第403話 突入チャレンジ
地上に戻ってきた俺達。
『はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……』
一日中空の上で戦っていた天音と零は酷く息が上がっていて、ぐったりと地面に座り込むか、寝転んでいた。それでも、海で戦った時よりも皆のレベルや熟練度が上がっているせいか、それだけで済んでいる。
あの時は殲滅が間に合わなくなりそうだったからな。
「ありゃあ、倒した分だけ雲から補給されるらしいな」
「はぁ……そうね……はぁ」
俺は熟練度を上げまくってるせいか、それほど疲れていない。もしかしたら裏試験でもそこまで上げないのかもしれないな。
ある程度基礎が出来るようになったら試験クリアになる可能性がある。ただ、どこに行ったら試験がクリアになるか分からないので、今のところはこのまま上げ続けるしかない。
熟練度が上がることでのデメリットはないしな。
「それに足場が悪くて本気を出せなかったのも痛い」
「はぁ……はぁ……確かにとても大変だったわね」
「はぁ……はぁ……ホントよ。はぁ……はぁ……踏ん張れないからほとんど上半身だけで攻撃してたからね。はぁ……はぁ……威力も半減してたわ」
二人は息を切らしながらも俺のつぶやきに返事をする。
空中では足場がないのが一番困った。従魔たちの上で踏ん張ると、彼らに負担が掛かり過ぎるし、かといって何もしないと、ふんばりが効く地面と比べて威力が弱くなってしまう。
何か対策を考えないといけないだろうけど、すぐには思いつかない。
「七海は大丈夫か?」
俺はぐったりとして木に寄りかかる七海に声をかける。
「う、うん、大丈夫……皆みたいに体を動かしてるわけじゃないから……」
魔力を使うのも精神面が疲弊すると言われているからな。海の時よりも魔法を打ちまくった七海は、あの時の比じゃないくらいに疲労しているように見える。
勿論あの時と比べ物にならないくらいレベルもスキルも上がって、回復も早いんだけどな。
「分かった。でも辛かったらちゃんと辛いっていうんだぞ?ほら、これを飲め」
「まったくもう……!!お兄ちゃんは過保護だね」
辛そうな顔はあまり見たくなのでエリクサーを取り出したら、七海は力のない笑みを浮かべて返事をして俺の手から薬を受け取った。
単純にモンスターを殺すだけでは、近くの雲だけに限らず、世界の主要な場所に現れていた雲からこちらにモンスターが流れてきて、補填することで急速な個体数の減少に対応しているようだった。
兎に角、ただ個体数を減らすだけではどうにもならないことが理解できた。
勿論減った分補充するために、あの雲の中で何が起こっているのか分からないので、もしかしたら有効打になっている可能性もあるけど。
「今日はとりあえず終わりにして、数日間、スパエモに行ってゆっくり休んでから、今度は突入してみよう」
『了解』
俺達はその日は一旦家に帰って夕食を食べ、泥のように眠り、その後、ノエルも含めた六人でスパエモに行って、心ゆくまで癒された。
「ジャパニーズクオリティ!!凄いデスよ!!」
ノエルはスパエモで終始そんな風に叫んでいた。
「よし、今日はあの雲に突入してみるぞ!!」
『おー!!』
ノエルを家に送り届け、再び影響が少なさそうな場所にやってきた俺達一行は、夜のモンスターがいなくなった時間に、早速ヒーコとグリの背に乗って雲目掛けて飛んだ。
『グギャアアアアアアアアアアアアアアアッ』
しかし、もうすぐ雲に突入するという所で気配が全くなかったモンスター達が、雲の中から溢れるように出現した。
「ちっ」
予想していたこととは言え、そのまますんなり突入できることを願っていたが、どうもそうは問屋が卸さないらしい。
「モンスターは無視してそのまま雲に突っ込め!!」
『任せよ!!』
俺はヒーコに指示を出してそのまま飛ばさせる。
「俺達は妨害してくるモンスターを駆除するぞ!!」
『了解!!』
昨日はその場に浮遊してこいつらを殺し続けたけど、今日は倒す数は最小限にしながら目と鼻の先にある雲を目指した。
しかし、何度倒したところで、昨日と同じようにモンスターが補充され、しかもそのスピードは昨日以上で、雲に近づくにつれてさらにその数を増やしていった。
「お兄ちゃん!!魔力が持たないよ!!」
「はぁ……はぁ……私も体力がそろそろ限界!!」
「はぁ……はぁ……私ももう無理……」
「ん……はぁ……はぁ……」
雲まであと数十メートルと言う所まで来たが、モンスターの補充スピードがどんどん上がり、途中からこっちの攻撃でモンスター殲滅できなくなってきていた。
七海達もそろそろ魔力や体力が持たないらしい。
どうやら単純に突入しようとしてもダメみたいだ。
「一旦引くぞ!!」
『了解……』
俺は七海達に指示を出して、地上に帰還を果たした。俺達はモンスター殲滅チャレンジだけでなく、突入チャレンジに失敗することとなった。
「はぁ……はぁ……私この情報をしかるべき場所に送っておくわね……はぁ……はぁ……」
零はまだ息を切らしながらも今回の対応の結果を一刻早く助けるため、帰還して作業に掛かった。俺達も疲れたので自宅に帰ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます