (なぜオレの名前が王都で知れてる?

いや、そんなことより、この話、オレが相手をすることもあるまい。

誰かにやらせよう。)


 ダニエルは自分の英雄詩が王都で流されていることを知らない。


 不審に思いながら、誰がいいかと考えるが、騎士団三人衆は全く向かない、新入りで年長のネルソンには頼みにくい、バレンタインにこれ以上仕事をさせると倒れそうだ、クリスをあんな美人に接触させるとまたイザベラから苦情が来ると、該当者がいない。


 これは早まったかと思いながら、バカボンの機嫌を損ねず部屋を引き離す知恵を絞る。


 夜、ここアースで作れる最高の料理を夕食に出しながら、ダニエルはポールに、主人が当分戻らないのでしばらく滞在頂くことと、城内の司祭が結婚していない男女が同じ部屋でいることに反対しているので部屋を別れてもらうと通告する。


 ポールは、不味い料理だと言いながら食べていたが、ダニエルの言葉の前半はともかく後半を聞くと真っ赤になって怒り出した。


 この能無しが、ダニエルを早く連れてこいと怒鳴るポールを、シンシアが上手く、「わたしも残念で堪りませんが、ここで名高いダニエル様や司祭様に逆らうと結婚に支障を来たします。結婚までの少しの辛抱ですわ。」と宥める。


 ポールを収めた後、シンシアは、ダニエルに向かって、早く主人を連れてきなさいと怒りながら、小声で、ポールの部屋に娼婦を呼んでおいてと指示する。


(このクソガキは、御馳走に女の世話までさせやがって。

このツケは高く、お前の親父バカボンのパパに付けてやる!)

 ダニエルの憤懣は止まらない。


 政務室に行くと、バレンタインとクリスが待っていた。


「遅かったですね。何かありましたか?

ダニエル様はともかく金蔓は大事にしてください。」

バレンタインは身代金のことで頭がいっぱいのようだ。


実はな、とダニエルはシンシアのことを話す。

両者とも、「ダニエル様頑張ってください。とにかく身代金だけは取りはぐれないように。」と知らぬ顔だ。


 おまけに、今日の仕事が山積してます、今晩は残念ながら夜は酒は抜きですね、などと言われ、ポールに散々罵倒されたのを耐えてきたダニエルは遂に爆発した。


「ふざけるな!オレは領主だ、一番偉いんだぞ!

オレにバカボンのお守りなんかさせやがって。

もう今日は止めだ!飲んで飲みまくる。」


 二人は顔を合わせて、「それはダニエル様の自由ですが、明日が大変ですよ。」と言うも、ダニエルは止まらない。


 大広間に行くと、既にダニエルを待つばかりで、外回り組も帰っており、料理も酒も用意されている。


 ちなみに、女衆は、バーバラの知らせを聞き、ヘブラリー家に負けじとジャニアリー家からも侍女が送られきて、両家の女がイライザとバーバラの指揮で料理や掃除その他の家政を行っている。

 なお、騎士の娘でも家事ができない者は、相手方の嘲笑を受け、送り返されている。

 ダニエルは両家の女たちの争いにお手上げで、やがてくるレイチェルに丸投げのつもりである。


 夕餉は、いつもダニエルの乾杯で始まり、主要な武官・文官からの報告と質疑を飲みながら行い、家中の情報共有と今後の意志決定を図る。

 しかし、今日はダニエルが荒れていて、あまり議論もなく、大宴会となる。


「ダニエルはどうかしたのか?」


 カケフの問いに、クリスは

「金蔓ですが、質の悪い奴を相手にして、お疲れのようです。気持ちよく飲ませてあげてください。」と頼む。


 オカダは、「今日のダニエルは騎士団時代のようだな。」と大喜びで一緒になって浴びるほど飲んでいる。


 侍女たちも今日はガードの甘いダニエルに、ここぞとばかりに寄ってきてお酌をする。

 ダニエルもノリノリで、「今日は無礼講だ。お前達、踊りや歌を披露しろ。」と女たちに命じる。

 踊りや歌の上手はそれを披露し、男も女も飲めや歌えの大賑わいとなった。


 そこにシンシアが現れた。


「これは鄙には稀な美女だな。」

家臣たちは目を輝かせて、彼女の一挙一動を見守る。


 シンシアは、ダニエルの隣にいた侍女を一睨みで席を譲らせ、ダニエルにしなだれ、お酌をする。


「ダニエル様、お願いがあるのですが。」


「お前が来ると酔いが醒める。他に行ってくれ。

バカボンはどうした?」


(なぜオレの近くにはこんなこんな女ばかりが来る。

もっと健気で庇ってやりたくなる可憐な女はいないのか!)


