第24話 精霊界アムルアデス大陸
~病院~
医師
「それではそこにお掛け下さい。それで、本日はどうされましたか」
診察席に通された大山の前には、不気味な医師が椅子に腰掛けていた。その姿は黒のローブに黒の縁のある帽子、その顔には鳥の
大山
「それが…体が変なんです、今日の朝からなんですけど、人猿が近づいて来て…体が反応したんです」
医師
「えー今日の朝から人猿の側で体が反応した、と」
カルテに書きながら喋る医師の声はそのマスクのせいで声が
医師
「それで体の反応というのは?」
大山
「下半身が、その……膨張したんです…」
医師
「成る程、体が人猿に性的欲求を覚えたということですね、因みにその人猿は雄ですか? それとも雌ですか?」
大山
「雄です」
医師
「えー雄の人猿、と。はい、それで現在恋人はいらっしゃいますか?」
大山
「はい、います」
医師
「それは男性ですか? それとも女性ですか?」
大山
「…女性です」
(何なんこの医者! けったくそ悪い!)
医師
「はい、分かりました、それでは少々お待ちください」
10分程して医師は二匹の人猿を連れて来た。
医師
「お待たせしました、そのままで結構ですので」
そう言って雌の人猿を大山に近づけていく。
大山
(おぇ、獣臭さ!)
医師
「ふむ、反応は無しと、では次です」
今度は雄の人猿を近づける。
大山
(だから臭いて! …でも…何か癖になるというか…アカン! そ、そんな訳ないで! が、我慢や!)
医師
「ふむ、少し顔が赤くなりましたな、さあ、心を楽にして下さい、本能に身を委ねるのです」
大山
「くっ! も、もう我慢出来へん!」
医師
「ほう、これはこれは。しかし一体どういう事なのでしょう、通常、子孫を残す為の生理的反応なのですが、相手が人猿の雄とは…」
医師は椅子に腰掛け腕を組み、
医師
「はい、診断結果がでました、心の準備は宜しいですか?」
大山
「は、はい」
医師
「貴方は……変態です」
大山
「………」
(何言うてん! こいつ絶対やぶ医者や!)
大山
「違います! 自分は変態なんかじゃありません! 絶対に何かの病気ですって!」
医師
「ならば、少し脳の状態を調べてみましょう」
大山は奥の部屋に通されると、そこには肘掛けの付いた鉄の椅子がぽつんと部屋の中央に置かれていた。
医師
「それではそこにお座り下さい」
大山が腰掛けると、部屋の奥から人を拘束する為の道具を医師は持ってくる。
医師
「それでは少々、首を固定しますので」
そう言って、大山の首にコルセットを取り付けると、続けて手足を鉄の椅子に拘束していく。
大山
「ち、ちょっと何するん!」
医師のその手には片刃の鋸が握りしめられている。
大山
「!!!」
医師
「今から頭蓋骨を開けるのです」
大山
「嘘やろ…」
医師
「平気ですよ、まあ、万が一の為にお引き取り先を聞いておきましょうか、
大山
「ア、アカンて!!! もうええて!! ワシ変態なんや!!」
医師
「いえ、いえ、異常性欲者の貴重な被験体ですので少しばかり調べさせてもらいます」
片刃の鋸を持った手が、大山の頭に近づいてくる。
大山
「アカンて!!! ホンマに駄目やで!!! 駄目やて! 駄目やて! うあああ!!! もう元の世界に帰りたいわぁー!!!」
医師の手がぴたりと止まる。
医師
「どういう事でしょう?」
大山「ハァ、ハァ、な、何がですか?」
医師
「今、元の世界に帰りたいと言いましたね、正直に話せば解放してあげますよ」
大山
「い、言います!! 言いますから! ワシ、異世界から来たんです! だから勘弁して下さい!」
(ワ、ワシのせいやないで、大体、課長がワシに換金させなかったらこんな事にはならんかったんや)
口を割った大山を見て、医師はマスクの下でにやりと微笑んだ。
~宿屋~
太陽が西に傾きかける頃、酒場は突如、騒然として、数名の階段を上がってくるその足音には、金属の擦れ合う音が混じっていた。
足音は深澤の部屋の前で止まると、扉が蹴破られ、そこには衛兵二人と剣先を向けた監査官アイリーンの姿があった。
アイリーン
「重罪人深澤! 王国への偽証、及び王国への不法侵入で直ちに捕獲する! 私を愚弄した罪は深いぞ! 死罪は免れないと思え! 仲間の二人は既に捕獲済みだ! セルジオス! 補助した貴様も同罪だぞ!」
セルジオス
「深澤さん!」
深澤
(マリベルがへまをしたとは思えない…やはり大山か…だがカードはもう揃っている! この間のようにはいかせない!)
