第400話 避難解除

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以前よりアナウンスしておりましたが、本日より当作品の更新を一日一話更新へと切り替えさせていただきます。

大変申し訳ございませんが、宜しくお願いします。


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 それから数日間、避難生活が続いた。


 その間に近隣の一般人が自主的に避難してきた。中には学校の生徒の家族もいて無事を喜びあっている姿を見ることも出来た。


 今では中学生以上は探索者として覚醒しているので、中学校以上の学校や探索者が多く在籍しているような組織は避難場所として指定されたようだ。


『私の学校も避難場所に指定されたみたい。生徒会長の指示で私も探索者だからお仕事してるよ』


 七海からそんなメッセージが届いていた。


 それと、モンスターに関して分かったことがある。それはモンスターは日の出から日の入りまでの間、空を滞空している、ということ。


 一定の間隔で積乱雲に近いモンスターが順次積乱雲に帰っていき、新しいモンスターが補充される、というローテーションを繰り返しているらしい。勿論あくまで数日間の観察の結果であるし、突然変わる可能性もありえるので、鵜呑みにはできない。


 それと、やはり地上に降りてくる気配がない、ということ。


 数日間ずっと警戒していたが、モンスター達が地上目指して降りてくることはなかった。当然これも、モンスターの気まぐれにすぎないので、完全にそうだと断じるのは危険だ。


 ただ、空に侵入してきたもの、飛行機や戦闘機に関しては、ある一定以上の高さになると襲い掛かり、破壊してしまうらしい。これは制空権がなくなったことを信じたくない人間達が何度かやらかした結果分かったことだ。


 避難所でスクリーンに映し出されたニュースでしきりに報道されていた。その際、モンスターがかなり近くまで降りてきたようだが、飛行物を墜落させた後、地上の人に襲い掛かることなく、上空に戻っていく様子が映し出された。


 しかし、何の準備もせずに避難生活を強いられたため、特に探索者達はローテーションで一旦帰宅して、避難準備をしてきてもいいんじゃないか、ということになり、夜の間に一旦帰宅することを許された。


 それから、その機会に近隣で家に籠っている人や、力の無い人たちを神ノ宮学園に避難させるため、放送やインターネットを使用して情報を拡散し、夜の間に避難してくるように呼び掛けている。


 その甲斐あって、自主的に避難してきた人と併せて、かなり多くの人間が神ノ宮学園へと避難してきた。こういう時に火事場泥棒が起こることもあるので、ラックを巡回させ、空き巣に入ろうとした人間達を懲らしめる活動を行っていた。


 俺が睨んだ通り、かなりの数の火事場泥棒が見つかり、ラックによって行動不能にされたようだ。


 そんな生活を続けてさらに数日。


「いつまでこの状態が続くんだろうな」

「上が解除を指示するまでだろうな」


 先輩達の間でよくこんな会話がされるようになっていたが、数日程経過を見てもモンスターが降りてきて襲ってくる様子はなかったため、徐々に不満が溜まってきていた。


「政府により、避難指示が解除されました。避難してきた方は帰宅して構いません。ただ、混雑が予想されますので、私たちの指示に従って、順番に帰宅していただきますので、大変ご迷惑をおかけしますが、ご協力お願いします」


 政府も沢山の陳情があったのか、被害も全くなかったため、避難指示が解除されることになった。ただ、学校に関してはすぐに再開はせず、様子見となった。


「皆無事で何よりだ」

「お兄ちゃーん!!」

「おお、七海、よしよし」

「久しぶりのお兄ちゃんだぁ!!ぐへへっ」


 俺達はと言えば、佐藤家でパーティメンバー全員と合流を果たしている。


「これからどうなるか分からないから、私たちは出来るだけ一緒に行動しましょう」という言葉があったからだ。


 七海は俺と会うなり腹に突撃をかまし、頭をこすり付けてきた。俺は苦笑いを浮かべながらも七海の無事を喜び、七海の頭を撫でる。そんな様子をパーティメンバーたちが微笑ましそうに見つめていた。


「羨ましいデスよ、ううう」


 ただ、一人だけ七海を羨ましそうに指をくわえ、悔しさからか涙を流している人物がいた。


 今回俺達に付いてきたもう一人の人物。そう、ノエルだ。


「ヨシヨシ」


 いつの間にか友情が芽生えたのか、悲し気なノエルをシアが頭を撫でて慰めていた。


「今回は緊急事態なので特別に許可します」という七海の言葉によって、日本に一人でやってきたというノエルも俺達に同行することになったわけだ。


 俺達はラックで転移すればいつでも合流できなくはなかったけど、人がごった返していて視線が至る所にあったのと、未だにモンスターが襲ってきたわけでもなかったので、露見を避けるため、転移は使用しないようにしていた。


 ノエルに関してはすでにバレているので特に問題ない。


「ひとまず家の中に入って一息つこう」

「そうね。皆すぐにここにきたから疲れているだろうし、まずはゆっくり休みましょう」


 俺達は避難指示解除後、そのまま佐藤家にやってきたので今日はまだ寝ていない。俺達はここ数日の事をある程度話した後、念のため、ローテーションを組んで、二人一組で警戒しながら休むことにした。

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