第8話 どうやって

「レシートの金額と、財布に残ったお金の計算も合ってるし……」


 麻子は茫漠ぼうばくと呟いた。

 レシートの預かり金額は二千円。支払いは現金だ。把握していたおおよその財布の中身から二千円を差し引けば、手元にある紙幣の数と計算が合う。


「だけど……」


 圭吾も麻子と顔を見合せたきり、二の句が継げずにいるように瞬きをゆっくり二回した。


「問題は誰がじゃなくて、どうやってだろう?」

 

 バッグから財布を持ち出して、コンビニのレシートごとバッグに戻された。

 コンビニで買ったと思しきビールを麻子の自宅のリビングで呑み、缶だけ放置して立ち去った。


 麻子の身に起きた現象に、合理的な解釈や説明が誰にもできない。

 警官も麻子と圭吾も、互いの顔を見つめ合う。

 


「すみません。家の中にはもう誰もいないので、盗られた物がないかどうか、確認して頂けますか? 私達は玄関先にいますから」

 

 開かれたドアから若い警官が顔を出し、恐縮したように麻子に向かって頭を下げた。

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