第14話 初めてのクエスト其の弍
~森の泉~
森の木々が開け、見渡す限りの水面が、日の光りを反射して、神秘的な輝きを魅せていた。畔には、人の手が入っていないのか、グリーンハーブが所狭しと生い茂っている。
深澤
「凄いな、取り放題じゃないか。
荷台の袋から林檎を取り出して渡すと、
あっという間に食べ終わると少し物足りないのか、俺の顔をずっと見ている。仕方ないのでもう一個、林檎をあげた。
マリベルは泉を眺めていた。
「じゃあ早速採取しましょうか。……それと泉には近寄らないように注意してください」
泉にはなるべく近寄らないようにと、マリベルに釘を刺されたので、泉の近くを避けて気長にグリーンハーブを刈り取っては、荷台に放り投げていく。
ふと水面の煌めきが目に映った。
深澤
「泉に立ち入る事は王国に禁止されてるのか?」
少し離れた場所にいるマリベルに声を掛ける。マリベル自身も泉から距離を取っているようだった。
マリベル
「…禁止されてる訳じゃないけど、近寄らない方がいいですね。何がいるか分からないし、用心に越したことはないじゃないですか」
深澤
「マリベルがいるだろ、マリベルは結構強いんだよな?」
マリベル
「自分の身だけなら平気ですけど…確実に深澤さんを守れるとは限りませんよ。それでもいいならどうぞご自由に…」
深澤
「いや、近寄らないよ。マリベルが近寄らない方がいいと思ってるなら、絶対に近寄らない方がいいんだよ」
そう言って笑顔を見せると、マリベルは目を丸くし、その後恥じるように視線を落とした。
二時間程の作業で荷車はグリーンハーブで一杯になった。二時間程でこの成果なら上出来だろう。後は魔術師ギルドで買い取ってもらうだけとなった。
深澤
「採りすぎたかな、
「えいぶる、だいじょうぶ、えいぶるごほうびもらう」
又りんごを催促してきたので、荷台の袋から取り出して渡したが
帰り道、魔物を懸念していたがその心配は杞憂に終わった。魔術師ギルドで換金して宿屋に着く頃には日は沈み、空を見上げると無数の星が光っていてとても綺麗だった。
~宿屋~
部屋に戻ると大山が大きな顔で椅子に腰掛けていた。低い円卓の上には60枚程の銀貨が置かれている。どうやら今日も大繁盛だったようだ。それにしても何時間働いているんだろう。仕事が好きな大山らしいが。
大山
「そっちはどうでした、ワシの方はこの通りですわ」
自信満々な大山にこっちの成果を伝えるのは少し気が引けた。面倒な事になりそうな予感がする。
深澤
「ああ、ぼちぼちかな」
マリベル
「えーと金貨3枚と大銀貨9枚銀貨10枚ですね」
重ねるようにマリベルは口を開く。
勝ち誇ったような顔でマリベルは大山に見せつけると大山の顔が引き
「課長、どうしたんでっか?これ」
案の定、面倒な事になり始めた。
深澤
「まあ、詳しい話は後で話すよ。それよりも大山、これ見てみろよ」
そう言ってダガーを見せた。
「お前も何か買ってこいよ、好きなだけ遣っていいからさ」
大山
「ほんまでっか! 有り難う御座います! ほな、自分明日買ってきますわ」
深澤
「マリベルは欲しい物とかあるのか?」
マリベル
「お金で買えるもので欲しい物は無いかな」
深澤
「じゃあ何が欲しいんだ?」
「綺麗な私」にっこりとそう言ってマリベルは自分の部屋に戻って行った。
大山
「課長、ほんでどうだったんですか」
深澤
「今日武器屋に寄ってからグリーンハーブを探しに森の奥の泉まで行ってきたんだよ。そしたらな、沢山生えていたんだ」
大山
「ほんまでっか、ほんならワシも行きたいですわ」
深澤
「大山、それはやめておいた方がいいな」
大山
「何でですか?」
深澤
「とても綺麗な泉だったんだ、ちょっとしたデートスポットだよ。なのに誰一人居なかった。グリーンハーブも誰かが採取した形跡が全く無かったんだ、荷車が一杯になるくらい採ってもまだまだ有り余る程生えているのに関わらずだ」
大山
「隠れスポットだったんですかね」
深澤
「それは無いな。林道が泉の方にも延びてたからな」
大山
「ほんなら泉には何かしらの怪物が住んでいて危ないからですか?」
深澤
「恐らくな。一瞬水面が煌めいたんだよ、あれは目だったと思う」
大山
「ほ、ほんで大丈夫だったんですか?」
深澤
「前以てマリベルが親切に泉に近づかない方がいいって教えてくれたからな。それに武器屋に寄る事も勧めてくれた。何でか分かるか?」
大山
「やっぱり怪物が居たからじゃないですか、課長の為を思っての事だと自分は思うんですけど」
深澤
「マリベルは、はっきりと怪物が居るとは言ってないんだ、念のために近寄らないようにと言っただけなんだよ。だから俺の為にじゃなくてマリベルが自分自身の為にそうしたんだと思う。自分に対する言い訳だよ、これなら仕方が無いっていう、自分の心を守る言い訳さ。それともう1つある。
大山
「毒でも入ってたんですかね」
深澤
「さあ? どうだろうな俺は食べてないからな」
俺は大山の目を睨むような真剣な目付きで見直した。
「今日一緒に行ったのが俺じゃなくお前だったら生きて帰っては来れなかった」
大山
「お、脅かさんと下さい、そ、それにですよ、まだ課長の憶測じゃないですか、ほんならワシ、泉の事お客さんにそれとなく聞いておきますわ」
深澤
「ああ、でも怪物が居たとしてもマリベルを詰めるような事は絶対にするなよ、今マリベルは揺れているんだ」
大山
「わ、分かりました」
深夜になってマリベルは、
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