第5話

「-----シャアッ!?」


「セ、セゲナ!?」


"ズドンッ!"


「・・・・!」


炎天下の中、セゲナはテニスコートの上で


敵の選手と戦っていた----


「セゲナッ!? 


-----させないよっ!?」


反対側のコートにいる、試合の相手が


大声を叫びながらセゲナに向かって


強烈なパックスピンがかかった


スマッシュを叩きこむ!


「----ハァッ!」


「ボンッ」


セゲナは、コートに打ち込まれた


テニスボールを、両手のバックハンドで


相手のコートに叩き返す!


「・・・セゲナッ!」


"バンッ"


「-----ッ!」


「ズドンッ!」


「ち、チチィィィッ!」


「----シッ!」


「す、すごい打ち合い-----!」


「セゲナ! 頑張って!?」


「ボンッ」


「ダダダッ」


「させないよっ!?」


「キュッ!」


"ズドッッ!"


「・・・・」


「す、すごい...」


コート上で繰り広げられる


激しいラリーに、周りで見ていた


同じテニスサークルの仲間達も


歯を食いしばりながら、


コート上のセゲナと、敵の選手を見る


「終わりだよッ!?」


「打たせないっ!?」


「ボンッ」


「ズドンッ!」


「(・・・・!)」


熱い真夏の日差しがコート上に照り付ける中、


終わる事無く続く


セゲナと敵選手のラリー....


「ハッ!」


「ズドンッ!」


「------フッ!」


「ギュンッ!」


相手の選手と激しい打ち合いを


繰り広げていたセゲナだったが、


何故か、自分の心は


どこか別の方を向いていた...


「セゲナッ!? 


くらいなっ!?]


「・・・・」


相手が打ち込んできた


カーブがかかったテニスボールを


セゲナは無表情で打ち返す!


「チッ チチィッ!」


「ボンッ!」


「ズドンッ!」


永遠と続いてく二つのラケットの間で揺れ動く


テニスボールのラリー....


「甘いんだよっ!」


「-----フッ!」


「----す、すごい!」


「せ、セゲナ!?」


「まだだよっ!?」


「ボンッ」


「(・・・・!)」


果てしなく、続いて行く、


テニスという名の、戦い----


「おらッ!?」


「(・・・・)」


だが、セゲナは、激しいスピードで飛び交う


テニスボールとは別に、


昨日の事を思い出していた...


「("どこか"で、


  "誰か"が、


"私"を、


"愛"してる-----!)」


「-----終わりだよッ!?」


敵選手が、ジャンプして飛び上がりながら


セゲナのコートに向かって激しい


スマッシュを叩きつけてくる!


「(・・・・!)」


セゲナは、手に持っていたテニスラケットを


力強く振りかざす!


「("遠くで"、


"誰か"が、


"私"の


事を---------


"愛して"る------!)」


「------フゥウッ!」


セゲナは、素早くステップを踏み、


重心を移動させると


テニスラケットの正面で、


相手が打ち込んできたスマッシュを捕らえる!


"ズドンッ"


「-----ゥオアッ!」


「シュウウウウウウウウッッ」


セゲナが渾身の力で放ったスマッシュが、


相手のコートに叩きこまれる!


「チッ チィィィッ!」


「-----シャッ、シャァァッ!」


スマッシュが決まったのを見て、


セゲナがテニスコートの外に聞こえる様に、


大きな叫び声を上げる!


「ッ! シャァッ!? 


-------シャッ


シャァアアアアアアアッ!?」


「よ~し、試合終了~」


「-----シャアッ!」


"タタタッ"


「セゲナ!」


「モラストコラスコブレ・オーブレ...」


「すごかったじゃない!」


セゲナの元に、同じテニスサークルの


仲間である、


モラストコラスコブレ・丸木・オーブレイが


駈けつけてくる!


「180対0でしょ!?」


「-----そんな事無い」


「・・・・?」


試合に勝ったはずなのに、


どこか浮かない表情をしているセゲナを見て


モラストコラスコブレ・丸木・オーブレイの


表情が曇る


「せ、セゲナ-----」


「-----カランッ」


「・・・・!」


セゲナは、手に持っていたテニスラケットを


隣のサッカー部のグラウンドで


サッカーをしている選手に命中する様に


放り投げる!


「ブンッ!」


「----いてっ!」


「・・・・・」


「せ、セゲナ・・・?」


「・・・・」


サッカー部の部員にラケットが命中するが、


セゲナは、まるで興味が無いのか


そのままタオルを手に取ると、


無言でコートの入り口から


外へと出て行く------


"ザッ ザッ ザッ ザッ----"


「セゲナ・・・」


「("どこか"で、


"誰か"が、


私を、


"愛して"る------!)」

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