シンシアは、ダニエルの嫌な顔など歯牙にもかけない。

「アイツはダニエル様の手配した女を相手に一心不乱に腰を振ってました。

これからワタシが襲われないよう毎晩手配してくださいね。


 ところで、お願いというのは、ここアースに娼館を経営する許可が欲しいのです。

ベルネ家と揉めた我が家が王都で商売を続けるのは難しい。

アースでも、清潔でちゃんとした娼館は必要でしょう。

 お礼にダニエル様の褥に今晩でも参りましょうか。何なら愛人になってもいいですわよ。」


 ダニエルは一瞬考え込む。

 アースは好景気の中、流入してきた人々のほとんどは男であり、それを目当てに私娼窟があちこちに出てきて、トラブルとなっていた。


(たしかにこの問題はなんとかしなければならないが、オレをいいように扱えると思っているコイツは気に入らん。)


 ダニエルが断ろうとした時、何か周囲が急に静かになったことに気づく。

おまけに、次々と席で飲んでいた家臣たちが泡を喰って、走り逃げ去っていく。


「どうした!敵襲か?

敵に背を見せて逃げる奴はダニエル軍にはおらん。

情けないぞ!」


 ダニエルの言葉に、傍で酔っ払っていたオカダが慌てて立ち去ろうとしながら言う。

「敵襲より恐ろしいわ。ダニエル、頑張れよ!」


???疑問符ばかりのダニエルは、後ろから、怖ろしいほどの闘気を感じる。


(これほどの闘気は騎士団でも名のうての者。) 

ダニエルは一瞬、死すらも覚悟する。


「何奴か!」

 

振り返るダニエルは、今一番会いたくない人の顔を見る。


「まあ、ダニエル様。いつまでも迎えに来て頂けないと思ったら、こんなに楽しんでおられるのでは、妻のことも思い出せないでしょうね。

 昔話の浦島太郎は竜宮城で時を忘れたそうですが、ダニエルさまも同じでございますね。」


(不味い・・・)

周章狼狽とはこのことか。

焦るダニエルは言葉も出ない。


その代わりに、まだしなだれかかるシンシアが言葉を返す。


「お褒めいただきありがとうございます。

ワタシのお店はよく竜宮城のようだと言われたものです。


貴女は確かダニエル様の愛妾希望のレイチェル様。

わざわざ王都から追ってこられるとはご苦労さまです。


政治に詳しくとも男女の道には不案内なようなので教えて差し上げますが、男に追いかけさせてこそいい女。追いかけるようでは魅力が足りませんね。」


「なぜ私のことを知っている?この泥棒猫!」


「男は寝物語に色々なことを語ります。高級娼婦は情報通ですのよ。

 正妻のジーナ様を差し置き、ダニエル様の隣に座ろうとする貴女とワタシは同じ立場だと思いますが。」


「言うに事欠き、私が娼婦と同じですって!」


 レイチェルを挑発するシンシア。


 雌獅子同士の争いを、ダニエルはもはや傍観者と化して見ていたが、レイチェルの背後に、クリスが、アランと騎士団での友人アレクサンダー・アレンビー、そして見知らぬ少女を案内しているのが見える。


(クリスめ!

 以前に女にデレデレしてイザベラに叱責されたのを、笑ってやった事を根に持ち、こんなところにレイチェルを案内したな。許せん。)


 一方、アランはいつも冷静なレイチェルが怒りを露わにしたこと、シンシアという女が姉に一歩も引いていないのを見て、驚嘆していた。

(あの姉さんが嫉妬して、おまけに相手の女に押されている。世の中は広いなぁ。)


 絶世の美女であるシンシアを凝視するアランを見て、エリーゼはアランの尻を思いっ切り抓り上げる。


「イタタタ。エリーゼ、何をするの!」

「アラン様がよその女にうつつを抜かすから、制裁です。」


 レイチェルは、シンシアを相手をするのを止め、ダニエルに向き直る。


「ダニエル様、こんな女を連れ込んでどういうつもりですか!!

別室でゆっくりお話いたしましょう。

これからはずっとコチラにおりますから時間はたっぷりあります。」


 レイチェルの背後で投げキスをしながら、笑顔で立ち去るシンシアを見つつ、ダニエルは慌てて言う。


「待て!

金の卵を産む鶏を拾ってな、彼女はその世話役だ。

疚しいことは何もない。」


金の卵と聞いて、レイチェルの顔が真顔になる。

「その話を詳しく。」


 興味が銭金に行ってくれたようだ、これで危機を何とか凌げるかとダニエルは酔いが醒め果てた頭で考えた。

















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