立ち上がろうとするセルジオスを手で制し、深澤は代わりにベッドから立ち上がる。
深澤
「その矛を下ろすのだ、人の子アイリーンよ」
アイリーン
「な! き、貴様!」
深澤
「我は神界より訪れし
アイリーン
「戯れ言だ! 即刻捕らえよ!」
衛兵
「し、しかし!」
深澤
「我を信じぬか、ならば我が
アイリーン
「し、正気か! やめろセルジオス! 馬鹿な真似はするな!」
セルジオス
「御意、この王国は箱庭である! アムルアデス大陸に真の王国がある!」
衛兵 衛兵
「!!!」
アイリーン
「くっ!」
身構える二人の衛兵と監査官アイリーン、しかし何も起こらない。
アイリーン
「ば、馬鹿な…」
深澤
「我が神力の前では魔神の力も及ばぬ、人の子よ、その巻物で我が力を覗き見る事を赦す、覗いてみよ」
アイリーン
「ま、まさか本当に…」
監査官アイリーンは震える手で巻物を取り出し鑑定魔法を口にした。
アイリーン
「か、鑑定できない…」
深澤
「当然であろう、精霊の力ごときで我が力を認識する事は叶わん」
監査官アイリーンはその場で片膝を着き
アイリーン
「お、御許し下さい! 我が主よ」
深澤
「汝が捕らえし男女は恩寵を授けた我が空蝉の器である、直ちに解放せよ」
アイリーン
「はっ! 仰せのままに」
深澤
「人の子よ、暫しの時を耐えるのだ、我が必ず混沌の世界を救ってみせる」
アイリーン
「おお、主よ、我が人類一同、身に余る光栄に存じます!」
深澤は糸が切れたように、ベッドにどさりと腰を落とした。
深澤
「アイリーン、主の御言葉を聞いたか?」
アイリーン
「深澤様!」
深澤
「実は俺と大山は異世界から召還されて来たんだよ、この世界を救う主の器なんだ」
アイリーン
「王に、国王に謁見を!」
深澤
「神界の掟で主が人間界に干渉する事は、本当は禁じられているんだよ、だから器である俺達にはそれは出来ない、この事はアイリーンの中で秘密にしておいてくれ」
アイリーン
「はっ! 仰せのままに。お前たちも他言は無用だぞ!」
衛兵
「はっ!承知しました」
アイリーン
「深澤様、大至急、大山様とマリベル様を釈放して参ります」
深澤
「アイリーン、実はマリベルと大山は自分達が主の器である事を知らないんだよ、特性の主の器も認識出来ないでいるだろ? 本人達にばれないように秘密にしておいてくれるか?」
アイリーン
「はっ! 承知致しました」
アイリーンは立ち上がると体を震わせながら歓喜した。
アイリーン
「それにしても今日はなんという日だ! 私は! 私は! 主と対話したんだ!! 深澤様! 今後、私に出来る事があれば何なりとお申し付けください!」
深澤
「ああ、その時は頼むよ」
アイリーン
「深澤様! それでは失礼致します。おい、急いで王宮に戻るぞ!」
衛兵 衛兵
「はっ!」
アイリーンと衛兵達が部屋を出て暫くするとセルジオスが口を開く。
セルジオス
「ほ、本当に主の器なんですか?」
深澤
「馬鹿だなあ、嘘に決まってるだろ」
セルジオス
「やっぱり凄えや! 自分もう駄目かと思いましたもん」
深澤
「災いを転じて福となすってやつだよ。アイリーンも凄く喜んでくれたしな、あんなに喜ばれると、こっちまで嬉しくなるよ。これで王国の
セルジオス
「なら後は装備ですね、精霊界はモンスターの強さも桁違いですから」
深澤
「それなら俺にいい考えがあるよ」
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