第454話 クリスマスプレゼントを探せ!!(第三者視点あり)
クリスマスまで数日となったある日。
「うーん。困った……」
俺はとんでもなく頭を悩ませていた。
「何を選んだらいいか全く分からないな、クリスマスプレゼント」
そう、俺が悩んでいたのはもうあと数日しかないっていうのにクリスマスパーティで交換するプレゼント全く決まっていないと言うことだ。
パーティでのプレゼント交換はあみだくじで当たったプレゼントを自分が貰い、貰うまで誰が買ったプレゼントか分からないという仕組みだ。
七海に泣きついたんだけど「そういうのはちゃんと自分で選ぶのが大事なの!!」と一蹴されて今に至る。
クリスマスパーティに来るのは俺のパーティメンバーに、ノエル、バンドでお世話になった三人組、そしてアキだ。それ以外はウチの母とシアの両親だけ。俺と真さんとアキ以外は女性になる。三対十の比率。
それを念頭に置くと、基本的に女性に喜んでもらえるものがいいと思うんだけど、クリスマスにお菓子っていうのも違う気がするし、装飾品になると男が当たった時付けられないということも起こる。
「はぁ……いっそ男に当たったら諦めてもらうという方向で行くか……」
もう俺の中で男には何が当たったとしても良いだろうの精神が芽生えつつあった。それにしても女性だけに絞った所で今度は何にするかという話になるんだけど。
「とりあえずアクセサリーでも見に行くか……」
俺は着替えをして髪型をセットし、部屋の外に出た。
「一人で行くより二人の方がいいか」
一人で行こうと思っていた俺は、ふと思いついて隣の部屋をノックする。
「んあ?誰だ?」
「普人だ」
「ああ。普人か。おはよう。どうかしたのか?」
中から返事が聞こえたので名乗ると、中からアキが寝間着で大あくびをして、腹を掻きながら中から出てきた。
「いや、クリスマスプレゼントはもう買ったか?」
「ああ。そういうことか……。遅かったな。俺は購入済みだ。ということでお前は買い物にはひとりで行け」
俺が気まずそうに尋ねると、それで察したらしいアキはニヤニヤした顔で俺をシッシッと追い払う真似をする。
「ちっ」
「せいぜい悩め。若人よ!!」
「うっせ!!お前もまだ若いだろ!!」
俺が舌打ちで不機嫌さを表してもアキは態度を変えることなく、上から目線で偉そうなことを宣ってきたので、捨て台詞を吐いた俺は一人で町へと繰り出した。
「はぁ~……ぜんっぜん思いつかねぇ……」
それからしばらくの間、何件も色んなお店に入ってはピンとくるものがないか探して歩いた俺だけど、いまいちこれだという物が見つからないまま時間がだけが過ぎていく。
「うーん、もう分からん!!こういう時は考え過ぎたらダメだ。ちょっとダンジョンにでも行って気晴らしをしよう。そうしよう」
ちょっと普段使わない部分の脳を使いすぎて知恵熱が出そうになってしまったので、一旦考えるのを止めて俺はダンジョンに行ってモンスターを倒してストレスを発散することにした。
「さて、どこのダンジョンに行くか……朱島ダンジョンは飽きてきたしなぁ……」
俺はどのダンジョンに行くかを少し考える。
「そうだ。あそこのロボみたいなモンスターは少し強かった気がするからそこにしょう。ラック、飛んでくれ」
「ウォンッ」
俺はシアの両親を助けたダンジョンである富士樹海にあるダンジョンに行ってみることにした。
あそこにはBランク級のモンスターが居たし、ほんの少し手ごたえのあったそれを倒すことも出来た。それに一度しか行っていないし、シアの両親と七海の友達を助けることを優先していたため探索していなかった。
だから宝箱など全く手つかずで残っている可能性が高い。是非とも一度は探索してみたい所だ。そんなことを考えている内に富士樹海ダンジョン近くの人目に付かない場所に移動してきた。
俺はラックの影に潜ったまま富士樹海のダンジョンの中に入っていった。
■■■
「ん?」
SSSランクのダンジョンである富士樹海ダンジョンの見張りをしている監視員がふと何かに気付いた。
「どうした?」
もう一人の監視員が相棒の様子の変化に声を掛ける。
「いや、今何かが動いたような……」
「気のせいだろ」
監視員は不審な気配を感じた気がしたが、もう一人の男はこんな所に誰かが来るわけがないとその気配を否定する。
「ん~、まぁそうだな。こんなSSSランクダンジョンにやって来るもの好きは殆どいないからな」
「だろ。こんな所に来るのはSSランク冒険者以上の化け物だけさ」
今はなんの気配も感じない。だから相棒の言葉を受け入れ、ほんの少し感じた異変は忘れることにした。
SSSランクダンジョンではスタンピードが起こったことはないし、モンスターが出てきたこともない。ここに誰かが居るとすれば超高ランク探索者か、狂った人間か、物好きだけだ。
「そうだな。いつの間にか無事に帰還していた葛城夫妻でも何カ月も彷徨う羽目になるダンジョンだからな」
ここで唐突にアレクシアの両親である真とアンナの話に移る。彼らが何カ月も返ってくることがなく、行方不明になっていたことは有名な話だ。
「そういえば葛城夫妻ってどうやって助かったんだろうな?」
しかし、彼らは監視員である自分たちが気づかない間に葛城夫妻が無事に帰還を果たしたと報告を受けた時は衝撃的だった。
ただ、先程も述べた通り、ここにはほとんど誰もこない。監視員たちも気を抜いて寝ていたり、サボっていることも多い。その代わり、いつ出てくるか分からない凶悪モンスターの巣窟と隣り合わせの場所いるのだから、そういうことをしていても罰せられることは少ない。
ただ、もしモンスターが出てくれば、いの一番に命の危険があるのはここの監視員たちなのだが……。
それもあって普人達が返ってきた時ちょうど寝ていたというのが二人が気づかなかっただけというのがオチだ。
「それはあの人たちは人外だから、どうにかなったんだろ」
「それもそうか」
ただ、さらに彼らは気づかなかった。そこにはまだ二人ほど知らない人物がいたことを。その内の一人が葛城夫妻を助けたと言うことを。
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