第398話 着陸の成功と対策
『こっちは問題ないよぉ!!』
『私の方も特に何もないわ』
連絡した二人からは無事に連絡が届き、二人とも怪我などはしていないようだ。
『そういえば、ケイオスがいなくなったんだけど、何か指示を出したかしら?』
ホッと安堵していると、続けて零から質問が返ってきた。
ん?ケイオスって確か影魔に名前を付けたんだっけか。
相変わらず厨二感あふれるネーミングセンスだよな。
それはさておき、多分さっき俺が出した指示のせいだよな、おそらく。
「一応、ラックに影魔を使って飛行機類の墜落をどうにか抑えるように指示を出したから、そのせいかもしれない、と」
俺はその旨をメッセージで零に送る。
『なるほど。そういうことね。それは気が付かなかったわ。ありがとう。佐藤君のおかげで今回の騒動での死者は限りなく少なくて済みそうね』
零は俺に感謝のメッセージを送ってくれた。
まだ、被害を抑えられたかどうかは分からないんだけどな。
俺達のグループは今は休憩中だ。極力パーティメンバーがバラバラにならないように組まれているため、今は天音とシアが一緒に休んでいる。ノエルは別のグループになってとても残念そうにしていたけど、こればっかりはどうしようもない。
「七海たちは無事みたいね」
「ん」
グループLINNEにメッセージを送ったので、二人も確認済みというわけだ。
「ああ」
「それにしても良く咄嗟に影魔に飛行機を助けさせることを思いついたわね」
天音も感心するように話す。
「たまたまだ。世界各地に散っているラックならどうにかできると思っただけだ」
「それでもその判断が沢山の人を救うことになるわ」
「まだ分からないぞ。ラックたちだって空から落下してくるバカでかい飛行機とか支えられるか分からないしな」
なんで零も天音も既に救われている気になってるんだろうな。
「大丈夫よ。ラックを信じなさい」
「ん。ラックなら問題ない」
二人は呆れる俺に、一分の疑いもの無くラックが作戦を成功させると信じていた。
俺よりも信じてるじゃねぇか……。
「皆がそういうなら飼い主の俺が信じないわけにはいかないな」
飼い主の俺が一番信じてやらないといけないだろう。
「ウォンッ」
そこに丁度よくラックが帰ってきた。
ラックは輪を作っている俺達三人の中心にこっそり顔を出して鳴く。
「どうだった?」
「ウォンッ」
「そうか、流石だな、ラック。今は人がいるから後で一杯撫でてやるからな」
「ウォンッ」
ラックは俺の質問に答えると、そそくさとその場から姿を消した。
「ね?言った通りだったでしょ?」
「ん」
二人が勝ち誇ったようにドヤ顔で俺を見てくる。
悔しい!!
「ああ、二人の言う通りだったな。とりあえず落ちそうになっていた機体は順次着陸させているみたいだ」
「さっすがラックね!!これが他の従魔だったら一機だって助けられないわよ」
確かにこれはラックがとんでもなく有能だからこそ達成できたことだ。
それに比べて俺は何もできない。
「ラックがどんどん凄くなって俺はただの役立たずだな」
『それはない』
俺が自虐したらなぜか二人に断固とした態度で否定された。
「そもそもラックを獣魔に出来たのは普人君だし、あそこまで育てたのも普人君でしょうに。そんな人間が役立たずなわけないでしょ」
「ん」
二人とも俺を諭すように話す。
「分かった分かった。もう落ち込むのは無しだ。それよりも今後どうするかだな」
二人の圧に負けた俺は、少し落ち込んだ気持ちを振り払い、これからの話を始める。
「そうね。今の所、空のモンスターが襲ってくる様子はないけど、ダンジョン外でもモンスターに備えなきゃいけない状態になると、かなり大変ね」
「そうだな。今までも外にモンスターが残っていることはあったけど、ほんの少数だった。正直あの数が日常的に襲ってくるとしたら、学校に通っている場合じゃないと思う」
「確かにね」
俺達は空を飛んでいるモンスターの大群を見上げながら語り合う。
あれだけのモンスターが襲ってくるようになれば、公的機関の人間だけでは対処しきれないはずだ。
おそらく再び探索者総動員法が発令されるんじゃないだろうか。
できればもうちょっと普通に学校生活は続けていきたいんだけどなぁ……。
「飛んでいなければラックでどうにでもなるんだけどなぁ……」
「ホントよね……」
そもそも空を飛んでるってのがずる過ぎるよな。
俺と天音は恨めしそうに空のモンスターを睨みつける。
「空飛びたい」
「それな」
俺達が空を飛べれば万時解決なんだけど。
「魔法で空を飛べる人っていないのか?」
「聞いた話だと、居るにはいるけど、数は少ないらしいわ。それに飛んでいるだけで魔力を使うから、余程魔力がある人間じゃないと飛行戦闘は厳しいでしょうね」
「なるほどなぁ……魔法ならどうにかなるかと思ったけど、そううまくは行かないか」
戦闘機でも戦えるかもしれないけど、モンスターよりも小回りが利かないと思うんだよなぁ。どうにかならないものか……。
「おーい、そろそろ交代の時間だぞ」
「りょーかい」
いくら考えても答えが出ないまま、俺達がモンスターを警戒する時間になった。
どうやら幸運の花を取りにいくのは少しお預けだな……。
俺は空を見ながらふと思うのであった。
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