第八章 制空権と宿泊訓練
第397話 一難去ってまた一難
『緊急連絡です!!教室内のテレビをつけてください!!』
今日は穏やかだった。
俺達のパーティは捜査や救助活動からは離れ、学校後にダンジョン探索をして資金を稼ぎ、雇用したエルフと元荒くれ探索者達がラックの影魔を利用してダンジョン内の見回りや救助活動を行い、ダンジョン内でのトラブルや被害を出来るだけ減らすことに貢献するだけの、何の問題のない日。
そんな日になるはずだったのに……。
そんな一日は、酷く焦った様子の教員による校内放送によって打ち破られてしまった。
うちの学校には各教室に薄型のテレビが備え付けられている。緊急放送は授業中だったので、授業を担当した教師がテレビを付けた。
『空を見てください!!モンスターです!!未だかつて空に現れることのなかったモンスターが空に出現しました。今のところかなり高い高度を住処にしているのか、地上に降りてくる様子はありませんが、くれぐれも外出には気を付けてください!!特に一般の方は指示に従い、避難所に避難することをお勧めします!!』
テレビに映し出されていたのは空を飛んでいる沢山のモンスターらしき影。
普段を俺達が見るスズメやカラスなんかよりも圧倒的に高い空を飛んでいるため、あまりきちんと見えないけど、あの影がカラスやスズメくらいが飛ぶ高さに降りてきたら、一メートル以上平気でありそうだ。
しかも中にはもっと大きな影もあって、どうやらそれは十メートル以上ありそうなモンスターだった。
あれほどの大軍が地上に降りてくれば、一般人などひとたまりもない。俺達探索者だって、モンスターの強さによってはやられてしまうだろう。
それほどに空の敵は厄介だ。
魔法使いで対抗するのが一番マシな対応だろうか。
なんでこのタイミングで空のモンスターが現れたのかは分からないけど、人類にとっては良いことが何一つない出来事だった。
『速報です!!飛行型モンスターの出現により、世界中の旅客機などが次々と墜落させられています!!おそらく被害は数万規模に昇るとされています!!また詳しい情報が入り次第情報をお知らせします』
そしてさらに最悪なことに、現状人を乗せて空を飛んでいた飛行機の類が、次々モンスターによって襲われているらしい。
これは最悪だった。海路どころか空路まで断絶されたら色々な物資が入って来なくなる。これはとても深刻な出来事だった。
ちっ。致し方ない。
ラックなら陸海問わず、その上を走ることが出来る。ラックの影魔なら何百匹もア集まれば、衝突もある程度どうにか出来るのではないかと思う。
「ラック、全ての影魔を動員して落下してくる飛行機を地面との衝突から守れ……!!」
「ウォンッ!!」
俺は静かに誰にも聞こえないように呟くと、ラックも返事をして俺の傍から消えた。
これでなんとか被害を抑えられればいいんだが。
「皆さん、非常事態となりました。一般生徒は避難シェルターへ移動します。探索者適性を持つ皆さんは、一般生徒を護衛しながらシェルターまで連れて行くので、私の指示に従ってください」
『分かりました!!』
先生が俺達に指示を出す。
どうやら先生も探索者適性を持っているので俺達のリーダーとなってシェルターまで連れて行ってくれるようだ。
「まず一般生徒は教室の外に出て整列してください。その周囲を探索者適性をもつ生徒で固めてシェルターに移動します」
『はい!!』
俺達はすぐに動き始める。
教室の外には他のクラスも同じように一般生徒が二列に整列し、その周りを探索者が囲んでいた。中には同期の寮生も見える。
二宮さんはオドオドしながらもなんとか先生の指示に従いながら動いているようだ。天音も高ランク探索者らしく先頭を任させているらしい。
「Dランクの資格を持つ、佐藤君は先頭を、葛城さんは殿をお願いします。他の子達は均等に分かれ、側面を守ってください」
『了解』
俺達も先生の指示で陣形を組んだ。
「前が動き始めたので私たちも行きますよ!!」
『はい』
先生に従い、一組の後に続いてシェルターへと移動する。
「あれがモンスターか……」
外に出ると、上空にはテレビに映っていた通りの飛行モンスターの群れが見えた。彼らは特に地上に降りてくる様子はなく、どこかを目指して飛んでいるようだ。
その先には何やら大きな積乱雲が浮かんでいる。なんだか違和感があるけど、よく分からない。
「あそこが住処なのか……?」
俺は雲を見つめながらもモンスターを警戒しながら移動した。全員が移動する間も特にモンスター達が襲ってくる様子はなかった。
一般生徒を避難シェルターに入れた後は、探索者で集まり、いくつかのグループに分け、交代でシェルターを守ることになった。
空のモンスターが襲ってこないと判断されるか、どこかに行かない限りは一般生徒が家に帰るのは難しいと思う。
どうやらスタンピードが終わってようやく落ち着いてきたと思ったら、また一難がやってきたようだ。
俺は七海と零の無事と状況を確認するためにメッセージを送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます